


世代的に、「スラム」と呼ばれる場所を見たことはありません。
しかし、”同じ風景を見ていたのではないか”と思わせるほど、登場人物の描写が生き生きしており、引き込まれてあっという間に読んでしまいました。取材ではなく、その場所に住んでいたご本人の目から見た風景のため、余計にそのように感じるのかもしれません。
時代は戦前から戦後すぐの混乱期、それ以上に、平均よりも更に貧しい生活の人々の話であるため、限りなく犯罪に近い(犯罪かな?)出来事だったり、普段はお目にかからない少々特殊な人々が登場します。
エピソードは明るく豪快なものから切ないもの、そして多少引いてしまうようなものまで、様々なエピソードが盛り込まれており、全体的に興味深いものでした。
全編通じて、明るくたくましく生きている登場人物達が魅力的に描写されていました。
個人的に印象に残ったのは、「ベン・シャーンの少年」「パンパンガール」「消えたマアちゃん」です。
なんだか切ないような悲しいような内容です。
「むすび」で、筆者は差別について以下のように書いています。
民族差別、被差別部落への差別、同性愛者への差別、身体障害者や貧しい人々への差別、ほかにも差別はいろいろあるが、故ない差別というものは例外なしに、目標の差別集団を便宜的かつ短絡的に安易な括弧でくくってしまうところから発生する。
なるほどなと思いました。
過去に出版された書物や新聞記事などと自分が見た風景、経験した様々な出来事を照らし合わせたときに出た言葉でしょう。
物事は、都合が良いと思う枠の中でしか扱わなかったり、ある一つの方向からしか見ようとしなければ、本当のことは見えてこない、そんな感じでしょうか。
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