その日の午後は散々だった…。
頭の中がずっとキスの事と兄ちゃんの唇のことだらけだったから、授業中は指されてもどこの問題をやってるのか分からなくて怒られるし、部活ではぼーっとしていて顔面にボールをくらって鼻血は出るし…。
はぁ…
もうっ!!ニノちゃんが変なこと言うからっ!!
そんな事を考えながらも、ちょっと1人になりたくて、部活帰りにみんなと帰るのを「忘れ物をしたから先に帰ってて!!」と断って、別ルートから校舎を抜けて帰ろうとした時…俺は見てしまったんだ…!!!
校舎の裏手にある先生たちの駐車場の所にニノちゃんの姿…。
「ニノちゃ…」
まで声を掛けて、俺は思わず口を塞いだ。
ニノちゃんに向かって、男の人の手が伸びてきて、ニノちゃんを引き寄せたから…。
いけない、こんなことしちゃいけない…!!と思いながらも、俺は思わず隠れて2人の事を覗き見していた。
智ってニノちゃんが呼んでいたのは、2年の大野智先輩!
ダンス部ですごく軽やかなステップを踏んで、まるで重力を感じさせないダンスがカッコイイと先輩からも後輩からも知られている有名人で、めちゃくちゃモテているのは俺でも知ってる!!!
きっと知らない人なんて、この学校に居ないんじゃないかな…??
その大野先輩が、ニノちゃんに先に惚れたって事だよね…。
俺はドキドキしながら2人の逢瀬を静かに息を潜めて見守った。
2人は指を絡ませながら、何やら楽しそうにお喋りしている。
大野先輩が、時々ニノちゃんの耳元で何か囁くような素振りを見せると、ニノちゃんが首をすくめて何とも言えない可愛らしい笑顔を見せている。
俺といる時とは全く違う…俺の知らないニノちゃんを見せられているようで、すごくドキドキした。
クスクスっと2人で笑っていたかと思うと、大野先輩が周りをキョロキョロと見回した後、突然ニノちゃんの後頭部をグイッと引き寄せたかと思うと、2人の唇が重なった///
キ、キ、キ、キスーーーーー//////
二、ニノちゃんっ///
が、学校でキスなんてっ///
それも先生たちの駐車場って、もし見つかったらどうすんのぉーーー///
いや…確かにこの時間に帰る先生はそうそういないから、穴場って言えば穴場なのか…??
いやいやっ///
そういう事じゃないっ!!
ニノちゃんっ!!
学校でキスなんてハレンチだよぉーーーー//////
俺は心の中で盛大にツッコミを入れながらも、ドキドキして目が離せなかった…///
ニノちゃんが、大野先輩の胸をスっと押して唇が離れた…///
すると、大野先輩がニノちゃんのおでこにチュッとキスをひとつ落とすと、2人で手を繋ぎその場を離れていった///
ドキドキ…ドキドキ…//////
俺の心臓はすごい速さでドキドキしていたが、ニノちゃんと大野先輩のキスを…すごく綺麗だった…と思う自分もいて、さらにドキドキが増した///
今日はもうダメだ…色々、いっぱいいっぱいだ…
帰ろう…
俺はどこをどう歩いたのか分からないが、気付くと自宅の前に立っていた。
今日はもう…早く寝よ…。
「ただいま…」
「あら、おかえりなさい!!なんか元気ないわね??どうかしたの??」
「何でもない…なんか疲れただけ…」
母ちゃんが俺のおでこに手を当てた。
「うん…熱はないわね…。早くご飯食べて寝なさい!!風邪の引き始めかもしれないから!!あ、そうだ!!上に行ったら翔くんにお風呂入るように言ってくれる??」
「えぇっ///に、兄ちゃんにっ///??」
「何、そんなに驚いてんのよ??」
「えっ、いや…///別に…///」
「変な子ね、いつも兄ちゃん、兄ちゃんのくせに…。じゃ、頼んだわよ!!」
「…はい///」
なんかニノちゃんが変なこと言うから…///
いや、いつも通り、いつも通り!!!
俺は2階に上がり、自分の部屋に荷物を置くと、隣の兄ちゃんの部屋をノックした。
コンコン…
……
ん??いないのか??
コンコンコン…
……
「兄ちゃん??入るよ??」
ガチャッ
部屋の扉をそっと開け中にゆっくり入ると、そこにはベッドの上で気持ちよさそうにスヤスヤと眠る兄ちゃんが居た。
つづく
雅紀くん、まさかのニノちゃんのキス場面を目撃
雅紀くんにはあまりにも衝撃が強すぎて、テンパりまくってます
なのに帰ったら寝てる翔ちゃんを起こすというミッションがぁーー
雅紀くんの心臓…持ちますかね