前回までのあらすじ



「貯金は金塊三本を含めて一千万」


資産に金塊含める人、初めてみた。
実家の金塊やろ?
43歳で1千万円の貯金か。
実家住み、家にお金入れてない割には少ないような。
でもブラック企業勤めだからそんなもんか。

それにしても実家の側の家に住むって、ほぼ両親と同居だよなあ。
何より気になるのはやはり神奈川に引っ越したら私が今の会社に通勤出来ないこと。

「実家出る気はないんだよね?」

「ないよ。だってそんな必要ないから」
即答する彼。

出来れば彼が東京に来てくれるのが望ましい。
私も都内での引っ越しならそこまで負担はないかも知れない。
それに場所を選べば彼の通勤時間だって短縮出来る可能性がある。

しかしそんな気は毛頭ない、と。
どこまでも自立する気はないようだ。

この人との結婚はないな。
結婚しない以上これ以上付き合っても意味ないな。

その日の夜、電話で別れを告げた。
彼はあっさり「分かったよ」と言って別れを受け入れてくれた。
別れ話を電話でするのは誠実ではないと分かっていた。
でもまた会っても重い空気が流れるだけだ。
あの空気に耐えられそうもなくて電話するしかなかった。

分かれて一月経ったある日、彼からラインが来ていた。

「良かったら近々会わない?お寿司食べ放題行きたいんだけどどうかな?」

友達としてなら会ってもいいな。

行くよ。

そしてある夜、お寿司屋さんに行くべく私たちは待ち合わせをした。