三次創作小話「忘羨その後」(17-5)



(不夜天にて)

「……という訳です。

早晩*、あちらでも正体がばれるでしょう。

それまで、聞かなかった事にして頂けませんか」

と好老師は優しく笑いかけた。


(微笑んでいる)身震いした宋チョンリン。

「はい、分かりました」そそくさと出て行った。



(蘭室にて)

突然、ランジャンが部屋の外に出た。

ウェイインがその視線の先に目を凝らすと、

座学生数名が、血相を変えて走って来る。


ランジャンに気づき、一人が「走るな」と言い、皆が速度を緩めた。


ウェイインが「何かあったのか?」声を張り上げると、一人が「大変です」と大声を上げた。


また、別の一人が「騒いではいけない」と制すると、黙々と早足で急ぐ。



声の届く所まで、やっと近づくと、先頭にいた者が、「沢蕪君が倒れています」と泣きそうに言った。


ランジャンが「どこに?」

「宿坊を出てすぐの大きな枝垂れ桜の…」


言い終わらないうちに、ランジャンの姿は、木の葉が風にさらわれたかのように見えなくなった。


「シン、ランジャンの後を追え。

チェン、スージュイを呼んで来るんだ。

聶ミン、ジャーハン、座学生たちを頼む」


そう言うと、ウェイインも疾風の如く消えた。


沢蕪君が桜の幹に背をもたれかけ、気を失っている様に見える。

それを座学生たちが遠巻きにしていた。


ランジャンは、「君たちは、蘭室に行きなさい」と言って、沢蕪君を覗き込んだ。


ウェイインと暁シンが同時に着いて、無言で、ランジャンを見て、沢蕪君を見ている。


三人で二言三言交わし、暁シンが沢蕪君を軽々と横抱きにして、寒室へと急ぐ。



(蘭室にて)

しばらくして、スージュイが現れた。


「驚かせてしまって、大変申し訳ありませんでした」とスージュイが頭を下げた。


「沢蕪君には巨師たちもついていますので、大丈夫です」とスージュイに微笑みかけられ、ようやく緊張が解け安堵した座学生たち。


「では、講義を始めましょう。五大世家の歴史、偉大な人物編ですね。

皆さん、それぞれ、これぞ傑物!を決められましたか?

それでは、まずその人物を紹介し、選んだ理由を発表し合いましょう。そのあとの論戦も楽しみですね」

つづく



*早晩(そうばん)…遅かれ早かれ、いずれいつかは。


※藍家家規、少しだけ

立っている時猫背になってはいけない

座っている時だらけた姿勢になってはいけない

騒いではいけない

急いで歩いてはいけない






Q45の答えです

 

Q46