三次創作小話「忘羨その後」(3-15)




時を三十年ほど前に戻します。


温ニンは、大梵山の麓に庵を建て、一人で暮らしていた。


時たまスージュイが訪れるだけで、人付き合いはない。


目の前の畑で薬草を育て、作った薬をわずかな金で売っていた。


観音廟の一件から、一年が過ぎた頃、


『魔道祖師』という読本が流行り、温ニンは、この周辺では知らない人はいないほど有名になった。


ありがたい事に、客も増え、薬の好評も広まっていった。


ある日、薬を届けに夷陵の街まで出かけた。


帰り道、道端で屈んでいる娘が目に入った。


胸を押さえて、苦しそうだ。

脈拍が乱れていた。

丹薬を飲ませて、軽々と娘を抱きかかえ、送って行った。


娘の名はスーチン。

幼い頃、心臓の持病のため、何年も生きられないだろうと言われた。


両親に大事に育てられ、また良い医師と出会った事で、天真爛漫で快活、可憐な大人の女性に成長していた。


無邪気な笑顔とたくましい体、、、スーチンの頭から離れない。

すでに温ニンに恋焦がれていた。


『魔道祖師』の狂信者*のスーチンは、温ニンが「普通の人間ではない」という事実もすんなり受け入れている。


温ニンの善良で温厚な人柄に、心底惚れている。

こうしてスーチンは押しかけ女房になった。


一年後には女の子を授かった。


母体の命が危ぶまれたが、産む決意は固く、

母子共に無事だった時は、温ニンもスーチンの両親も泣いて喜んだ。


赤子は、温チンと名付けられた。

温ニンの亡き姉の名だ。


姉の分まで長生きして、姉の分まで幸せになってほしいとの思いが込められている。



スージュイは静室へと、気が急く。

外から「ウェイ師叔」と声をかけて、


もう一度「ウェイ」と言いかけた時、戸がすっと開いた。


奥でウェイインが衣を直している。

どうもことの最中だったと気づき、「失礼しました」と走り去る。



スージュイは、うさぎの餌付け場に座り込んでいた。

うさぎたちは心配するかのように、周りを取り囲んで草をはんでいる。


しばらくして、ウェイインがスージュイを捜して来た。

「遠慮するな。お前は俺たちの息子だろ」


スージュイは気持ちを立て直して、

「実はニン叔父から知らせが届きました。

無事に産まれたそうです」


(なんのことだ?)という表情のウェイイン。


ウェイインが雲深不知処に住み着いて、まだ一年ほどで、世情には疎かった*。


「すいません。知らなかったですよね。

ニン叔父が一年前に結婚して、今日、女の子が産まれて、、、私に従兄妹が、、、」


(どうしてウェイ師叔の顔を見ると涙が出てしまうんだろう)


スージュイの頭をよしよしして、

「一緒にお祝いに行こうな」


少し痩せた顔には優しい微笑みが浮かんでいる。

つづく



*狂信者は大ファンという意味です。

*世情に疎い…世の中の事情、ありさまに明るくない。





 

Q1:これは誰の手でしょう?

簡単すぎ!


Q2:この後ろ姿は、シャオジャンくん?イーボーくん?

答えは明日!





6月16日放送

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