三次創作小話「忘羨その後」(3-9)




その商家の前には、ジャンチョンと金リンとスージュイが待ち構えていた。


子ども達は沢蕪君にしがみついている。


「怖がらなくていいよ。みんな優しいからね」

と大きな手で頭を撫でられて、少し緊張が和らいだようだ。


「そろそろだと思う」

皆が息を呑んで、静まり返る。


やにわに、すすり泣く声が聞こえて来た。

その悲しみは、痛く心を震わせる。


沢蕪君が琴を奏でると、泣き声は止んだ。

その琴の音は優しく心に沁みてくる。


ウェイインが笛を吹き始める。

すると霊の姿が現れた。


そのまぶしさに体が透けて見える。


「父様、母様、、、」

嬉しいのに言葉が出てこない。


霊に代わって、沢蕪君が話し出す。


「生きていてくれたんだね。よかった、本当によかった」

「二人を置いて行くのは、とても辛いけど」


「暁シン、暁チェン、どうか強く生きてほしい」

「幸せになるよう見守っていますよ」


機を待って、ウェイインが曲の調べを変えた。


すると光輝く珠玉が弾かれたように飛び出した。

(ランジャンの霊識のかけらだ)


ウェイインが手を差し出すと、大人しく手のひらの上に落ちた。


暁シンと暁チェンが金色の光に包まれる。

直後、その光がすうっと空高く登っていく。



馬車にはウェイインとランジャンだけだ。


ランジャンはまだ目覚めていないが、その寝顔が笑っているようで、ウェイインはその顔を見ながら寝入ってしまった。


馬車がガタンと大きく揺れて、ランジャンが目を覚ました。


隣ですやすやと眠るウェイインを見て、嬉しそうに微笑む。


ランジャンには問霊をした後の記憶がない。

だが、全く気にしていない。


ウェイインが無事でそばにいてくれれば、その他の事は取るに足らない。



新しい我が家に着いた。

ランジャンはウェイインを軽々と横抱きにして、起こさないようにそっと寝床に横たえる。


しばらくその寝姿を見ていたが、どうにも我慢できなくなってしまった。


首に口づけ、手は内腿をまさぐっている。


「そこはだめだって言ってるだろ」

ウェイインの声はどう聞いても、甘えているようにしか聞こえない。


するとその内腿に口づけされて、もう何も言えない。

(ああ、また我を忘れて、陶酔してしまう)



一方、ジャンチョンは、面白くない。


ウェイインは、霊識を取り戻したら、一目散にランジャンの所に戻って、またすぐ、ランジャンを連れて帰って行った。


礼の一つも言わず、別れの挨拶もなく、、、


「まあ、それがウェイウーシェンらしいところか」と大きなため息をついた。

つづく





 

やっぱり大きいのを気にしてますねニコニコ