三次創作小話(1-5)「忘羨その後」
蓮花塢から戻ってきたウェイインは、ぼおっと雲を眺めています。
ここは雲深不知処内の河岸、右手に滝が見え、遠景には山々がうっすらと墨絵のように霞んでいます。
「ウェイの若君」と声をかけたのは、沢蕪君。
「何か悩み事でも?」
「ちょっとランジャンとけんかして、、、あっ、でもご心配なく」
「私でよければ聞くよ。君も私の弟なんだからね」
(なぜか逆らえない。やっぱり不思議な人だ)
ふうっと溜息をついて、「では座っていただけますか」と巨岩を指さした。
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蓮花塢から戻るのに、「ジャンチョンが送ってくれるから、迎えはいらないよ」って、ランジャンに伝文したんです。
そうしたら「他の者に任せられない!」という返事がきて、、、はっきり言って、困りました。
蓮花塢にいる間、ジャンチョンがずっと優しくて、
気遣ってくれているのが嬉しかったんです。
それで、断りきれなくて、ジャンチョンの御剣で帰って来たら、
ランジャンのやつ、拗ねりまくってて、、、
(拗ねた顔も可愛いんだけどね)
もっと大事な話があるのに、言い出せなくなってしまって。
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“大事な話”は気にはなったが、
(そんな事か)と笑みがこぼれる沢蕪君。
「つい先ほど、ワンジーに会ってね。
君を捜していたから、もう機嫌はなおってるはずですよ」
すると、一礼して、風のように消えたウェイイン。
「ランジャン、ランジャン、ごめんよ」
思いっきり抱きついたウェイイン。
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蓮花塢にいても、退屈で。だって弟子たちと修練できないし、(遊べないし)
街へ出かけても、お前と一緒じゃないと、つまらなかった。(酒も飲めないから)
早くお前の顔が見たかったんだ。ラン哥哥、機嫌なおして。
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耳たぶを真っ赤にしたランジャン、
「君が心配だっただけだ」
歯車が噛み合うように、磁石の双極のように、離れがたい二人。
ランジャンはウェイインを横抱きにすると、静室へと音もなく消えた。
ウェイインは、ランジャンの首にしがみついたまま、「ランジャン、大事な話があるんだ」
そっと下に降ろされても、しがみついた手は離さない。
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その、ちょっとしたした事故で、転んじゃったんだ。
あっ、尻もちついたくらいだから、全然平気だったんだけど、
ジャンチョンが「何かあったら、藍家に顔向けできない」って、大急ぎで医者を呼んでくれた。
で、あのな、落ち着いて聞いてくれ。
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つづく
絶対、目を合わせないシャオジャンくん。
緊張してる?