三次創作小話「忘羨その後」(1-3)




ここは、江氏の居所、蓮花塢です。

その執務室にはジャンチョンと子弟が一人。


ジャンチョンは、沢蕪君からの手紙を読んでいる。


だんだんと顔が険しくなってくる。

いったい何が言いたいんだ。


その内容は、時候の挨拶に始まり、弟夫夫がどんなに仲睦まじいか、、、そしてウェイの若君がどんなに優秀かを褒め称えて、、、まだまだ続く。


あきれたジャンチョンは、子弟に「これの要点を解読しろ」と手渡した。


自分は藍先生からの手紙に取りかかる。


含光君が宗主を辞し、沢蕪君が宗主代理になる事。

ウェイインが藍氏師兄になる事。


実に簡単明瞭であった。


子弟が、顔をあげたジャンチョンに、

「ウェイの若君が、、、ご懐妊だと」

恐る恐る言った。


「どこぞの女子をはらませただと、ありえん!ランワンジーに殺されるぞ」


「いえ、若君ご本人が、懐妊されたと」


ジャンチョンは手紙をひったくり、読み返す。

足元から、ゴゴゴゴという地鳴りがした。


ジャンチョンは、すぐにカッとなり、悪口雑言を吐く。


それを心配して、長々と事細かに、事情を書いてくれていたのだ。


子弟は逃げ出そうかどうか、一歩、二歩と後退りをする。


すると、冷静な口調で、

「すべての宗家、仙家に通達しろ。

ウェイウーシェンの破門を解き、江氏の大師兄に任じる」


ジャンチョンは、前々から、破門を解きたいと思っていたが、きっかけがなかっただけだった。



(ウェイイン、雲夢がお前の故郷で、蓮花塢がお前の生家だからな)


ジャンチョンは腕を組んで、遠い空を見上げている。



含光君は、必要な事以外は、何も喋らない。

(なぜか、いつも睨んでくる)


(ただ目つきが悪いだけかもしれないが、それにしても、気に食わん)


ジャンチョンは、会うたびに思う。

(あんなやつのどこがいいんだか…)


(もちろん、俺も睨み返してやる。

意地でも、負けてられるか!)


時たま、静室に通されるのだが、これがジャンチョンには耐えられない。


二人が、目の前で、肩や腕をぴったりとくっつけて、見つめ合ったたり、微笑み合ったり。


二人は恥ずかしいと思ってもいないし、見せつけたいというわけでもない。


彼らには、誰がいてもいなくても同じ、それが通常なのだ。


目をそむけて、言いたい事だけ言って、出て行く。

(お前が幸せならいいさ)


「父上、師姉、やつは元気で、うまくやっているようだ。心配いらないよ」


ジャンチョンは蓮花塢に戻ると、必ず、祠堂にひざまずき、祖霊に報告をする。


心穏やかになれる、このひとときを彼はこよなく愛している。

つづく






天官賜福 オーディオドラマep19


謝憐:でも、本当に思い出せないんだ

謝憐:以前に君と会ったのはいつだったか

謝憐:君は一体誰なんだ?



謝憐:ごめんなさい、気にしないで

謝憐:私は鬼の本名がすべて秘密だって分かってる

他人に無作為に伝えることはできないって

謝憐:私はただ尋ねてみただけ

謝憐:君が何者であろうと関係ない

謝憐:あなたがあなたであるだけで十分だ

花城:誰が知っている?

花城:いつか分かる時がくる

謝憐:郎千秋とのことがどうなったかに関わらず、私は君に感謝しなければならない

謝憐:今はどうすればいいのか分からない

謝憐:でも、こんなのも悪くないかも

花城:考えすぎだよ

花城:あなたは、ただそれをやることに気をかけるだけでいい