三次創作小話s「忘羨その後」現代版(31)








【すれ違いのふたり2】



ランジャンママは、翌日の夕方、ウェイインを訪ねた。

〈夕食は済んだ?〉「いいえ」


〈そこのレストランで作ってもらったの。

一緒に食べましょう〉


ウェイインは、苦笑いをして、手をつけようとしない。


〈そんなだから、ワンジーがしつこくするのよ。

しつこくされたくなかったら、食べるの、ね。

食べ始めたら、意外に食べられるものよ〉


ふふふ、と笑って、

〈今日は、悪口を言い合いっこしましょう〉


「ランジャンはどうしてますか?」

〈悲しみのあまり死んじゃうかもって思った?〉


〈あなたを残して先に死なないって決めたから、死なないって〉パクパク食べるママ。


〈ワンジーは、父親似なの。

自分に厳しいし、他人にも優しくない〉


〈よく、冷たいとか言われるわね。

でも、心の中は、優しくて情熱的なの〉


〈ワンジーを理解してくれる人は、現れないだろうって、あきらめていた〉


〈なのに、あなたみたいな、内も外もイケメンな男の子に愛されて、とても幸運だと思ってる〉

ウェイインをじっと見つめる。


〈いつも一緒にいたがって、触りたがる。

放っといてほしいって思うわ〉


〈それに嫉妬深いでしょ、束縛したがるでしょ、なんでも聞きたがる、知りたがる。

おまけに、すごく心配性。

息が詰まるわよね〉


〈そうそう、夜もしつこいでしょう?

私も何度、実家に逃げ込んだことか…〉


〈私ばっかり、喋って、、、あなたも何かあるでしょ?大丈夫、オフレコにするから〉



手持ちぶたさに、もぐもぐ食べていたウェイイン。


「ただ、忙しいんだから仕方ないって思ってて、、、」


「自分の気持ちに気づいてなかったけど、離れていたかったのかもしれない」


「急に、一日中一緒にいるようになって、一人の時間がなかったから」


「それに、家事も身の回りの世話も、完璧なんだ」


「俺はちょっとくらい散らかってる部屋の方が居心地がいいんです」


〈調子が出てきたわね。ワインでも飲みながら、話しましょう〉


「ダメージ加工のセーターの穴を繕ったり、ワッシャー加工のシャツのしわにアイロンかけたり」


「あと、靴下にまで、アイロンかけるんですよ。

アイロンの熱で除菌ができるとか言って。

でも、毎日そんな事までしますか?」


「それに、殺菌消毒をやり過ぎなんだ。

俺の手洗いを監視するんですよ」


「見て下さいよ、この除菌スプレーの数。一部屋に何個置いているんだか」


ウェイインは、酔いが回ってきて、ぽつりと言った。

「でも、愛しています。俺には、あいつしかいない」


〈それだけ、伝えておくわ。

会いたくなったら、迎えに来て下さいね。

じゃ、帰ります〉


振り返って、

〈また、面白い話があったら、聞かせてね。ふふふ〉

ランジャンママは帰って行った。


一人ベッドの上で、天井を見て、右側を見る。

(ランジャンはどうしてるだろう)


ランジャンのガウンを抱きしめ、ランジャンの匂いを嗅ぎ、めくるめく夜を思い出す。


(会いたい。でも、窮屈な生活に耐えられるだろうか…)

つづく