【すれ違いのふたり2】
ランジャンママは、翌日の夕方、ウェイインを訪ねた。
〈夕食は済んだ?〉「いいえ」
〈そこのレストランで作ってもらったの。
一緒に食べましょう〉
ウェイインは、苦笑いをして、手をつけようとしない。
〈そんなだから、ワンジーがしつこくするのよ。
しつこくされたくなかったら、食べるの、ね。
食べ始めたら、意外に食べられるものよ〉
ふふふ、と笑って、
〈今日は、悪口を言い合いっこしましょう〉
「ランジャンはどうしてますか?」
〈悲しみのあまり死んじゃうかもって思った?〉
〈あなたを残して先に死なないって決めたから、死なないって〉パクパク食べるママ。
〈ワンジーは、父親似なの。
自分に厳しいし、他人にも優しくない〉
〈よく、冷たいとか言われるわね。
でも、心の中は、優しくて情熱的なの〉
〈ワンジーを理解してくれる人は、現れないだろうって、あきらめていた〉
〈なのに、あなたみたいな、内も外もイケメンな男の子に愛されて、とても幸運だと思ってる〉
ウェイインをじっと見つめる。
〈いつも一緒にいたがって、触りたがる。
放っといてほしいって思うわ〉
〈それに嫉妬深いでしょ、束縛したがるでしょ、なんでも聞きたがる、知りたがる。
おまけに、すごく心配性。
息が詰まるわよね〉
〈そうそう、夜もしつこいでしょう?
私も何度、実家に逃げ込んだことか…〉
〈私ばっかり、喋って、、、あなたも何かあるでしょ?大丈夫、オフレコにするから〉
手持ちぶたさに、もぐもぐ食べていたウェイイン。
「ただ、忙しいんだから仕方ないって思ってて、、、」
「自分の気持ちに気づいてなかったけど、離れていたかったのかもしれない」
「急に、一日中一緒にいるようになって、一人の時間がなかったから」
「それに、家事も身の回りの世話も、完璧なんだ」
「俺はちょっとくらい散らかってる部屋の方が居心地がいいんです」
〈調子が出てきたわね。ワインでも飲みながら、話しましょう〉
「ダメージ加工のセーターの穴を繕ったり、ワッシャー加工のシャツのしわにアイロンかけたり」
「あと、靴下にまで、アイロンかけるんですよ。
アイロンの熱で除菌ができるとか言って。
でも、毎日そんな事までしますか?」
「それに、殺菌消毒をやり過ぎなんだ。
俺の手洗いを監視するんですよ」
「見て下さいよ、この除菌スプレーの数。一部屋に何個置いているんだか」
ウェイインは、酔いが回ってきて、ぽつりと言った。
「でも、愛しています。俺には、あいつしかいない」
〈それだけ、伝えておくわ。
会いたくなったら、迎えに来て下さいね。
じゃ、帰ります〉
振り返って、
〈また、面白い話があったら、聞かせてね。ふふふ〉
ランジャンママは帰って行った。
一人ベッドの上で、天井を見て、右側を見る。
(ランジャンはどうしてるだろう)
ランジャンのガウンを抱きしめ、ランジャンの匂いを嗅ぎ、めくるめく夜を思い出す。
(会いたい。でも、窮屈な生活に耐えられるだろうか…)
つづく