え三次創作小話「忘羨(ワンシェン)その後」第四十七章①



第四十二章の続きです。

(雲深不知処にて)
遠景の山々は、すっかり、墨絵のような趣だ。
雪を冠した黒い山肌は、底深い闇のようだが、静謐な美しさも湛えて(たたえて)いる。

ひと月が過ぎ、金家では、千シュンの弔い上げ*を終えた。
金氏、江氏の忌中のため、座学は中止と決まった。

静室の改修が終わり、ウェイインとランジャンは、穏やかな日々を過ごしている…はずだった。


(静室にて)
⭐️「最近、いいこと、おもしろいこと、楽しいことが全くない」

「嫌なことが多いです。
大なり小なり、毎日のように揉めごとが起こっています」

「俺たちが静室に移ってからだったか?」
「沢蕪君が戻ってからでしょう」

「確かに、沢蕪君がメイメイ殿を連れて来たことで、ランジャンが不機嫌になった。
それが、始まりかも知れない」

「含光君とは険悪なんですか?」
「険悪なんてことはないぞ」
ウェイインはむっとして言った。

「いつも寄り添っていたのに、近頃、お一人でいる姿をよく見るようになりました」
「ああ、一度言い争ったが、大したことではない」

「今、含光君はどちらに?」
「蔵書閣で公務じゃないのか?」

「私も仕事に戻ります。
ウェイ師叔のようにのんびりと過ごしたいものです」
「なんだって?俺がひま人だって言いたいのか?」

「はい?そういうつもりではありません」
スージュイが立ち上がると、
ウェイインが背を向ける。

(なぜ、あんな言い方をしたのだろう)
(あれぐらいで、腹をたてるなんて)
二人はそれぞれ、後悔をしている。


(寒室にて)
「また、けんかですか?」
沢蕪君があきれて言う。
子弟四人が暁シンと立っていた。

暁シンが「この者が一番先に手を出しました」と言うと、

「でも、こいつの言い草が、」
「口の聞き方に注意しなさい!」

「お前が悪い」と争いが始まった。
「とにかく、膝を付きなさい!」

子弟たちが静かになると、
沢蕪君は暁シンを寒室に招き入れた。

「いつもの君らしくないですね。
何かに、いらだってますか?
精神的に疲れているのでは?」

暁シンは、はっとして、
「私はつい怒鳴ってしまいました。
謝らなければ。
そして、何が悪いのか、諭してきます」
つづく


⭐️の後は、ウェイインとスージュイが交互に話しています。






ライオン🦁とパンサー🐆