(温家診療所にて)
翌朝です。朝から雲一つない快晴。
物見遊山に出かけたくなるような、小春日和の穏やかさです。
ジンイーは、座学生を食堂に集めた。
「何が始まるんだ?」
「お説教か?」
「お説教なら、きらきら金氏だけにしてくれよ」
「あいつら、迷惑ばかりかけて、何様のつもりだ」
ジンイーは「うほん」と咳払いして、
「きのうは、遅くまで行方不明者の捜索に手を借りて、申し訳ありませんでした。
なので、今日の予定はすべて延期します。
これから、市場に繰り出しましょう!」
「やったあ!」
「一度行ってみたかったんだ」
「市場って?聞いたことがない」
「そこに行って何をするんだ?」
「それより、ゆっくり休みたいよな」
「おほん」と気取った声を出すジンイー。
「商家などで仕事を手伝ってもらいます。
もちろん、働きぶりが優れていると評価された者には褒美が出ます。
商家からも温家からも」
「そこで、組み分けをしようと思います。
ここにあるくじを引いて下さい」
座学生たちが我先きにくじを引こうと押し寄せる。
「残り物には福がある。という言葉を知らないのか?」
その声に振り向くとウェイインが腕を組んで、壁に寄りかかっていた。
ウェイインは皆の前に立つと、
くじの箱を手に取り、「順番に並べ。俺が引いてやる」
一人目に、紙片を手渡すと同時に、
「なぜ、若い仙師を集めて教化するのか、分かるか?」と訊いた。
二人目の時には、
「各々の能力を伸ばすことはもちろんだ」
次々に手渡しながら、声をかける。
「同時に、他世家と交流し、切磋琢磨する。
この場でしかできない事だ」
「互いの違いを認め、敬うべき所は敬う」
「自分の改めるべき所は改める」
「そして、将来支え合う、知己を得られれば、これ以上幸せなことはない」
「いいか、常に視野を広く、」
「思考を柔軟に、」
「行動は迅速かつ確実に、」
「結論は慎重に、されど大胆に、」
金家の子弟三人は、くじを受け取りにこない…
つづく
避塵の剣の先っぽが、、、
https://x.com/tinyizhan/status/1737511930422534631?s=46&t=BKI2Vjbw7xegQeZ79lADgw