三次創作小話「忘羨(ワンシェン)その後」第四十三章①
ダニエルはレイユーの仇を捜すため、大英帝国に戻ります。
フォンシン、ムーチンはダニエルの警護役を買って出ました。
そんな三人の冒険譚です。
(大英帝国にて)
「盗まれた金剛石の宝物が、博物館の所蔵品になった経緯を調べよう」
「まず、博物館の館長に会おう」
「できない、無理。王様、拝謁、同じ」
「“拝謁”、知ってるんですか?」
「もちろん、東方行くなら、コモン*よ」
「はあ」
「東洋芸術部門の責任者に面会はできますか?」
「リクエスト、頼みました。ひと月待って」
「では、他の方法を、」
「左右の瞳の色が違う者*を捜し出そう」
「いいアイデアある。ニュース、新聞**ね」
と言って、英文がぎっしり書かれた紙を取り出して、隅の小さな枠を指差した。
「これ、ウオンティット パーソン*」
辞書を持ち出して、
「捜している人?」
ダニエルは下書きを書いて、説明した。
〜〜〜〜〜〜〜〜
とある貴族の遺産を継ぐ者を捜している
幼い頃、母親と共に城から追い出された男子
左右の瞳の色が違う者
毎日昼に、セントポール大聖堂前にて待つ
〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう少し、詳細に書いた方がいいのでは?
瞳の色も年齢も」
「これで信用されますか?
貴族の名前とか、母親の名前とか入れないと、疑われませんか?」
「この位、いい。
君たちの国の人、まじめすぎ。細かい。
初めは、秘密ね、出さない。
これ、ハイソサエティ*、コモン*」
「ええと、上流社会、常識?」
「そうそう」
一日目、二日目と誰も来ない。
三日目にやっと犯人像の男が現れた。
左目が青く、右目は茶色、三十代。
名前と居所を記入させて、連絡を待つようにと言って、帰した。
その後すぐ、二日間、その男を尾行した。
「家族と仲睦まじく、仕事も勤勉」
「たたいても埃が出ないな」
日を重ねるごとに、倍々に人数は増え、少年から初老まで。
もはや、瞳の色は、違っているとは思えない者まで。
その後も、該当する者は現れず、
七日目、
「今日、見つからなければ、あきらめて、別の手を考えよう」
大勢の前で、ダニエルが叫ぶ。
「二十才以下、四十才以上は、帰って」
銀貨を渡して帰ってもらう。
「左目が青で、右目が茶色の人だけ残って」
ぞろぞろと全員が銀貨を手に帰って行く。
「だめだったか」三人は輪になり、
「次はどんな手を…」
「ディテクティブ*、…」
そこに一人の男が、おずおずと声をかけた。
つづく
*オッドアイ、左右の瞳の色が違う。
**新聞…中国では唐の時代、9世紀には「新聞」が出現していた。(印刷機を使った中世の新聞とは違います)
*ディテクティブ…探偵
💬初めの質問の答えが聞きたいなあ