朝日新聞に吉田秀和さんの音楽展望という欄がある。

今朝の「映画の思い出」と題された一文は見事な映画・音楽評で、

それはわたしにとても新鮮な視点だった。

映像、音、無音の音まで聴こえてくるような。

今日みたいな薄曇の秋の日にこんな文をうっかり読んでしまったので

映画の添え物的にきき流してしまったたくさんの音楽たちを、

あらためてききなおしたい、と思った。

文末にリルケの詩が紹介されていたのでかってに転載、

吉田さん訳だそうです。



《秋の日》


主よ、時です。夏はとても大きかった。

あなたの影を日時計の上に投げかけ、

野の上に風を走らせてください。


再度の果実に満ちよと命じ

彼らにあと二日の南国よりの陽を与え

彼らを完熟に向けおしやり

最後の甘味を重い葡萄に注ぎ給え。


今家を持たぬものは遂に何の家も建てず、

今独りでいるものは長くそのままでいよう。

夜、目覚め、読み、長い手紙を書き

並木道を行きつ戻りつ、あちこち

落ち着きなく小迷う(さまよう)だろう、木の葉の走る時。