お伽話にでも出てきそうな暗く小汚い小径への入口にその店はあった。
看板なんてない。
なのに人はその薄暗い小径へと吸い寄せられる。
ボクが西成にやってきたのは、その小さなおでん屋ふかがわで熱々のおでんを食べたかったからだった。
この鍋に入ってるおでんが全てなんだろう。
めっちゃ堅いw
食べてみると…
うんめ〜(@ ̄ρ ̄@)
なんてことのない普通の竹の子にしか見えなかったので完全に油断してた。
戦後の焼野原跡にペラペラのバラック小屋が建ち並び、少し広い大通りには敷物を敷いただけの露店が犇めいる。
その片隅でおでん鍋はグツグツと音を立てて空へ熱気を立ち上げていた。
その横で若い女将さんが道行く人に元気に声を掛けてる。
女将「熱々のおでん食べませんか。甘くて柔らかくて美味しいですよ。」
あれっ。
赤毛の少女がシクシクと泣きながら歩いてきた。
それを見て女将さんが駆け寄る。
女将「どうしたん?」
赤毛「髪が赤いからってイジメられた。」
女将「そっか。赤い髪綺麗やから嫉妬してるんやわ。そんなに泣いたらお腹空くやろ。お客さん全然けーへんし、おでんでも食べる?」
赤毛「うん。」
女将「アハハ…めっちゃ食べるやんか。美味しい?」
赤毛「めっちゃ美味しい。最近何も食べてなかったからちょっと食べ過ぎてしまった。ごめんなさい。」
女将「ええから一杯食べてな。あんたのお父さんとお母さんは?」
赤毛「いない。(ノ_<)」
女将「え…あなたも一人か。」
それから70年が経って…
まぁ…そんなことはないか。
ボクは店から出ると、ホルモン屋の前で声をかけてきた赤髪のオバさんを探してみる。
あれは一体何だったろう。