今日は北村英治さんの95歳のお誕生日、そして今夜は銀座Swingでバースデーライブです。お席はすでに完売ですが、ライブ配信もあるのでぜひご利用ください。

 

 

 

 長年北村英治さんの横に立たせてもらっていますが、最初にお仕事のオファーをいただいたのが1994年なので、今年で共演三十周年となります。僕の少年時代の夢は、北村さんと演奏できるようなクラリネット奏者になることでした。気づけば人生の半分を超える年月にわたりコンスタントに共演させてもらっており、これほど幸せなことがあるでしょうか。

 

1994年6月の銀座Swingのスケジュール表。谷口は26歳、現在の北村さんバンド発足以前です。

 

1996年、神戸ジャズストリートにて

 

 この長いお付き合いの中で、じつに様々な楽しい思い出がそれこそ本一冊書けるくらいあり、折に触れて共有していかねばと考えていますが、今日はその中でも特に強く心に刻まれているエピソードを一つ。

 

 2012年夏、北村さんは重篤なご病気のため入院されます。ミュージシャンもファンも祈るような思いで一日も早い復帰を待ち望む日々を送りました。およそ百日後の12月5日、その期待にこたえ、北村さんは83歳とは信じがたい驚異の回復力で、谷口代演の北村バンドが出演していた銀座Swingのステージに戻ってこられました。

 

「まだドクターストップがかかっていて仕事はできないんですが、一曲だけならというお許しが今日お医者さんから出ましたので。」

 

ステージが温かい拍手に包まれます。さて何をやろうかと、北村さんがコールした曲は、

 

  ♪ As Long As I Live(生きているかぎり)

 

生死を彷徨った出来事ですら、ハッピーなショーにしてしまう北村英治さん、すごすぎませんか。

ステージも客席も涙を流しながらスウィングした、忘れられない夜です。