クラリネット奏者 水野まなさんが初アルバム CD「見つめる未来」をリリースされました。彼女は洗足学園音楽大学のクラシック科出身。海外留学を経て帰国したのち、しばらく僕のレッスンを受けていました。コロナ禍のオンラインレッスンにおいても、ポップス演奏の考え方からジャズのアドリブ、はては配信ライブの悩み相談まで(笑)、なんでも力いっぱい学ぼうとする姿勢が印象的でした。

 

 アルバムの方は、5人の気鋭作曲家が書き下ろしたオリジナル作品集となっており、演奏フォーマットはクラリネットとピアノによるホール演奏という由緒正しきクラシックのスタイルです。作品はいずれも聴きごたえと親しみやすさにあふれる力作で、近現代クラシック、ポップス、ジャズ等の要素が感じられます。



 この手の企画は「ポップスやジャズをそれ風に吹いてみました」というような半端な表現に陥るリスクをはらんでいるものですが、水野さんは諸々の要素にていねいに向き合った上で完全に自分の言葉に置き換え、彼女の軸足であるクラシック的マナーにきちんと落とし込んでいます。そういう「水野まなオリジナルスタイル」を確立しつつあると言えるかもしれず、そうした意味でも、委嘱した作曲家および共演者陣、それにどの部分に誰のアドバイスを受ければよいかの選択眼も見事としか言いようがありません。


 クラシックなの?ジャズなの?ではなくて、これからの時代はこうした取り組みの中から、将来の長きにわたり演奏し継がれるクラリネット作品が生まれてゆくような気がします。水野さんはそうした「未来」を見つめているのかもしれません。


 さらには、配信ライブ等を上手に活用して人脈を確実に構築した上でクラウドファウンディングに持ち込むという流れの作り方にも無駄がなく、時代についてゆくのが必死の僕としてはいろいろ勉強させられる思いです。そして帯を見ると「同じ楽曲をEWIで演奏したアルバムも同時発売中!」なんてことまで



 この人たぶん、音楽やってなかったとしても何でもうまくやるタイプなんでしょう。かと言って、決してゴリゴリな人間ではなく、会うとあいかわらずキャピキャピしてるんです。そう、その天真爛漫な人がらはぜったいクラリネットに合っているし、何より音に表れています。


音は人そのものですから。


発売は2024年3月20日より。