ゴブリン襲来 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

そして、遂に僕はゴブリンの討伐を決意したのだった。




いや、友達のゴブリン化ショックからの傷が癒えるのに時間を要した訳だ。




40歳を過ぎたこの俺が震えた程の衝撃を分析して説明しよう。




まず、人妻とは知らずに友達になって仲良くしていたら急に旦那の地元である大阪に引っ越してしまって、それから約6年ぶりに友達と再会したのだ。



この【6年ぶりに再会する異性】というシチュエーションで俺は勝手に友達が成長しているイメージをしていたのかもしれない。




同窓会に1度も参加したことのない俺からすると現実という厳しさを知らないで生きてきたことになる。




学生時代に眼鏡を掛けていた女子が同窓会で再会したらコンタクトにしててメッチャ美女になってたみたいな。




少女時代から大人の女性に成長するみたいな会えない時間に魅力が増すみたいな。




ただ、思ってたのと違ったのは、俺と友達は36歳~42歳という期間に会えなかったわけでね。




36歳でもう充分な大人の女性になってたら42歳では伸び代なくないすか?




つまり、俺が友達と再会する時にすべきことは【期待】ではなく【覚悟】だったのよ。




40過ぎた女性と会うには覚悟が必要なのよ。




40過ぎた女性は想定外の角度から殺しに来るからね。




友達と会う前に電話したわけ。




「何食べる?」



「○○君はなに食べたいの?」




「まぁ俺は何でもいいんだけど、何でもいいって言ったら怒られるかもしれないけどさ(笑)」




「そんなことで怒らないわよ(笑)じゃあ日高屋でいいんじゃない?」




正直、6年ぶりに再会して食事をするのに日高屋?って思ったよ。




まぁ当時の俺は今よりもクソ貧乏だったから友達は気を使ってくれてるのかもしれないなと。




で、日高屋の前で待ち合わせをしたわけよ。




「○○君!!」って友達から呼ばれる声がしたから俺は立ち上がって振り向いたわけよ。




声の方に友達の姿を探したわけ。




そしたらお婆ちゃんみたいなゴブリンが目の前にいるわけよ。




ちょ、ゴブリン邪魔すんなと。




ゴブリンのお婆ちゃんどうしたの?と。




おい、まさか、嘘だろ?

ゴブリンの呪いでもかけられたのか?と。




状況を理解するのに体感で30秒は掛かったね。




友達はスッピンだったのよ。



スッピンにジャージ姿で前髪をゴムで留めてたわけ。




眉毛が少しだけ生えてるわけ。




わかる?眉頭だけに眉毛が芝みたいにぼさっと生えてるわけよ。




えっ?病気??



まじで病気の犬みたいに毛が抜けた後って感じなのよ。




スッピンって脳が理解するまでに恐怖が先に来てるわけ。




40過ぎた女性のスッピンって見ることないじゃないですか?




普通に生活してたら、いや、結婚してたら嫁のスッピンを見てたら予防接種が出来てるのかもしれないけど、俺は独身だから40歳を過ぎた女性のスッピンに対しては童貞なわけよ。




初めて女性のアソコを見たときの衝撃に近かったね。




先輩から裏ビデオを買って友人宅で仲間たちと初めて見た中2の時の衝撃と同じくらい想定外の迫力だった。




一緒に日高屋に入るの嫌だなって思ったくらいなのよ。




お婆ちゃん連れて日高屋に入りたくないじゃん。




まあ入るんだけどさ(笑)




で、友達は昔と同じように俺をソファー側に座らせるわけよ。




それは友達の旦那が20歳年上でヤクザだから仕込まれた男を立てる習慣みたいなもんなんだけどさ。




俺からしたらお婆ちゃんをソファー側に座らせないクソ孫みたいに周りから思われるわけじゃん(笑)




で、友達から旦那と離婚する流れになった件を聞いてさ。




その話を聞きながら俺としてはゴブリン化の謎を解くミッションもあるわけ。




確かに6年前より痩せてるなと。




友達は夜職を辞めて昼間の仕事をしてるのもあるけど、痩せてるから骸骨に皮膚が乗ってる感じになってるわけ。



おそらく年齢的に皮膚が下がるタイミングと痩せるタイミングがゴブリン化を後押ししてる感じなのよ。




ぽっちゃり好きという男の優しさってこれなのかな?と40過ぎて俺も悟ったわけ。




というかさ、友達のメンタル凄くね?




完全に大阪のオバハンのメンタルなのよ。




こっちだと栄えてる駅前でスッピンにジャージの女性は1人も居ないのよ。




つーか、ここは友達の地元なわけ。




俺は10年前くらいに仕事がクソ忙しくて引っ越しの内見する時間もなくて実家の両親が勝手に決めたところに引っ越してきて住んでるわけ。




逆にそういうことなのか?俺が引っ越して来た時には駅前が栄えてたけど、昔から住んでる友達にとってはスッピンにジャージで出歩ける地元ってことなのか?




とにかく友達の変わり果てた姿に俺はショックで仕方がなかったのだ。




どんだけ苦労したらそうなっちゃうんだよと。





つーか、スッピンで、来るかね?




まあ友達からすれば俺は男の友達だからそういうもんなのかもしれないけどさ。




なんだろうな、元カノにしても友達にしても、そういう悪趣味なところがあるっちゃあるのよ。




俺が楽しみにしていることをぶち壊して喜ぶみたいなところがあるわけ。



で、日高屋で飯食って、友達の泊まってるビジネスホテルの前まで送ってそこで暫く話をしてさ。




話すことはいっぱいあるからコーヒーでも飲むことになってね。




コメダ珈琲に行くことになったわけ。




俺としては初めてのコメダ珈琲なのよ。




ジャージでスッピンのお婆ちゃんとコメダ珈琲は嫌だなって思ったよ。




まあ、でも入るわけだよ(笑)




1人じゃコメダ珈琲には入れないから、こんなチャンスはないなと。




「俺コメダ珈琲って初めて来たから注文したらいいかわかんないよ」




「わたしも昨日T(友達の親友)と初めて来たから詳しくない」




コメダ珈琲って名前なのに俺はココアを注文した。




友達と対面で話をした。




顔はだいぶ変わったけど、それにも見慣れて来たのでようやく友達の顔を見ながら喋った。




確かに眼球だけは昔の友達のままだった。




その眼球の動かしかたは間違いなく友達だった。




昔は黒目の大きくなるカラコンをしていたけど、今はどうなのかわからない。




友達の目だけを見ていた。その目に懐かしさを感じていた。




その眼球から徐々に昔の友達の面影が甦ってきたのだ。




怪しんだときには目を細めたり、驚いた時には目を大きく開いたり、その面影はやがて顔全体に広がって行った。




嫌なことがあると口元を歪ませる癖も昔のままだった。



ようやく6年の歳月が現在と繋がった気がした。




そういえば友達はコーヒーが好きで俺の部屋でもコーヒーを作ってくれてたな。




駅前にある色んなコーヒー屋に友達が居てそれを俺がヒントから店を探して見つけたりしてたなあ、とか。



その頃にはコメダ珈琲はまだなかったのだ。




友達のおかげもあり40代の女性のスッピンにも見慣れることが出来た。




ゴブリンを討伐することに成功したのである。