ちびまる子ちゃんの作者である、さくらももこ先生が亡くなられたことを知った。
ちびまる子ちゃんは僕としてはギャグ漫画という認識だった。
アニメでの独特のナレーションや“ガーン”という縦線が入る表現も面白かった。
キャラクターも豊富で、そのなかでも“永沢くん”は存在そのものがシュールなのだが(玉ねぎ頭で、その先っちょにも小さい帽子を被ってる)その発言も小学生にしてはダークな内面なのだが、それもギャグにしていた。
僕が中3の時に、ちびまる子ちゃんのスピンオフ作品(当時はそんな洒落た呼び方は誰もしてない)として『永沢くん』という永沢くんが主人公の漫画が発売されたのだ。
とはいえ、当時はインターネットもない時代で、誰かが偶然にも発見して手にいれた代物という感覚に近かった。
今でも覚えているが、漫画の表紙の表面が立体的な凹凸がついていた、と思う。
漫画というか、絵本のようなサイズだった気がする。
僕はその『永沢くん』を当時、好きだった女の子から借りることになったのだ。
この話だけ聞くと僕の好きだった女の子にブス感が漂ってしまうが、『永沢くん』の持ち主は別の男子だったのだ。
僕の中学は4クラスだったので、男子なら全員と喋ったことがあるので、『永沢くん』という本をが手にいれたという噂はすぐにキャッチしたのである。
僕はすぐにのいるクラスに行って『永沢くん』を貸してくれとお願いした。
そこまで親しい相手ではなかったが、『永沢くん』を買う者と、それにすぐに飛び付く者は似た者同士なので借りる約束は成立した。
ただ、そいつは彼女がいるタイプの男子だったので、『永沢くん』は彼女に貸してるから彼女が読み終わったら僕に回すように伝えておくと。
田舎の中学なので堂々と学年全員が公認するカップルは彼らだけだったので彼女が誰なのかも分かっていた。
僕は待ちきれなくて『永沢くん』を読み終わったのかをそいつの彼女のところまで確認をしに行ったのだ。
当時は女子とは口を聞かないのがカッコいいと思っていたが『永沢くん』は女子と口を聞いてでも僕は読みたかったのだろう。
その彼女に確認すると、『永沢くん』は読み終わってA子に貸してると言うのだ。
A子に読み終わったら僕に回すように言っとくと。
そのA子ちゃんのことが僕は好きだった。
ずっと好きだったんだぜと。
想定外の展開になったわけですな。
これがね、洋楽のアルバムとかならいいよ。
『永沢くん』ですよ。
好きな女の子と永沢くんとの天秤ですよ。
よくわかんないけど(笑)
なぜ、天秤に乗せたのか意味がわからないけどね。
どういうわけか僕の気持ちとしては
(早く読み終わんねえかな)と。
この面白さを僕は学年で4番目に楽しめるわけですよ。
女子の妨害は想定外でしたから、これは男子が回して読むべきもんだと。
窓際でカーテンの中に入って外の景色を眺めながらA子ちゃんが永沢くんを読み終わるのを待ってたんですね。
で、A子ちゃんが読み終わったという声がして、僕は急いでカーテンから出たらA子ちゃんは逆にカーテンの中に入ってたんですね。
そんで僕は慌ててカーテンの中に入ったら、今度は同じタイミングでA子ちゃんがカーテンから出るというね。
そんなことを繰り返してやっと渡す物が『永沢くん』ですからね。
顔を真っ赤にしたA子ちゃんから『永沢くん』を借りた思い出があります。
ちびまる子ちゃんという作品内ではリアリティーのある小学生の物語なのに、永沢くんだけは玉ねぎ頭という違和感があったんですよ。
その玉ねぎ頭の先端には小さい帽子を被ってるわけで、デフォルメなんだろうけど、そこにはツッコミを入れないでスルーしている“おかしみ”を感じていたわけです。
それが永沢くんの持っている毒のようなものを中和するような、綺麗事だらけの小学生を描いた物語ではないわけですよ。
さくらももこ先生はビートたけしのファンだったそうなので、たけしイズムのような作品内でのギャグにもその影響を受けているとは思うんですよ。
僕は世代としては、ビートたけしのオールナイトニッポンは聴いてませんが、僕が高校生の時には東京FMで浅草キッドと一緒にやっていたビートニクラジオは聴いていたんですね。
放送は日曜日の深夜なので、いかに僕の高校生活には救いがなかったのかが分かりますけど(笑)
たぶん、どこかで永沢くんのような“おかしみ”とも繋がるとは思うんですけどね。
先日も名古屋に行った時には大須演芸場を見に行きましたからね。
聖地巡礼ってやつですかね。
ツービートが結成して間もなく浅草から名古屋に向かった頃の話に出てくる場所だったなと。
こういう記憶も急に思い出すもんなんですね。
僕は名古屋に着いて1人で名古屋名物のあんかけスパゲッティを食べたら美味しくなかったんですね。
それをイカれた彼女に話をしてたら、マジスパという店が大須って場所にあると。
翌日の予定を立ててる最中だったので、僕としては(あんかけスパゲッティが美味しくなかったからって、翌日にもスパゲッティはないんじゃないか?)と。
とはいえ、美味しいなら食べれなくはないなと。
東京の下北沢にも同じ店があるらしくてね。
じゃあ、なんで名古屋まで来てそこ行くんだって思った時に(大須?名古屋?何か聞いたことあるな)と。
近くに大須演芸場ってない?と。
頭の中のイメージと実物を実際に見てみたいと思ってね。
で、行ったわけですが、マジスパの“スパ”はスパゲッティの“スパ”ではなかったんですね。
僕の気持ちは大須演芸場だけでしたので、お店に入った時も店員の女の子の服装が派手だなとは思いましたけど、名古屋の女子は派手という認識だったので気にせず席についたわけです。
イカれたやつから辛さを選べると言われても、スパゲッティの辛さの意味がわからないまま普通のやつにしてね。
店内も薄暗いから店員さんが運んでる皿に乗った黄色いのやつも玉子麺のパスタだと思ってたんですよ。
そんで料理がテーブルに並んで初めて理解したんですよ。
スープカレーを食べに来ていることに(笑)
スパイスの“スパ”だったんです。
直前までスパゲッティの口になってるところに、スープカレーですからね。
皿の黄色いのも玉子麺のパスタじゃなく、黄色いライスだったわけでね。
店員の派手な女の子もインドの民族衣装だったんですね。
僕の中では、名古屋の女の子ならやりかねないファッションとしてスルーしていたわけですよ。
それは永沢くんのような認識だったのかもしれません。
外見や災難も“おかしみ”のあるキャラクターとして成立することによって、全てを受け入れることが面白いことなのだと。
『永沢くん』面白かったです。