鬼の居ぬ間にって言葉があるじゃないですか。
これは僕の持論なんですけど、普段は真面目な人なのに“鬼の居ぬ間に”悪さをする人っているわけですよ。
ただね、その場合のさじ加減というか、普段の真面目からのギャップというか、本性が怖いなって思うんですね。
やっぱりね、小さい頃から悪さをしてる人はちゃんとバレた時のリバウンドまでを体験から把握してるわけですよ。
詰めが甘いというかね。
専務が休みだから普段よりも早く帰りたい、この気持ちは分かるのよ。
だけど全員の足並みを揃えて早く帰らないとダメじゃないですか。
連絡を取り合って先に終わったチームは他のチームの片付けを手伝って、みんなで早く帰りましょうと。
先に着替えてんだよね。
僕らが詰所に向かってる途中なのに、もう着替え終わって帰ってるわけ。
別に構わないけど、そういうことじゃないのよね。
普段から真面目で、こういう時にも真面目を貫く人の方がまだ表裏一体で理解できるんだけどさ。
鬼の居ぬ間に早く帰ることも仕事だからさ。
どうしたら、自分が何をしたら全員で早く帰れるかって考え方じゃないのよ。
とんでもない人間の闇の部分を見てしったようような感覚になるわけですよ(笑)
自分だけでも早く帰りたいという目の前の欲望を満たしている時の顔の悪さね(笑)
こういう時にストレスの発散をしてるのかもしれませんけど、こういう時にこそ人間性が出るからね。
上司に文句が言えない人の最大の理由はここなのよ。
個人的な感情だから何も言えないわけさ。
上司に文句を言うのは損でしかないわけで、だけど言いたくはないけど言わなきゃいけないから言うわけですよ。
上司にしても、職場の秩序を保つ為には後輩から文句を言われて、それに対してしぶしぶ妥協してから折れる流れに持っていくのは上司としての威厳を保つ意味での一種のパフォーマンスじゃないですか。
バカはそれすら分かってないのよ。
そんな感じだから、普段から真面目にしてるのも個人的なフェイクなんですよ。
鬼の居ぬ間にでも真面目を貫く人の方が実は尖ってるわけよ。
昔、アルバイトをしていた時期があるんですけどね。
詳しくは書けないけど、渋谷から原宿を1日中ずっとウロウロするバイトがあってね。
真夏の炎天下ですよ。
汗だくになるわけ。
ビニールの小さいパウチに食塩を入れたやつを配られてさ、その頃はまだ熱中症とか騒がれてないからタブレットとかなくて、塩を舐めながらやってくれと。
そのバイトも立ち上げたばかりで、そういうのもルールが決まってなくてね。
現地集合の現地解散で電話連絡をするだけでさ。
こんなもん暑くてやってらんねえなと。
塩を舐めながらやる仕事なんか聞いたことねえよと。
殺す気かと。
で、ペアのおじさんがいたわけですよ。
エリアは違うけど同じ渋谷担当でね。
最初のうちは宮下公園のベンチに座ってずっと喋ってたわけですね。
サボってたわけよ。
で、たまにウロウロしたりするわけ(笑)
どんなバイトだよ(笑)
そのうちにウロウロするタイミングとか、統計がパーセンテージが分かってきたから宮下公園でずっと喋ってるわけ。
それでも暑いなと。
最終的には図書館で涼むことになったんですよ。
それが突然にルールが変更になって、会社集合からの電車で移動して、また会社に集まることになったのよ。
なんでかって言うと、一番真面目そうなやつがとんでもないサボり方をして、それが会社にバレたんですよ。
眼鏡掛けておとなしそうで真面目なやつが、現地にも行かずに電話だけして自宅かどっかでサボってたのがバレたんですね。
会社も塩を舐めながらウロウロしてくれと言ってるから心配になって現地まで飲み物を持って来たわけですよ。
それで眼鏡のやつに飲み物を渡そうと電話して場所を確認したら、しどろもどろもいいとこで、現場にすら来てないことが発覚したわけですね。
僕とおじさんは電話が掛かってきたら、図書館から宮下公園までの時間やルートも計算した上で、なおかつ図書館の外で電話に出ますよ。
それは炎天下の外で塩を舐めながらウロウロしてくれというムチャな命令に対する反逆心ですよね。
最悪バレても図書館で涼みたくなる気持ちはわかるでしょ。
バイトというルールの中でのルール違反みたいなもんですよ。
それなのに、真面目そうなふりした眼鏡のやつは現地にすら行ってないという、個人的なパンク精神だけで全員に迷惑を掛ける結果を招くわけですよ。
真面目にサボることすらできないってのはそれはそれで問題なんですよ。
真面目を貫いて塩を投げ付けてブチキレるのも正しいですし、サボるのも抑圧に対する反動ですからね。
こういう裏ルールをわからない人の鬼の居ぬ間にやる行為は、本当の鬼が目覚める瞬間でもあるから怖いですよ。
真面目な人間のふりをした鬼が一番やっかいだという、お話でした。
めでたし
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