友達の誕生日 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

誕生日の翌日がエイプリルフールなのだが、今は仕事が忙しい時期なので嘘ではなく休日出勤をしたのである。



正社員とはいえ僕は日給月給なので休日という感覚も世間の人たちとは異なる。



正社員というのも社会的な信用があるだけで、社会保険も会社が負担をしてくれているわけじゃなく、それは自分が稼いだ金を会社に渡しているので厚生年金も全額を自分が払っているのと同じなのだ。



ポイントカードで貰えるポイントとは自分が支払ったお金であるのと同じように、巧妙に騙されているだけで仕組みとしては煩わしい制度である。



ちなみに僕は建設業の仕事をしているので特に地下で作業をしている時には携帯の電波は届かない。



建物が完成していないので携帯のアンテナとかの設備がまだ何もない訳です。



この大都会東京の中でさえも携帯の電波が圏外になるような、現代人からしたら非日常の地下空間で、僕らはひっそりと仕事をしている。



作業が終り、地上階に戻ると着信履歴を知らせるメールが届いた。



友達からの着信である。



これを1から説明するのはしんどい(笑)



まず僕はガラケーなのでガラケー世代ならば当時の感覚を思い出して貰いたい。



ラインのなかった時代の世界観なのである。



スマホ世代の人に説明するなら、これは想像力だけでは難しいと思うけど、その昔、相手を信じる時代があったのだ。



送ったメールを相手が読んだのか、ちゃんと相手に伝わったのかも分からないのである。



テクノロジーとは便利と引き換えに、それが当たり前になると壊れただけでストレスを増幅させる。



現代人はコンセントがないだけで不安になる。



東日本の震災の時には東京の公衆電話は長蛇の列だった。



ネットで購入すれば欲しい物が翌日には自宅に届くのである。



家電製品にしても充実している。



全自動が当たり前で家事のストレスも昔に比べたら楽になっているのだ。



現代人はテクノロジーで時間を手に入れた。



だけど、それが当たり前の世界に生まれてくる世代にしたら楽になった上げ幅は幸せに感じない。



便利に合わせることで脳みそも必要のないそこの回路は発達しなくなる。



僕らは電波の届かない地下空間でゴロツキみたいな先輩と作業場所で待ち合わせをするのだ。



約束の時間に。



約束の場所で。



まだ来ないけど、この場所からは動けない。



この場所に来るルートが2つある場合には、探しに行ってもすれ違ったらもう2度と出会えないのである。



どうするか?



答えはポケットの中にあるのではない。



大声で叫ぶのだ。



君の名を。



そう、僕らにとって大切なのは、



君の名は。






友達からの着信、昨日は俺の誕生日。



そして今日はエイプリルフール。



嘘をついても許される日。



俺の誕生日のお祝いで友達は電話をくれたのだと思う。



友達は数字を記憶するのが得意だと言っていた。



電波が届かないから友達の声を聴くことは出来なかったけど。



友達の現在の環境は俺と出会った頃よりは良くなっているとは思う。



俺の環境も特殊なので相手の話は何時間でもちゃんと聞く、それに自分のことも話せるのでお互い様でそれがいい。



友達の育った環境や出会った時の環境も俺からすれば不幸だったけど、友達から見えた俺も同じように不幸だったのだろう。



それでも男と女の違いは圧倒的だよね。



相手のことを理解する為にはキツいことを言ってしまうのだけど、友達のそれを受け入れられない自分がいるから言ってしまうわけで、そもそもそこまで達観した人間ならこんな苦労はしてないわな。



それで友達とはよく喧嘩になったけど(笑)



俺は過去に女友達ってのがいたわけじゃないし、彼女も一人と長く付き合ってきて強烈に束縛をされてきたから他の女の子の考え方とか感性とか本音ってもんがよくわからない。



正直、友達からも“つつもたせ”的なハニートラップ的な詐欺に合っていてもおかしくはなかったのだ。



友達は人妻で、旦那はヤ満月ザなのだから。



もしかすると超ロングスパンの長編の詐欺なのかもしれないけど(笑)



あくまで俺の中での感覚として友達が言うよりも先に気が付いたから、そっちの重い話も嘘をつく必要がなくなったのかはわかんないけど。



最初に友達は結婚してることを隠してたからね。



そんなんも全部環境のせいにしちゃえばいいんだけどね。



全ての責任は男に背負わせて、女は環境のせいにしてればいいのよ。



これを逆手に取る男に女は騙されて不幸になるわけだ。



環境で考え方とか心も変化するからね。



結婚してるのに旦那が働かないで嫁が夜の仕事をする環境っておかしいからね。



友達から実は結婚してるって聞いた時に俺が友達に返した言葉は、旦那はカタギじゃないだろ?ってことでね。



会話のターンとしては早いけど、結婚してる事実よりもそっちが問題なのは明らかでさ。



友達は慌てて否定してたけど、それは見事に的中していたわけで、友達の親友が言うように、親友でもどうすることも出来ないそれが友達の選んだ人生なんだけどさ。



なんて言うかさ、聞く耳を持たないなら知らないよって言うのは簡単で、実際には言う口をこっちが持ってないわけでもあるじゃんか。



だけど、わかんないけどね、答えなんかわかんないけど、それを俺が悩んでるだけで、難しく考え過ぎなんだよって俺に言ったあとに友達は泣いてたからさ。



そんで急にトイレ貸してって言って暫く出て来なくなってさ。



よくこのタイミングでうんこ出せるなって不思議に思ったけど(笑)



誕生日に関しても色々とあった。



友達は思春期の頃に母親から言われた「あんたなんか産まなきゃよかった」の言葉が大人になった今でも抜けずにずっと胸に刺さったままだった。



そんな友達から俺は誕生日のお祝いをされたことがあった。



それに対して俺からも友達の誕生日にはお祝いをしたのだった。



元カレや旦那と比較しても決して負けることのない、抜けることのない、誕生日の笑える思い出としての誕生日プレゼントを俺は友達に贈ることにしたのだった。



つづく