ハッピーエンドの作り方3 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

そんでまぁ、両親の車に乗って地元にある写真館に向かったわけです。



兄貴夫婦と甥っ子とは写真館で待ち合わせすることに。



ここの写真館で僕も兄貴も記憶にない赤ん坊の頃から七五三や成人した時など人生の節目には家族で写真を撮影してきたのだ。



写真館に入るとカメラマンのご主人とアシスタントの女性2人が出迎えてくれた。



カメラマンはご夫婦なのか、もしくは家族なのか、3人共40代半ばくらいの感じ。



カメラマンのご主人も写真館の何代目になるのかわからないけど、田舎ではあまり遭遇しないクリエイティブな風貌とカメラマンっぽい振る舞いをしていた(当たり前か)



僕は写真館の雰囲気が好きになった。



インテリアとか家具とか空間そのものが田舎の日常とは違う世界に来た感じになる。



見本として飾られている写真にはこの街のどこかに住んでいる人達がみんな笑顔で写っていた。



産まれたばかりの赤ちゃんや七五三、成人式の着物姿や就職先のパイロットの制服を着た人、結婚した人、家族が増えた人、この写真館にはこの街の笑顔が集まっているのだ。



放射線量を測るガイガーカウンターみたいに、幸せを測るハッピーカウンターなるものがあるとしたら、この空間にはどれだけのハッピーが溢れているのだろうか。



この日は本当なら写真館は定休日だったけど特別に店を開けてくれたと兄貴から聞いた。



写真館のカメラマンは街の幸せ請負人でもあるんだなと思った。



僕も何とか頑張って生きてきたら、またこの撮影スタジオに戻ってこれた感じ。



写真館は幸せのパワースポットだと思った。



家族という物語、人生という物語の挿し絵として写真がある。



さあ、家族全員でアメリカンファミリーのような構図で写真を撮ろう!!



家族みんなでボケようじゃないかと(笑)



両親は兄嫁がネットで購入した紫色の古希のちゃんちゃんこセットを着た。



紫色のダウンベストみたいなちゃんちゃんこと、頭に被る紫色のとにかく大きな福の神の頭にあるやつみたいな帽子を被った。



兄嫁が「これ着てたら何の時の写真かすぐにわかるから」とアホな声で囁く。



なかなか悪ノリが上手な嫁さんのようだ。



ちゃんちゃんこセットを着た両親とカメラマンさん達に案内されるまま部屋の奥にある撮影スタジオに向かう。



両親はソファーに座るようにとカメラマンさんから指示される。



僕は“弟さん”と呼ばれ、「そうだなぁ、弟さんは背が高いから後ろの端に立ってもらって、ソファーの背もたれに手を置く感じで体の向きをこう…」



お笑いコンビCOWCOWのポーズをイメージして頂ければわかると思います。



カメラマンさんやアシスタントさんから言われるがまま被写体としてそのリクエストに答えます。



カメラマンさんがファインダーを覗くもイメージする構図のバランスが違うようで、う~ん、と悩むとすかさずアシスタントの女性が椅子を運んできた。



その椅子をソファーの横に配置すると「弟さんはこっち来て」と指示された。



椅子に座り足を組むように言われ「お母様の肩に手を回して、体の向きはもう少しこっち、それで顔をこちらに向けて…そう!」と。



普段は汚れた作業着姿なのだが、スーツ姿の僕はもはや僕ではない見た目だけの誰かを演じるしかないのである。



写真をジャッジして楽しむのは僕ではなく他人なので僕の意思よりもベテランのカメラマンさん達に任せる方が仕上がりはきっと面白いだろう。



あとは甥っ子のカメラ目線待ちになった。



カメラの前にピカチュウをぶら下げて甥っ子を釣る作戦らしい。



そこは男の子ならアンパンマンが良いと思う。



家族写真の撮影が終わり、紫のちゃんちゃんこセットを脱いだ両親二人だけでの撮影。



それから甥っ子1人だけでの撮影になったが、兄嫁から繋いだ手を離したままの右手を上げた形で固まってしまった。



アシスタントの女性が大きな羽で顔をフサフサしても甥っ子はキョトンのまま。



カメラマンさんが「ママがやって」と言うもののアシスタントさんがまだ甥っ子の顔にフサフサしているとママである兄嫁が強引に羽を奪った(笑)



ちょっと怖いなと思った(笑)



でも、ママが羽でフサフサした瞬間に甥っ子はとびっきりの愛くるしい笑顔でニコニコしていた。



やっぱり笑いってのは信頼関係が大事なんでしょうね。



甥っ子は2才にしては堂々としてると誉められていた。



これから先も他人からの評価やジャッジをされることになる。



叔父さんのように写真と現実とがかなりかけ離れたややこしい仕上がりにならないことを祈る。



こうしたハッピーな思い出やハッピーな瞬間とは、いつか必ずハッピーな場面として役立つことになる。



いつかこの家族写真を一緒に笑顔で眺めてくれる素敵な女性と巡りあってくれたら、背の高い叔父さんとしてはハッピーエンドである。



つづく