俺の中での考えがまとまったので友達に連絡をして一連の忠告をしようとした。
とはいえ、ここからは細心の注意をはらわなくてはいけない。
友達との電話は盗聴されてるかもしれない。
メールの内容も筒抜けになっているかもしれない。
もしくはメールの相手は既に友達ではない可能性もある。
どうにかして友達と直接会って話をする必要があった。
問題は友達が天然だということだ。
旦那やその仲間たちと一緒にいる時の友達は、俺と一緒にいる時の姿とは別人のはずだ。
旦那に対しては常に敬語で気配りなどの集中力や旦那を喜ばせるテクニックも段違いになっているはずだ。
そこからの落差からくる天然もあるのだろう。
とりあえず普段と変わらないメールを送って様子を見ることにした。
いつもと変わらない感じだったので、友達に直接会って話したいことがあると伝えた。
そんなことを急に言われれば俺に何か問題でもあったと思うだろうと。
しかし友達からは、今日は仕事が忙しいので帰りが遅くなると返事がきたのだ。
普段から思ったことを口に出しているので、わざわざ直接会って話すことの意味がうまく伝わっていなかった。
このまま友達が電話をしてくる流れになってもまずい。
俺と友達にしかわからない言葉で、なおかつ友達の身に迫る危険を伝える手段を模索した。
頭をフル回転させた。
俺と友達だけがわかること。
友達に事の重大性を伝えるには。
それを可能にするものが1つだけあった。
友達の親友であるTちゃんの存在だった。
俺はTちゃんと連絡先を交換している。
その理由は、友達がもしも死んだ時に俺だけ連絡が来ないのは嫌だから、その時はTちゃんから俺に連絡がくることになっていた。
友達には世話になったのだから死んだら線香くらいあげたいし、手も合わせたい。
そこまで考えるのはバカなんじゃないかと笑われたかもしれないが、俺は真面目にそうあるべきだと思っている。
Tちゃんから俺に連絡が来るようなことになるかもしれないから、と友達に伝えた。
これなら旦那や他の連中には俺の言葉の本当の意味は理解できない。
友達もこの意味をすぐに理解したようだった。
だけどやっぱり友達は天然だった。
大丈夫よ、わたしは死なないから
と、俺からの謎のメッセージを解読したことをそのまま返事として送ってきたのだ。
これはまずいと思った。
俺に対する警戒心はまるでない。
その警戒心のなさで相手組織の女の子とメールのやり取りをしてはいけない。
このままだと友達が危険だ。
友達のスマホがクローン化なり、操作内容を別の端末と同期させていたらこのやり取りすら見られている。
俺が危険を察したことが旦那にバレたとすれば、今度は友達が危ない。
友達はこのまま天然で放置するとして、その先で監視をしている旦那の動きを封じなくてはいけない。
友達にメールを送った。
『(旦那の本名)顔は覚えた。』
友達も俺が旦那のフルネームを漢字まで知ってるとは思わないだろう。
『俺を殺しても記録は全て残してある』
記録の全てがどこまでかはハッタリもあるが、これで旦那や組織の動きは止まる。
もちろんそこには友達の身の安全も含まれる。
友達は俺の頭がおかしくなったと心配していたが、狂った世界から脱け出すには狂ってなきゃいけないのだ。