電気毛布ってやつあるじゃないですか。
上に掛けても下に敷いてもいいタイプのやつね。
僕は下に敷く派なんですよ。
上に掛けて寝ると、起きた時にどっか行っちゃってるじゃないですか。
温もりを大事にしたい派なんですよ。
でもね、これ敷いて寝るといくらでも眠っていられるんですよ。
ずっと眠ってられるんですね。
冬眠できるなと。
なんだろ、炊飯器の中で保温されてるお米の気持ちになる。
…で、ようするにお前は何が言いたいの?と思うでしょ。
これね、コタツでも同じようなことになると思うんですけど。
こういうことに対して言うじゃないですか。
『ダメ人間製造器だよね』
みたいなやつね。
(いつまでそれ言ってんだよ!)って思うんですよ。
言葉や表現としての旬があるだろと。
それはもう消費期限も賞味期限も切れてるだろと。
もうさ、冬場の定番ワードみたいになっちゃうじゃん。
それが“あるある”になっちゃってんのよ。
もっと新しいやつ仕入れてこいよと。
職場とかでもさ、よく喋る面白い連中って、相手の言った言葉や表現に対して“表現を重ねる”って作業を会話の作法としてやるじゃないですか。
言葉で遊ぶじゃないですか。
そこで今日の頭の調子を確かめ合うみたいなさ。
コタツ出したとか、電気毛布を使ってるっていう会話になった時に、最初から「ダメ人間製造器」を使うのはないよね。
さすがにもうみんなそこまで笑わないけど、でも確実に開始のホイッスルが鳴るじゃないですか。
今日こいつ調子悪いからしまっていこうぜ!!みたいな流れになるじゃないですか。
どう見てもエラーなんだけど、ドンマイって感じで僕らは試合を再開することになるわけですよ。
そうなると職場で完全にイジられキャラの、酔っぱらって食い逃げした話とか平気でするさんって先輩の名前を使って
「あ~、“製造器”ですね」(冷静な口調で)
さんがダメ人間ってことは職場のみんな理解してるし、全員が被害者だから共感するんですよ。
これね、わりとファインプレーでさっきのエラーをフォローしてるんだけど、たぶん誤解もされてんだよね。
顔がかわいい子の言うことが正解ではなくて、面白いことが正解の世の中であって欲しいと僕は思うのよ。
服のセンスとかよりもそっちが気になるのよ。
つい最近なんですけど、駅前の喫煙所でね、女の子の二人組がやってきて、その片方の子が言ってたのよ。
「あの子ってさ、『頭の中お花畑』だよね」と。
……いや、そのフレーズまだ使ってんの?と。
その場に居ない子の陰口なんでしょうけどね。
僕が聞いてて思ったのは、その言葉をチェイスするお前の頭も大丈夫か?と。
最初に『頭の中お花畑』って表現を聞いたときは「上手いこと言うなぁ」って笑いましたよ。
それを聞いたのはだいぶ昔ですからね。
兄貴の嫁さんが言ってましたからね。
兄貴の嫁さんは僕より4つ下なんですけど、喋り方に特徴があって、アニメから飛び出してきたような感じの喋り方をする人で、本人が言うには、うちの3姉妹は全員がオタクですよと。
オタクの人って言葉のチョイスに敏感だから、新しい言葉を仕入れるのが早いから新鮮だから面白かったんですよ。
もちろん僕の職場にも男のオタクとか居ましたけど、オタクの人の悪いところって、1回自分がはまった言葉を何回も擦るじゃないですか。
ピッカピカになるまで擦り続けるじゃないですか。
あのぅいつまで擦るの?と。
もう顔が写っちゃってるよと。
もうその言葉は、だいぶ布教されてますからと。
この都には広く知れ渡っておりますと。
安心して天竺へお戻りになられても都は大丈夫ですと。
でもそういう新しい表現ってみんな好きなんですよ。
流行語とかもそうじゃないですか。
そうなる前くらいのやつが一番いいですよね。
話してるのを聞いてて「ん?」って引っ掛かるんですね。
居酒屋の隣のテーブルにいる人の会話でも耳がピクッて反応するんですよ。
…むむ、面白いやつがいるな。
それとは逆に「頭の中お花畑」って表現は旬が過ぎてると思うのよ。
そのお花畑はもう枯れてますよってね。
「あの子って『頭の中お花畑』だよね」という、その言葉をチョイスするセンスってのは本来の『頭の中お花畑』とは別のお花畑だよね?と。
本来はただの悪口よりも笑いが勝つ表現であって、そこには優しさがあるわけでね。
だけど旬が過ぎるとマニュアル化された言葉だと感じるのよ。
つまり、「あの子の悪口言おうぜ」ってのが逆に際立つわけですよ。
でも、片足はお花畑に入ってますよって保険をかけてるのよ。
それって気持ちいいくらいの悪口を聞くよりも後味が悪いのよ。
片足でお花を踏んづけてますからね。
頭の中でお花畑をちゃんとイメージできてるかどうかなんですよ。
紋白蝶がヒラヒラと飛んでるイメージですよ。
ちゃんとお花畑をイメージできてないやつが、他人の頭の中お花畑とか言うなよと。
こうなると、逆風が吹いてくることもあるじゃないですか。
そこまで言うんだったら、じゃあお前が代わりに新しいやつ出してみろよってなりますよね。
『頭の中お花畑』に替わる新しいやつ言ってみろよと。
そんなね、急に言われても困るじゃないですか。
でもあんまり考えてると「お前の頭の中は花すら生えてねえな」みたいなことを、もっと面白くない感じで言ってくると思うんですよ。
だから出来るだけ早く新しいやつを言いますよ。
たとえば『頭の中みかん畑』とかね。
えぇ、たいして面白くないし、外し方も悪いですよ。
でもね、みかん畑に関しては愛媛の人は味方になってくれると思うのよ。
その場に愛媛出身の人がいる確率は極めて低いと思うけど、頑張れば四国くらいまで領土を広げてもバレないと思うの。
あなたは四国を敵に回せるんですか?と。
相手がバカじゃない場合は話がそれてることを指摘されますよね。
それなら次のやつを言ってやればいいんですよ。
『頭の中SMAPの代表曲』
これ、ちょっとさ、正解じゃね?
もう少し遊ぶつもりだったけど正解が出ちゃったよね。
これなら誰も傷付かないよね。
“世界にひとつだけの花”ってことですよ。
お花畑よりも肯定力をより強化させてるからね。
そもそも、その相手の話をする上で、その人の性格やイメージというのはみんなの中で共通してますから、
「あの子って頭の中…」の時点で次に『お花畑』が来るなってわかるじゃないですか。
そこで、スマップの代表曲と言うことで…
あれ?ちょっと待てよ、もしかして、スマップの違う曲が思い浮かんだらダメなんか?
シェイクとかまずいか。
『頭の中シェイク』はちょっと言い過ぎだよね。
『頭の中ダイナマイト』とかも良くないね。
なかなか『頭の中お花畑』の牙城は崩せませんね。
似たようなやつだったらいいのかと言ったら違うからね。
『頭の中遊園地』
とか
『頭の中お遊戯会』
とかね。
その子がお花畑の中でルンルン♪してる姿を空撮してるイメージですもんね。
絶対に悪い子ではないからね。
そういうことなんですよ。
キャラ作りしてる訳じゃないのよ。
うちの兄貴は嫁さんをカウンセリングに連れて行きましたけどね(笑)
夫婦で真面目な話をしてても喋り方がフニャフニャしてるから不安になったんでしょうけどね。
たぶん子育てが心配になったんだと思うのよ。
うちの両親に対しても「パパしゃん、ママしゃん」って呼びますからね。
兄貴としては医学的な角度からの嫁さんイジりを先に潰しておきたかったのもあるとは思うけど。
結婚して嫁さんの子育てを見てからヤバさに気付くパターンがわりとあるからね。
カウンセリングの結果とかは知らないけどね。
でも『頭の中お花畑』って言える客観性だったり、そのワードを大衆化する前に選ぶセンスはあるわけだからね。
だから逆に良かったと思うのよ。
喋り方は変だけど周りに流されてないわけだからね。
そういうブレない強さは子育てに必要だと思うからさ。
男の子だしな。
兄貴のような普通の社会人としての目線と、僕みたいな職人の世界での目線で甥っ子のことを見守ることで、どちらの世界に転んでも受け入れられる大人の男になってくれればいいなと。
電気毛布の温もりもダメ人間製造器ってことにもなるからね。
ほどよい温もりが大切なんですよ。
また野良猫でも拾ってこようかな。
猫肌恋しい季節ですね。
猫鍋の季節ですよ。
猫鍋ってのは空の鍋の中に猫が丸くなって入るんです。
『頭の中』って考えるだけでも楽しい休日のひとときでしたけどね。
パチンコ屋で彼女をずっとソファーに座らせて待たせとく彼氏よりはいいと思うんですけどね。
お花畑を耕す男よりも、そのお花畑でデートする男の方が魅力的なのはわかりますけどね。
お花畑のデートも正直なところ楽しくはないけど、写真撮ってインスタに上げたら絵にはなるなって感じなんでしょ。
温めすぎるとこうやって中身が腐っていくんでしょうね(笑)