濡れる話 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

婆ちゃんの葬儀の時に、ふと疑問に思ったことがいくつかある。



俺が死んでも香典は集まらないだろうな…。



それと、市長や自民党の国会議員から弔電が来てたけど、あれってどういう仕組みで届くの?



爺ちゃんの葬儀の時にも市長から弔電があったような記憶はあるから別に不思議には思わなかったけど、仮に俺が死んでも納税者として故人にはもれなく届くのかね?



それと、お通夜の時には市長が喪服じゃなくて普通の背広のまま焼香しに来たのよ。



いまだにその意味がわからない。



爺ちゃんが亡くなった時には遺言通りに百万円を市に寄付したみたいだけどね。



爺ちゃんが小さい頃は傘が無くて濡れて苦労したから、市に無料の傘を寄付したいみたいなことが遺言だったらしいけど。



そしたら今の時代は傘は足りてると、それで百万円を現金で寄付したみたい。



それで親父が市から感謝状を貰ったらしいけど。



それでも婆ちゃんのお通夜に市長が背広のまま駆け付けるのはよくわからない。



親しいのか知り合いなのか俺はよくわからない。



兄貴は長男だけあって親戚にも名前や顔を覚えられてるけど、俺は基本的に下の子という扱いだから知らないことが多かった。



爺ちゃんが10人兄弟の長男で、婆ちゃんが9人兄弟の長女だから親戚の数も多くて意味がわからない。



それだけ兄弟がいれば確率的にも出てくるんだろうけど、明らかにヤクザだよね?という親戚がちらほらいた。



グラサンかけてネクタイに家紋が入っている年寄りとか、スキンヘッドに黒いテンガロンハットみたいな帽子を被ってヒゲを生やした人とか…




小さい頃は親戚のおじさんってのはそんな感じだと思ってたけど、冷静に自分が大人になって社会人として見るとおかしいのだ。



それで兄貴に「あれさ…どう見てもヤクザじゃん(笑)」と言うと、兄貴から「そうだよ。知らなかったん?」と衝撃の事実を知らされた。



実家の地域を縄張りにしているヤクザが同じ学区内にあることは小さい頃から知っていた。



出来る限り関わらないように普通の庶民と同様に距離をおいて過ごしていた。



それがなんと、その組の親分とうちの親戚が同級生でマブダチだったとは…。



そんなことは知らなかった。



知っていたら高校時代に不良たちにビビらずに楽しく過ごせていたじゃないか。



親父と兄貴が言うにはうちの家系にはそういう気性の荒い血も入ってるから気をつけないとダメなんだと。



これで納得がいったこともある。



そっちの血が強く出たんだと。



普通に考えて祖父母の葬儀に市長が来るような家系で、その孫が高卒なのはおかしいだろ。



正直、孫として恥ずかしかった…。



従兄弟は肩書きでいえば院長と店長だ。



兄貴は真面目に安定している。



俺だけバカで貧乏じゃないか。



普通ならバカは金持ちになるはずだ。



悪いことをすればそうなる。



変に真面目な血があるから金儲けができないのだ。



割り切って若いの集めてピンハネすりゃいい話だけど、そこまでして手に入れたい具体的なものがない。



ずっと真面目に考えていたけど、近頃は大企業もデータを改ざんしてたりと表社会の金持ちこそ悪いことをしていることがわかってきた。



さすがに汗水垂らして休みも少ないのに低賃金が逆にみっともなく思えてきた。



金がなきゃ助けることも出来ないこともある。



誰かに頼ったりお願いすることを避けて生きてきたけれど、そうしたほうが物事が急速に解決したり後悔しなくて済むことを体験したのもある。



友達や特に女から背中を押されると男という生き物は走れるのだ。



俺の中では禁じ手である彼女に頼るという方法を解こうかとも思えてきた。



彼女からは、「この状況でも私を利用しようとしないところがいいね」と上から目線で称えられることにも腹が立ってきた。



どんな仕事があるのかを聞いてみた。



動画の編集というのがあると。



とはいえパソコンもなけりゃスマホもない。



すると、パソコンなんかは言えば貰えると。



編集ソフトは会社にあると。



暇な時に趣味感覚で少しずつ覚えていけばいいと。



でも、それだと誰にでも出来る仕事じゃないのか?と。




そう、編集作業は誰にでも出来ることだと。



ただ、面白いかどうかはセンスなんだと。



お笑いのセンスはあると思うからいいんじゃないの?と。



彼女が俺を誉めるのは10年に1度あるかないかだ。



彼女は笑いにはうるさい。



お前より私の方が面白いとさえ言われる。




で、肝心の儲けはいくらになるのかと。



まず会社を作って、それで月に大体80万くらいにはなると。



他の会社にも仕事はあるから信頼されればもっと稼げると。



なるほど。



結局は金儲けのカラクリってのはこういうことなんだなと。



彼女の会社から直接の仕事だから単価が高いのだ。



元請けから直に仕事を貰えるかどうかで決まるのだ。



そういう稼ぎ方をしてる人も上司にはいるらしい。



嫁のデザイナー会社に旦那が仕事を発注したりしてるそうだ。



映像にしろデザインにしろ、そういう2流なんだか1流なんだか素人にはわからない癒着した稼ぎ方がどんな職業にもあるんだろうね。



確かにガテン系の仕事でも超1流の仕事は同業者でも1流の職人にしか評価や理解はされない。



むしろ2流や3流が稼ぎ方で年収だと1流の職人を超えることはざらにある。



バカバカしいけど、これが現実の社会なんだろう。



極端な話をすれば、俺が会社を作って編集の仕事を下請けに40万で発注してもいいのだ。



俺はそれをチェックして彼女に渡して、彼女からのダメ出しをまた下に流すと。



その上から下への作業だけで40万稼げることになる。



仕事の依頼を増やして使う人を増やせば収入も増えると。



実にバカバカしい。



それで何が社長だよ。



搾取する為の仕組みを考えることが資本主義なんですか。



まぁ素材に対して編集というクリエイティブな作業はするけどね。



命を危険にさらして建物を造る職人よりもたいして何もしないやつの方が収入がいいのはどう考えてもおかしい。



だからみんな受験勉強するのか!?



今の今まで気が付かなかった…。



漠然と終身雇用の考えで社会に出て、イカれた彼女から女のいない職場へと雪崩式ドロップアウトをしてこの様だ。



公務員か元請けの会社に就職することが人生の秘訣というか社会の仕組みそのものなんだ。



そんなこと誰も教えちゃくれない。



従兄弟の院長の子供は小中高とエスカレーター式 の学校に通っている。



それが金持ちのやり方か!!



同級生みんな金持ちじゃん。



俺もおかしいとは思ってた。



今のまま働いてても一生給料は上がらないと。



それなのに休日も日曜日しかないし有給もボーナスも何もない。



職人の世界しか知らない人達はそれが当たり前だと思ってる。



だけど同じ給料なら土日祝日休みの仕事に転職した方が楽なのだ。



この世界は生きたいように生きて、もっとやりたいことをやってもいいと思えてきた。



自分の個性や感性というもの誰かに伝えることが命なんだと。



人は何かを誰かに伝える為に生まれてきたんだと。



全てを肯定するってそういうことなんじゃないかと。



たった1人の友達が出来るだけでも人生は変わる。



何も悪くない。



誰も悪くない。



伝える為に生きている。



感じたことを素直に伝えればいいんだと。



いまいちよくわかんないけど。



インプットよりアウトプットなんだと。



女が100人いたら、そこには100通りのイカせ方がある。



それが相手を理解することだと思う。