DJ男とその家族 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

偉いさんを呼び出してキレてしまったことが原因なのか、現場を移動することになった。



そもそも図面が間違ってることを知りながら、とぼけて逆ギレして手直しの小銭を拾おうなんて三流職人みたいな真似はしたくない。



独身貴族としては家族を守る為に犠牲にして拾う金よりも大事なものを守るのである。



残業なんてもんはバカがやるもんだ。



遅くまで働くやつはバカなのだ。



上司がバカか
会社がバカか
自分がバカのどれかだ。



部下がバカ?



いや、それはお前がバカなんだよ。



そんな訳で新しい現場に移動して、久し振りの面子と合流した。



前に南米系のハーフで元DJのやつがいたが、別の現場に移動してから仕事が嫌になって辞めたか、クビになったみたいで居なくなっていた。



年下なので可愛がっていただけに、何やってんだかなぁと心配にはなった。



で、現場にはそいつのリアルブラザー、つまり元DJの兄貴がいたので、弟は元気にしてるのか聞いてみた。



どうやらまたDJをやって生活をしているという。



兄貴としては、弟には1歳と2歳の子供がいて嫁のお腹にも子供がいるのに夜の仕事は生活の時間が違うから辞めさせたいと。



弟に言ってもあいつは頭がおかしいからダメだと。



ユー(俺)が弟を怒ってくれと。



いや、なんでだよ!と。



DJというビジネスがよくわからんので、兄貴に弟は毎日DJをやってるのか?と聞いた。



兄貴が言うには、クラブだかディスコを何軒か経営してる社長がいて、そこの店舗をあっちこっちと行っては回してるそうだ。



とはいえ、クラブもディスコも行ったことないので、いまいちピンとこなかった。



すると兄貴はスマホの画面を見せてきた。



イベントのチラシみたいな画像だった。



そこには全部お洒落な形に変形した英語の文字で書いてあるから何1つ解読はできなかった。



まぁ普通に書いた英語でも読めませんけどね。



なんというか、ハロウィンって感じの悪そうなカボチャとかがいっぱいあって、そこに魔女っぽいセクシーな外人の姉ちゃんがいて、その下には、そのイベントに来るDJの顔写真と名前が四人くらい写ってた。



いかにもDJって感じのやつらが並んでる中に、あいつがいた…。



小太りの坊主がグラサンをかけて横を向いてクールを装っているのだが、写真の色合いが戦時中みたいなダサい感じになっていた。



あいつ完全に、おもしろDJを狙って写ってやがった。



相変わらずバカやってんなぁ(笑)と思った。



うむ。



とりあえず、自己プロデュース能力には合格点をやろう。



こういうイベントのチラシの写真だろうと、ただカッコつけるやつは粋じゃない。



かと言って、歯痛ポーズとかは見た目のギャップで面白いけど、欲しがり過ぎてて粋じゃなくなる。



初めて見るにはいいけど、2回目以降は恥ずかしい。



俺は仕事よりもこういうことには、うるさい先輩だからな。



とりあえずチラシを見て少しだけ安心した。



…ん?



いかんいかん、あいつを夜の世界から辞めさせるように兄貴から頼まれてるんだった。



でも、どうなんだろな。



普通に働いてる同年代よりも遥かに稼いじゃってる訳だよ。



というか、俺よりも収入は多いからね。



外国人に世間体があるのか知らないけど、外国人ってのは家族を大事にするのよ。



お金はもちろん好きだけど、家族をバカみたいに大切にするのよね。



ホームパーティーとか好きなのよ。



あいつは俺にも母親の手料理を食べに来るように誘ってきたからね。



でもさ、日本人の感覚だと自分の母親の手料理を友達とかに食べさせたいとか思わないでしょ?



子供の頃の誕生日会くらいなもんでさ。



だから親とか兄弟の絆ってのが強いのよ。



それと、あいつは別にDJになるのが昔から夢だった訳でもないのよ。



音楽というか、あいつが言うには“音”が好きなんだと。



俺が脚立で高い所に登って作業してて、あいつは下でその脚立を支える役目だったのよ。



それなのに途中からは脚立の足をポンポコ叩いて遊んでるのよ。



お前ちゃんと抑えてろよ!!って怒鳴ったら、あいつは言うのよ。



「オレ、音が好きなんですよ」



いや、今は、そうじゃねえだろ。



上に登ってる俺には、死神のリズムにしか聞こえないけどね。



薬指にしたグッチの結婚指輪で音を刻んでたのよ。



嫁と喧嘩してDVで警察に10日くらい捕まってて、釈放された瞬間にその結婚指輪を投げ捨てたらしいのよ。



あいつは嫁とは別れるつもりだったからね。



で、それはやり過ぎだろって叱ったのよ。



仕事の手を止めて真面目にちょっと怒ったのよ。



そんでまた俺が脚立に登って作業してたらあいつが下で言うのよ。



「今は指輪を捨てたこと、後悔してます」とね。



まぁ反省してんのか…
と思ったら、



「指輪がないとぉ、叩いてもいい音が出ない」



そうじゃねえよ!!



叩くんじゃねえよ!!



ちゃんと持ってろよ!!



死んでも離すなよ!!



ようするに、彼は音が好きで、遊びでDJやったら出来ちゃったパターンなのよ。



ある意味、才能というかね。



MCも含めて器用なやつは何でも出来ちゃうパターンなのよ。



DJごっこで遊んでたら金が貰えて、気付いたら仕事になっちゃった訳ですよ。



それで月に50万くらいは稼げちゃうからね。



とはいえプロだから、ちゃんと集客力があるから成立してるビジネスだと思うのよ。



酔っ払い客を相手にしてる訳だから、ジャンルとしては宴会芸みたいなもんだろうけどね。



21歳で家族がいるからいつまでも遊んでる訳にはいかないと。



そこなんだよ。



あいつはDJの仕事を勉強したり努力したりとかじゃないのよ。



好きな音楽を聞いて、好きな曲をかけて、面白いこと喋って、それで客が盛り上がって、踊り狂って…。



それで金は稼げて、女にモテて、他に何が足りないって言うのかな?



それに比べて現場仕事は、朝は早いし、休みは少ないし、こき使われて、怒鳴られて、職場に女はいないし、金は安いと。



そりゃDJやってた方が絶対いいわな。



DJの仕事で足りないのは俺みたいな、優しくて面白くてハンサムな先輩がいないことくらいじゃないか?



(日本人がこういうことを自分から言うと外国人には鉄板でウケますよ)



生き方の問題だと思うのよ。



若いときに稼げるだけ稼ぐとかね。



たぶんクラブとかって客層は若い子達でしょ?



常に毎年、新しい若い客が来る訳だから、DJの感覚も若い時しか無理だと思うのよ。



若い客と若いDJが、そのクラブシーンというか時代を築くと思うのよ。



だから無理して続けても感覚は30代までだと思う。



あのアニメ界の巨匠、宮崎駿が才能の寿命は10年だと言った訳ですよ。



その10年をどう生きるかだと。



夢は呪いだと。



だとすると、あいつの才能の寿命はまだ残ってるのよ。



遊びでやってるから自覚してないポテンシャルが眠ってる訳ですよ。



1番、危ないのは、あいつが言ってた、深いところ、アンダーな世界だと目の前で客がドラッグをやってると。



自分も危険だし、自分の客をそこに引き寄せてしまう可能性もある。



とはいえ、夜の仕事を辞めさせる為の説得をしに、俺があいつの回してるクラブだかディスコに乗り込むのは勇気がいる。



外人ばっかりで治外法権みたいな完全アウェーに立ち向かうのは無理がある。



不良漫画でも外人の不良が登場するのは物語の終盤ですからね。



いきなりラスボスのいる城に挑むようなもんじゃないか?



黒人達に袋叩きにされて犯されるイメージだけはある。



あいつも兄貴も熊みたいにゴツイ。



あいつは全身にタトゥーと和彫りの刺青だらけで、洋と和を取り入れた二世帯住宅の間取りみたいな体をしている。



そんなやつらとは関わりたくない。



それと外人の女ってブスしかいないイメージがある。



そう男の原動力は女なのだ。



甲子園に行けるかどうかの差というのは、最終的には野球の技術ではなく対戦校との女子マネージャーの差だと言える。



踊る女はブスであり、ブスだからこそ踊るのである。



美人とは踊るのではなく舞うのだ。



日本人の女でもクラブに通うような女ってのは、外見は派手だけど脱がしたら肛門にティッシュが付いてるイメージしかない。




そういうクラブ的なノリが出来ない訳じゃない。



パーリーピーポー上等だよバカ野郎。



ただ、あいつらはすぐに動画を撮る習慣がある。



それを何回も飽きるまで見て笑う。



それが日本人の美意識とは違うとこなのよ。



フェイスブックとか、仕事とプライベートの境目がないのよ。



それは外国人には縦社会の感覚がないからだと思う。



日本人は仕事とプライベートでのペルソナがある。



日本人にはフェイスブックに仕事中の愚痴を書いたりは出来ない。



そこの感覚がまるで違うのだよ。



我慢して仕事するとかじゃなく、全てを楽しむ為に生きてるのよ。



緊張とかプレッシャーってのも捉え方が日本人とは違う。



ラテン系は特にそうかもしれないけどね。



まともな日本人にはクラブやディスコは敷居が高い。



それが日本人として、まともなのか、おかしいのかわからんけど。



金と時間と人生=仕事って感じだもんな。



いや、だからこそ息抜きの娯楽として踊るんじゃないか?と。



いやいや、単純に異性が目当てだろ(笑)



頭の悪そうな女がバカな男の遺伝子を残そうと思うだろうか?



若いからヤリたいだけなんだよ。



でも、クラブに通うような女は性病をコンプリートしてそうだからな。



男ってさ、変な所で潔癖症が出ちゃうからね。



女はペットが肛門舐めた舌と平気でチュウするからな。



母性ってのは、ホラーなんだよ。



女は受け入れる側だからそうなるんだろうけどね。



だから逆に女を見るときは、クンニが出来るかどうかなんですよ。



男の舌が踊る。



そのリズムに乗って女が舞うのだ。




そうだ、男とはDJなんだ。



喘ぎ声の連なりはメロディとなる。



足の指先から耳の螺旋へと音階を愛撫する。



女とは神が創った楽譜であり究極の旋律である。


実に美しい。



震えている。



震えいる女は美しい。



DV男とその女。



DJ男は嫁とその母親と一緒にディズニーランドに行っていた。



平日の昼間からミッキーの耳を頭に付けて笑っている。



TDL家族。



なんだか真面目に働くのがバカらしくなった。



やっぱり女は恐ろしい。