白線流しに憧れて | 天狗と河童の妖怪漫才

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笑える下ネタ満載……の筈です。

反抗期の思い出ブログネタ:反抗期の思い出 参加中





とにかく悶々としてましたね。



悪い友達とつるんでても仕方ないということが、少しは理解できる年頃でもあったからね。



僕の通ってた高校はおバカさんが集まる学校だったんですよ。



つまり不良の偏差値は高かったんですね。



とんでもない場所に来てしまったと、ちゃんと受験勉強をしなかったことに後悔しました。



ようするに僕らの中学は不良の偏差値も低かったんですよ。



他県からも集まってくるエリートの不良達に怯えてましたね。



下校の時なんか、割りと混んでる電車の中で吊革に掴まりながら煙草を吸ってますからね。



根性焼きが手の甲から肩まであるやつとかね。



入学したばっかりの下校の時に、同じ中学だった友達と電車に乗ってたんですよ。



座席に友達と並んで座ってたら目の前に同じ高校の制服着てるやつが来て、隣にいる友達を指差して言ったんですね。



「こいつが、満月満月です!!」



は?と思ってたら、その後ろから坊主でガタイいい先輩がやってきて言ったんですよ。



「お前か、満月満月ってやつは?」



友達が返事をした瞬間に、右フック左フックの連続攻撃ですからね。



混んでる車内で僕らは座ってますから、しかも奇襲攻撃ですから友達は鼻血が出てグッタリするまで終わらなかったんですよ。



僕はそれを止めることすら出来なかったのよ。



友達が隣で何回も殴られてるのに、それを止めることすら恐怖で震えててできないのよ。



自分が殴られるのが怖くて何も出来ない。



【いざって時に自分は何も出来ないやつ】それが青春の幕開けですからね。



その殴られた友達は中学の柔道部で部長をやってて重量級だったから、タイマンなら一方的なやられ方はしなかったと思うんですよ。



ようするに、その先輩というのは反撃が出来ない地理的な戦略のある偏差値の高い不良な訳ですよ。



不良のレベルが違うわと。



で、最寄り駅について殴られた友達は駅のベンチで横になってるのよ。



そこに不良の先輩達が続々と集まってくる訳ですよ。



僕はベンチの側にいるから逃げれない訳ですよ。



こんな筈じゃなかったと。



中学の時にドラマで観てた高校生の学園ドラマ“白線流し”は、こんなんじゃなかったと。



大学は“キャンパスノート”じゃないのか?と。



で、殴った先輩が言うのよ。



「さっきは悪かったな…」



それ鼻血が出るまで殴り続けた相手に言う台詞か?



球技とかのスポーツで、ミスした後に言う感じじゃないか?



こっちは「ドンマイ!!」って返せばいいのか?



話が違うじゃん。



高校って可愛い女子高生との出会いがあるんじゃないの?



友達すら守れない、ちっぽけな自分が主人公だというね。



ただね、一緒にいたもう一人の真面目な友達がいて、そいつの顔が不細工だったのよ。



ボクサーみたいに殴られてボコボコにされて出来上がったみたいな面構えなのよ。



生まれたままの顔なんだけどさ。



そのハッタリが利いて、その場を切り抜けるというミラクルが起きてね。



そいつは勘違いされて何人かいた先輩のうちの一人と仲良くなってたからね。



バカだけど真面目に勉強するやつだったのよ。



だけど、他校のやつにも勘違いされちゃって、ある朝に途中の駅で他校のやつらから引き摺り降ろされてボコボコにされるというね。



顔は変わらないままだったけどね(笑)



結局、その時に殴られた友達は地元を追われることになった。



閉鎖的な田舎では当然そうなる。



成人式の時に再会したが、すでに子供が二人いて元気そうだった。



別れ際に「もう一生、会うことねえな(笑)」と友達は笑っていた。



田舎の不良の世界は縄張りがある。



成人式の後に中学校の全体での同窓会があった。



その同窓会の二次会を幹事のドラマみたいな青春時代を過ごしたやつらが他校の縄張りにあるカラオケ店にしやがった。



案の定、他校の二次会と鉢合わせになった。



高級車に乗ってたチャラいやつは速攻で引き摺り降ろされて囲まれてた。



その時も僕は顔も名前も知ってる同級生を助けることは出来なかった。



僕の反抗期とは強者に立ち向かうものではなかった。



ビクビク怯えながら毎日を過ごしていた。



田舎の不良とは女を守れなきゃ恋愛も出来ないし、成人しても先輩の目を気にして好きな車にも乗れない。



その高校を無傷で卒業したことだけで武勇伝になった。



不良の日々変わる勢力図をコソコソと情報交換しながら生き延びた。



僕の高校生活は白線流しとは全く違った。



高校を卒業する時に、高校の近くにある汚い川に学校指定のジャージを友達と投げ捨てた。



学年ごとに色が違うジャージで、僕らの代は緑色だった。



白線流しではなく、緑線流しだ!!と叫んで川に投げ込んだ。



歪んだ反抗期だった。



後日、学校に呼び出された。



ジャージにちゃんと名前が書いてあった。



不良たちは卒業式で散々迷惑をかけた先生に花束を渡して青春時代をハッピーエンドで幕を閉じた。



僕らは卒業後に担任から呼び出されて叱られた。




学生時代にはちゃんと勉強をするか、ちゃんと反抗しないとロクな大人にはなれないのだと知った。