睨まれ列車 | 天狗と河童の妖怪漫才

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笑える下ネタ満載……の筈です。

イライラしたらどうする?ブログネタ:イライラしたらどうする? 参加中




最近、というか、2日続けて帰宅途中の電車内で、サラリーマン風のおっさんに絡まれましてね。



どうも、なめられてる感じなんですよ。




まぁ、僕は見た目が色白でメガネなんで真面目そうに見えるんでしょうね。



自分で言うのもなんですけど、顔立ちもジャニーズ系なので優しい雰囲気があるんでしょうね。



20代の前半の頃は女の子と間違われたりもしましたからね。



見知らぬオバサンから道を尋ねられて、教えてあけだらオバサンから「やだー、女の子かと思った!」



キャバクラで顔が似てる芸能人の話になった時に、キャバ嬢から某女性アイドルに似てると言われたりね。



そういうのが割りとコンプレックスだったんですよ。



だから、ワイルドさ、不潔さ、みたいなことを意識的にしていたことはあるんです。



最近は毎朝シャワーを浴びてヒゲを剃ってるのと、金がないんで体型的にも顔も痩せてきたので、なめられるには充分のルックスになったんでしょうね。



とはいえ、こちとらガテン系の職人でございますからね。



不良の巣窟で日々揉まれてる訳ですよ。



我々の業界は筋さえ通ってれば、お互い様という環境であり、それが他業種と喧嘩にならない為のルールなんですよ。



年功序列のサラリーマンとか、公務員の世界とは住む世界がちょいと違うんですよ。



そんな肉体労働で疲れた私は電車に乗りました。



座席は埋まっていたので、そのままの足取りで入口とは反対のドアのすぐ横にある手刷りに寄り掛かろうとした訳です。



すると、そこに私の後から乗ってきたサラリーマン風の中年男性が私と手刷りの隙間に割り込んできた訳ですよ。



勢いよくぶつかってきたので私は押し出される形で、イラっとはしたものの仕方なくドアに背中をつけて寄り掛かることにしたのです。



すると、その手刷りに寄り掛かった中年男性はすかさずバックからタブレットを取り出していじり始めた、その刹那!



中年男性は足をギュンと伸ばしたんです。



その中年男性の伸ばした足が私の足の甲にギュンと、ようするに私は足を踏まれた訳ですよ。



さすがにイライラしてきましたが、その中年男性が私の足を踏んだ瞬間に「すいません」と言ったので、悪気はないのだなと思ったのです。



これは日頃の仕事でもそうなんですけど、喧嘩にならない為にはそういう解釈で怒りや誤解を鎮めてますから何とも思わないんですよ。



ただね、そういえばこいつ、さっき無理矢理に割り込んでぶつかってきたよな?と。



そんで、今度は足を踏んだよな?と。



どんなやつ何だ?と、その中年男性に視線を向けたら、なんとこっちを睨んでいるじゃありませんか!?



ようするに、「お前、邪魔なんだよ」という意識表示なんでしょうね。



さっきの謝罪は瞬間的な言葉だけで、むしろ「そんなところに足を置いとくのが悪いんだ」みたいなとこでしょう。



出世すれば怒られなくなりますからね。



周りを後輩やイエスマンで固めれば、白いものでも黒でしょうね。




で、そのこっちを睨んでる中年男性は派手なメガネを掛けてるんですよ。


ゴーグルみたいなタイプでアニマル柄のメガネ越しに睨んでいるんですよ。



スーツも派手なシルバーっぽい感じなんですよ。


アパレル系なのか、何屋か知らないけど、チャラリーマンですよ。



またね、この睨む秒数ってのが目は口程に物を言いますからね。



まさか足を踏まれた相手から睨まれるとは思ってないので驚きましたけど、確実に目からは「おい、殺すぞ」って聞こえましたからね。



もうね、あり得ないでしょ?



こみ上げてくる怒りに耐えきれずに質問しましたからね。



『おい、なに睨んでんだよ』



一応、周りに気を使って小声で囁きましたからね。



するとチャラリーマンは反撃されるのが予想外の展開だったのか急にタブレットに夢中になるんですよ。



これね、何もしなければ威嚇に対する威嚇で終わるんですよ。



ただね、チャラリーマンはタブレットいじっちゃいましたからね。



これは我々ような肉体労働者の業界では、ご法度である【シカト】ということになるんですよ。



ぶつかる

足を踏む

睨み付ける

シカト



こうなったら、再確認しますよね。



『おい、なに、睨んでんだよ』



再びシカト。



もうね、ただひたすらにタブレットの画面を指先で擦ってるだけなんですよ。



なんですけど、不思議なことにね、そのタブレットの操作に入る時のチャラリーマンの表情や肩と首の動作が声になって聞こえてくるんですよ。



「あーあ、バカは相手にしてらんねーなぁ」ってね。



「やれやれ、私はあなたみたいな面倒臭いやつは相手にしませんからね」みたいな挑発的な態度をしやがるんですよ。



この表情や態度が憎たらしいったらありゃしない。



ずーーっとタブレットだけを見ながら「こいつ、うぜえな」って態度だけは全面に出してきやがるのよ。



さすがに、こいつインテリヤクザなのか?とさえ思ったくらいの態度なのよ。



喧嘩強いのか?



組織的に強いのか?



でも、こんな筋の通らない喧嘩をする訳がないですからね。



こんな人間というか、大人がいるんだなと。



まぁ、そのメガネのセンスからして面倒臭いやつなのはわかるけども。



『足を踏んで睨むのおかしいだろ?』



シカト。



『聞こえてますよね?なんでシカトするんですか?』



シカト。



『そういう態度やめませんか?こっちも意地になっちゃいますよ?』



シカト。



イライラが止まらない。



途中の駅に停車。



『降りて話しましょう』


シカト。



『大きな声出さないと聞こえないんですか?』



シカト。



『どっちがおかしいのか第三者に聞いてもらいましょうよ』




シカト。



『もうさ、そういう憎たらしい芝居みたいなのやめたら?』



シカト。



『つーかさ、大人として恥ずかしくないんですか?』



シカト。



『自分のやってることが恥ずかしいと思わないの?』



シカト。



らちがあかないので、少しかがんでチャラリーマンと目線の高さを合わせて話し掛けると、「私にはあなたが見えていません」という人として最低の態度を示したのだった。



俺はイジメの中でもシカトが最低のジャンルだと思ってる。



目の前にいる人間に対して反応を示さないどころか、その存在さえ認めようとしないのである。



ましてや、この野郎は俺の足を踏んで、しかもついさっきまでは思いっきり瞳孔見開いて睨んでたんだからな。



頭にきたから中腰になって、タブレットを見る視線の中に入って下からチャラリーマンを見上げてやった。



『僕のこと見えてますよね?』



シカト。



だが、チャラリーマンは超渋々という芝居をしながらタブレットをカバンにしまうのだった。



これでようやくケリをつけられると思ったら駅に着いた。



俺の降りる駅だった。



先にチャラリーマンが降りた。



後を追った。



改札を出た。



そのままいけば交番がある。



こうなったら、そこで決着をつけるしかない。



チャラリーマン、流れるようにタクシーに乗り込んだ。



逃げられた。



悔しい
悔しい
悔しい
悔しい



次のタクシーに乗って運転手に『前のタクシーの後を追い掛けて下さい』とは言えなかった。



金もなかった。



イライラが消えないので、彼女に電話して状況を説明した。



みっともないと言われた。



相手にする方が悪い、と言われた。



周りが迷惑だと言われた。



刺されるよ、と言われた。



会話を全部タブレットで録音されてて今頃ネットに流されてるよ、と言われた。



ようするに、相手がお洒落な格好のサラリーマンだったから嫉妬してるんでしょ?と言われた。



さすがにキレた。



望んでた言葉がひとつもなかった。



キレたことは謝った。



どうすればよかったのかを聞いた。



足を踏まれたことでしか警察には相手にされないと言われた。



確かに睨まれたということには証拠はない。



シカトなどの俺をおちょくった態度にも証拠はなにもない。



やはり、冷静さがなければいけなかったのだろうか?



ただ、こんなことがまかり通る世の中はおかしいと思う。



その翌日、またしても帰宅途中の電車に乗り込んだ際に、腕に数珠を2つ付けたハゲたサラリーマンから肘でグイグイ押されたあげく、振り向かれて睨まれたのだった。



混み合った車内で、わざわざ女性のいる方に行こうとするなんて自殺行為か、こういうやつが痴漢なのだろう。



ようするに、昨日に引き続き俺が邪魔だったようでね…。



速攻で
『おっさん、なに睨んでんだよ』と一喝すると
「睨んでません」
『睨まれたから言ってるんだよ』
「いや、睨んでませんてば…」



このハゲも降りた駅が一緒だったので、ここは最悪な街だなと思ったら、ハゲはホームを移動するとキョロキョロしながら別の車両に再び乗り込んで行った。



頭のおかしい相手には睨まれても関わらないのが正解なのかもしれない。