2007年8月、突然会社を辞めた。

会社を辞めた時点でワーキングビザが切れるから、どんなに貧しかろうと、どんなに辛かろうと、必死にかじりついてきたのに、最後は何ともあっけなかった。身心共に疲れ果ててしまったのだ。


一週間はとにかく眠り続けた。


ストレスとは恐ろしい。あまりの仕事の忙しさに、1分前言われたことが思い出せない。壁に寄りかからないとジッと立っていられないほどフラフラ。夜中、突然目が覚めて、心臓がバクバクいう。過労死というのは、ああやって訪れるのだろうなと、振り返ってみれば辞めて正解だったのだが、その時は思考回路がまったく麻痺してしまっていて、体も鉛のように重たく起き上がれなかった。


何とか起き上がってみて、ぼちぼちどうするか考えてみた。でも、しばらくは、本当に脳が麻痺してしまっていた。14年もアメリカにいたのだ。日本に帰って適応できるだろうか?

そんなことを考えると憂鬱になって、ますます頭は真っ白になるばかり‥。


一番の問題はNorahだった。

「ずっといっしょにいようね」と、毎晩のように誓い合ってきたのだ。


私には苦い思い出がある。

日本をたつとき飼っていた猫は、当時いっしょに暮らしていたボーイフレンドに預けた。その彼が結婚したときに、結婚しましたのイラスト入り葉書をくれたのだが、その仲良くならんだ夫婦の似顔絵の中央に、ちゃっかり私の猫が描かれていたのだ。赤いバンダナまでされて‥。悲しかった。それより悲しかったのは、その後人づてに「死んじゃったみたい」と聞かされただけで、どうなってしまったのか、まったくわからなくなってしまったことだ。

今でもはっきり覚えている。きかん坊な猫だったが、私が留学すると決まり、部屋で荷造りしていると、部屋の外から、両手を前にそろえてじーっと私を見つめたきり動かなかったのだ。あの何かを悟ったかのような淋しげな表情が目に焼きついている。どうやら奥さんは猫好きではなかったらしいと、これも人づてに聞いたこと。私の身勝手で結局は捨てたようなものだ。可哀想なことをしてしまった。


そんなことは、もう二度としないと誓ったから、その後猫が飼いたくても我慢していたし、Norahをアダプトしてからは、毎晩のように「ずっといっしょにいようね」と誓い合ってきたのだ。自分に言い聞かせる意味でも。


さて、そんなわけで、アメリカから日本に猫を連れて行くにはどうしたらいいのか、まずはインターネットでの検索から始めた。