国公立大学の小論文 | これでも元私立高校教員

これでも元私立高校教員

30年以上の教員指導を通じて、未来を担う子供たち、また大人の思考などをテーマに書き綴っています。
日本史と小論文の塾を主宰し、小学生から大学生、院生、保護者の指導をしています。

今週末から、国公立大学の2次試験が始まる。

後期日程はもちろんだが、前期日程でも小論文を課す大学が年々増え、その取り組みの差が合否の明暗を分けるケースが多くなった。

 

そんななか、今日、直前にひとりの高校生が駆け込んできた。

 

「小論文が不安で、どうしたらいいですか?」

 

なるほどと思い、今まで書いたものを見せてもらった。

 

学校で添削をして合格をもらったらしいが、典型的な「見たまんまの内容」が書かれている。

つまりは「作文」であり、「論文」ではなかった。

 

二項対立で「Yes」か「No」を決めて、しかも「自分の考え」は筆者の考えに「Yes」として、筆者の考えに沿って書く・・・。

これでは、そもそも「自分の考え」ではなく筆者の意見の「コピペ」なり、しかもこれを多くの受験生がやってしまうため全員が「同じ考え」となり、文章力勝負、つまりは見た目の綺麗さ勝負になってしまう。

 

もちろん、そうした受験生が多い中で、自分の独自の「仮説」を明らかにし論理的にそれを「証明」できれば、こういった「二項対立小論文」は敵ではない。

 

そこで短い時間だが、「考え方」(マインドセット)をできる限り伝え、実際にそれを目の前に「再現」した。

そうすることで、もとの「作文」にはない「仮説」(自分の考え)を見出すことができた。

 

そのような「仮説」を見出すのに特別な知識が求められるものではなく、不足しているのは「考え方」であり、それがわかれば誰でも「仮説」を見出せる可能性が生まれる。

もっともそれには訓練が必要であり、短期間ではなかなか難しい。

 

もちろん、ある一定の期間の訓練をしていても制限時間がある入試では簡単ではなく、いわゆる「二項対立小論文」は、そうした時間切れの際のすべり止め的な存在となる。

 

あとは、大きな時間短縮に繋がる「読まない要約」の技法を伝え、少しでも考える時間を持てるようにアドバイスした。

 

「こんなやり方が小論文にあるなんて思いもしなかったです」

 

そういって、少し明るい表情になって受験生は帰っていった。

入試まであとわずかであるが、こうした機会が少しでも受験生の応援になればと思う。

 

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