教育の無償化が進まない理由とは? | これでも元私立高校教員

これでも元私立高校教員

30年以上の教員指導を通じて、未来を担う子供たち、また大人の思考などをテーマに書き綴っています。
日本史と小論文の塾を主宰し、小学生から大学生、院生、保護者の指導をしています。

日本では、なかなか本当の意味での教育の無償化が進まない。
確かに大都市圏では、私立高校の授業料も無償化になるなど徐々にではあるが進んではいる。
しかし日本全体で見ると大学はもちろんのこと、学校の給食費や教材費、さらには、公立学校の職場環境に対する補助のなさ等を含めればまだまだ無償化の道は遠い。
 
もちろん、これは結局は予算の問題であろう。
他にお金を使うことがあるので、教育関連費が拡充しない。
 
しかし、これほど教育の大切さを訴える人たちが政治家も含めて大勢いるのに、また日本は国民負担率がこれほど高くなっているにもかかわらず、教育の無償化が行われないのだろうか。
 
この原因は癒着と世襲ではないだろうか。
 
1994年に小選挙区比例代表並立制が導入されて以降、12年の総理大臣のうち8人が世襲である。
このうち4人は民主党の総理大臣であるため自民党に限って言えば、8人中7人だ。
自民党の議員を見ても、小選挙区で当選した議員のうち33%が世襲議員。
全体では40%を超えている。
 
これは、世界的に見ても異常なことで、アメリカの場合、下院議員、上院議員の世襲議員の割合はそれぞれ5%程度だという。

 

 

当然ながら、こうした世襲の議員たちは、父親、祖父からの様々な「付き合い」があり、そうした「付き合い」との関わりは、世襲議員であれば、多くの場合、若く当選するため排除するなどは考えられず、むしろそういったものの支援を受けてこそ当選する図式が強固に出来上がっている。
 
問題となっている宗教団体の支援などをその1つであろう。
 
そうなると予算の配分を「付き合い」を優先することになり、それが代々つながる「癒着」となる。
だからこそ、 世襲議員は、めっぽう選挙にも強い。
 
こうして私立の学園などを除き、政治的な「付き合い」が薄ければ、教育関連費は増える事は無く、昔から「付き合い」のある業界団体や支援してくれている圧力団体のために、予算が割かれることになる。
ちなみに2023年度予算では、防衛費は26%増加するが、教育関連費の増加分は2.6%だ。
 
単純な図式で世襲が悪いとは言えない。
しかし与党国会議員の40%が世襲議員であり、平成以降の総理大臣のうち7割もが世襲の総理大臣であることの異常さは、どこかに何かの様々な歪みを生むことになるであろう。
 
一般企業で親子で環境を受け継いでいく話とは全く違う。これは国民の税金で行われていることだ。
 
これは教育費だけの問題ではない。
単に票にならないといった理由だけではなく、そもそも「付き合い」のない分野に予算がされないだけのことでは無いのだろうか。
そう考えれば、少子化対策や物価高対策に対しての予算配分の消極性もなんとなくわかってくる気がする。
 
少なくとも、フラットな競争をするために、父親や祖父の地盤を受け継いだ、小選挙区からは立候補できない位のルールを、自民党が自ら作れないものだろうか。
 
私たちの社会だけに限らず、政治の世界にも健全で公正な競争があるとは思えない。
衆議院ではなく、まるで「貴族院」のような国会が、どうして国民のための政治ができるのであろうか。
 
春の統一地方選挙である。
どこの誰に投票するかは、各自の自由であるが、「世襲」を判断の基準に1つになればと思う。