大学から帰ってくると最寄りの駅に着くの は、
だいたい夜の9時ごろになります。
私は急いで駅ビルの地下の食料品売り場に行き、夕飯の材料を買って、
ターミナルから出ようとするバスへと走りこむのです。
その日、買い物袋を抱えた私の目の前に、
新しく出来たコーヒーショップがありました。
小さなお店を、その時は女性が一人、カウンターの奥に。
お店を見せていただこうと、眺めていたら、
そそっと私の横に近づいたその女性が、
試飲用のコーヒーをくれたのです。
そのコーヒーは、私の知っているコーヒーではありませんでした。
その味は、もう「味覚」といってはいけないような、
体に沁みいるものなのです。本当のコーヒーって、こういうものなんだと、
その時はじめて知ったのでした。
バスの時間が近づいている私は、
軽く会釈をして、お店を出ていきました。
どうしたら、あんなコーヒーができるのでしょう。
今度コーヒーを買う時に、訊いてみようと思います。