これは何も芸能界に限ったことではない。私が若い頃お世話になったとある中小企業の社長さんは、人心掌握術に長けた尊敬すべき人物であった。常に従業員の長所に目を向け褒め称えた。悪口は言わなかった。その社長の信用を勝ち得て、社長の別荘で開かれる幹部会議に招かれた時、私は初めてその社長の本質を見た気がした。
そこでの社長は別人だった。従業員に対する罵詈雑言を連発した。幹部の一人がある従業員のことで不満をもらすと、その社長は言ったものだ。
「あいつは牛や馬と一緒、人間と思うから腹が立つんだ」
その従業員は私もよく知っている人物だが、社長に可愛がられてることを自負しており、社長を崇拝していた。最終的にこの人物は解雇されたが、解雇されて尚社長を信じ続け、自分が馘になったのは社長以外の誰かの陰謀であると思い込んでいた。洗脳に近いものがある。尊敬する社長に、牛や馬同然と思われていたことを知らされても、きっと信じないであろう。
そんなわけで、表面的ではなく、本音を知りたければ、楽屋に出入りできるようにならなければいけないと、私は若いうちから考えるようになった。
楽屋に出入りするにはその楽屋の主に積極的にコミットしなければならない。その人物にメリットをもたらすような情報を提供するのが一番だが、その人物の成功談を聞きたい旨をアピールするという方法もある。それなりの地位にある人は自分史を語りたいものだからだ。自分の歩んできた道に興味を持つ人物が現れたら(それが若者なら特に)快く話してくれるだろう。
女の気を引くのと一緒で、週に一度金をかけたデートをするより、毎日連絡をとることが肝心だ。
今の私は自分の楽屋に出入りできる人間を選別できる立場にある。ホウレンソウ(報告・連絡・相談)をまめにしてくる人間は当然ながら見込みありだ。それが打算だとわかっていてもだ。逆にこちらからコンタクトをとらないと何も言ってこない奴は、楽屋には出入りできない。例え仕事がデキる奴でもだ。
楽屋で裏話をできる奴は信用こそが大切で、組織のインサイド側にいる人間でないとダメだ。組織のインサイドへは片道切符しかない。
退路を断った奴のみ、知ることができる情報…それが楽屋の裏話だ。
