新宿の高層ホテルの一室で、目覚めた。
暦では春なのだが、まだ寒い様な事を、
テレビの天気予報で、
さえない中年親父が偉そうに言ってた。
俺は仕事柄、
新宿のこのホテルを利用する事が多い。
今日は友人と、
彼の会社で会うことになっている。
彼の会社は、
少し離れた駅前の超高層ビルである。
約束の時間には、
友人の用意してくれたハイヤーが、
ホテルのエントランスに迎えに来てた。
ハイヤーは静かに、
友人の待つ超高層ビルへと向かった。
そこで待ち受ける悪夢を、
俺は、まだ知る由もなかった。
ハイヤーは超高層ビルに、
少しの振動もないまま滑り込んだ。
俺は仕事柄、
ハイヤーを使うことが多い。
この運転手、ドライブはかなり優秀だ。
ビル全てが友人の会社で、
彼はそこの重役である。
重役は高い所が好きなのだろうか、
彼のオフィスは最上階の近くにある。
ハイヤーは1階のホテルの様な
エントランス前に停まった。
ドアを開けて貰い、左足から外に出た。
ビルの中に入ると、
外資系の会社らしく外人があふれてた。
俺は仕事柄、6ヶ国語を
その方言も含めて話す必要がある。
この会社の社員も
色々な国の人が多いようだ。
ゲートがあり、
受付でパスをもらわないと入れない。
ゲートには警備員が6人もいる。
警備員はヘルメットに
M3A1-11.4mm短機関銃を
持っていそうな雰囲気があった。
受付で名前を記入しパスを受取った。
私は仕事柄、名前を複数持っている。
ゲートを抜けホールに来た。
エレベーターは全部で6基ある。
セキリュティのためもあり
高層階に行くためには、
途中で乗り継ぎしなければいけない。
上のしるしのボタンに軽く触れた。
「ティンポーン」
「ここがもうじきくるよランプ」
が、1号機に点灯した。
俺は無言で1号機の前で待った。
「ティンポーン」「ガララララ」
開くと満員で入る余地はなさそうだった。
「先に行ってください、どぅうぞ」
紳士な俺は次を待つことにした。
上のしるしのボタンに軽く触れた。
「ティンポーン」
「ここがもうじきくるよランプ」
が、6号機に点灯した。
俺は無言で6号機の前で待った。
エントランスからガヤガヤと
十数名の外国人達ががやってきた。
「ティンポーン」「ガララララ」
エントランスに近い2号機が開いた。
エントランスから来た十数名の外国人が
先に乗り込み満員になった。
出遅れた俺は、
「先に行ってください、どぅうぞ」
次を待つことにした。
6号機が来るっていったのに!
と、少しだけ腹がたった。
上のしるしのボタンに軽く触れた。
「ティンポーン」
「ここがもうじきくるよランプ」
が、6号機に点灯した。
また騙されそうな気がしたので、
5号機と6号機の間で待った。
また、エントランスから
十数名の外国人がやってきた。
「やばい」
全てのエレベータに気を配りながら、
6号機付近で外人を威嚇して待った。
「ティンポーン」「ガララララ」
よしきた!6号機が開いた。
威嚇した甲斐があって、
一番で中に乗り込むことに成功をした。
十数名の外国人も乗り込んできた。
ギュウギュウの満員だ。
このエレベータは32階まで直通だ。
「ぷぅ~~~~~ん」
うぉ!臭え!誰かが放屁しやがった。
スカ屁で、しかもかなり濃厚なやつだ。
あたりを見回すが、
誰もそ知らぬ顔してやがる。
臭いくせに!
このエレベータは32階まで直通だ。
まだ3階少々、事態はかなり深刻だ。
俺は仕事柄、このような事態の対抗策を
すでに考えてある。
人のをかがされるくらいなら、
俺がさらに臭いのをあびせてやるのだ。
「屁には屁を」である。
常に腹の調子が悪い俺は、
幸いすぐに放屁可能な状態になった。
「ぷぅ~~ぶちゅ」
うぉ!やべぇ!音が出ちまった!
しかも具が出たような、
下品極まりないバッドサウンドである。
さっきまでそ知らぬ顔をしてたやつらが
俺をみている。
バレてる。
俺が音源であることがバレてる!
たまらず俺は下をむいてしまった。
しまった!
俺がしたのを認めたみたいじゃねぇか。
確かに俺がやったんだが…。
その前の濃厚なものまで
俺のせいにされてしまうじゃねぇか。
32階までが非常に長い。
時計が止まったかのようだ。
チッ、チッ、チッ・・・・・・
「ティンポーン」
やっと32階についた。
「ぷはぁ~」
まわりのやつらが
俺を睨んでいるようにみえる。
外人の女性が俺に何か言ってきた。
「○▲◇♪♀☆♂・・・」
なんか怒っているようだった。
俺は日本語しかわかんねーんだよ!
俺は仕事柄、
6ヶ国語を方言も含め話す必要がある。
でも、今は日本語しか話せない。
だから、
これから勉強しようと思ってたんだよ。
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)