ひみつな秘密のものがたり

ひみつな秘密のものがたり

こんばんわ。

このブログは秘密です。

決して誰にも漏らさないでくださいね。

秘密ですよ、秘密ですからね。

それでわ、お楽しみください。

Amebaでブログを始めよう!

(これは2005年に書いたものです。)

 

「あら、こんな所に古い紙……、新聞だわ」
「ほぉ、新聞かぁ。」
「台風やハリケーンの被害がそうとうひどかったようね」
「へぇ、考えられないよなぁ」
「週末に選挙があるって書いてあるわよ」
「選挙かぁ。昔の選挙は投票しに行ってたらしいよなぁ」
「わざわざ面倒な事ねぇ」
「その頃は小泉首相が色々やってた時じゃないかなぁ」
「小泉って歴史で習ったことがあるわ」
「政権最後の時は日本は大変だったと聞いたことがあるなぁ」

「阪神タイガースが優勝しそうですって」
「へぇ、その頃タイガースは強かったんだなぁ」
「今のゴールデンイーグルスみたいなんだ」
「その頃は2リーグ制で戦ってたんじゃないかなぁ」
「友達のおじいさんが、元阪神の鳥谷の後輩らしいわ」
「鳥谷かぁ、名将だったらしいよなぁ」
「ふーん」
「その新聞、結構いい値で売れるんじゃないか?」
「そんなの面倒だわ、それにお金なんかいらないじゃない」
「それなら、図書館にでも持っていくかぁ」

「そう言えば、おばさん肺癌が見つかったって言ってたわ」
「おばさんは昔の食事が好きだったからなぁ」
「昨日、かなり転移をしたのが見つかったって」
「癌くらい、注射一本で治るだろ」
「転移がひどいから、一週間は入院するらしいわよ」
「ふ~ん、見舞いでも入れとくかぁ」
「あなた、今日お医者さんに行くんじゃないの?」
「ああ、両目共に光学20倍に変更するんだぁ」
「新し物好きねぇ」
「おまえは、早く保険所行って赤ちゃんもらって来いよ」
「わかってるわよ」
 

(2005年)

空気が澄んでいるのか、
今朝の朝焼けは生駒山を焦がしている。
もう、半袖でいい季節だ。
無論スーツは長袖だが。
 
今日の午後は境港の
クライアントに会わなければいけない。
部屋にとけこむように、
壁に掛かった丸い時計は、
8時丁度を示していた。
9時05分の山陽新幹線だ。
そろそろ出かけないといけない頃だな。
マンションの地下駐車場、
42番に停められた
黒いセルシオに乗り込む。
「ドムッ」
静かにエンジンをかける。
重い車が音もなく
軽快に国道へすべりだす。
静かな車内に、
けたたましいラジヲの放送が響きだす。
「ありがとう浜村淳です・・・」
たいした内容でもないのに、
よく2時間も番組引っ張りやがる。
浜村淳はたいしたやつだぜ。
 
新大阪駅前の地下駐車場に
セルシオがすべり込む。
軽快なステップで新幹線に乗り込み
グリーンの座席を探した。
出発にはまだ数分余裕があった。
久しぶりに駅の売店にいき
スポーツ新聞を買ってみた。
昨日は、阪神が勝ったから
スポーツ新聞が楽しい。
新聞に目を落としながら
再びグリーン車に乗り込む。
 
「あれ」
おれの席に、
はげたおやじが座っていやがる。
「すいませんが、この席は・・・」
おや?
その時、日ごろから勘の鋭い俺は、
妙な違和感に気づいた。
さっきと列車が違う…
そのようだ。
売店から戻る時に
ホーム反対側の列車に乗ったようだ。
しまった。
俺としたことが、
うっかりしていた。
しかも、
はげおやじに話してしまった。
「・・・あなたの席ですね。」
と、
捨て台詞を残して列車を後にした。
 
いつもハードボイルドな俺としては
異常に、かっこ悪すぎるではないか。
「プルルルル・・・」
しかも、
乗るはずの列車のドアが
閉まりかけてやがる。

 
あわてた俺は、ベンチにつまづき
新聞を手から落とした。
「バサッ・・・」
ベンチはしに座っていた
美しい女性の足元に落ちた。
女性が拾いあげこちらを見上げた。
俺と女性の目が合った。
時が止まった。
「プルルルル・・・」
しかし恋を語る時間はなかった。
早くしないと、
荷物が俺を置いて
岡山に行ってしまう。
いや、
荷物は岡山では降りれないので、
博多までいってしまう。
そんなことはどうでもいい。
いそがなければ。
美しい女性に、
微笑とスポニチを残し
俺はドアへと駆け込んだ。
 
「プシュー、ガタン」
ホーム反対側の列車が動き出した。
なんだぁ。
この列車じゃないのかよ。
いつもハードボイルドな俺としては
異常に、かっこ悪すぎるではないか。
しかし俺は、
何事もなかったように席に座った。
「プァ~ン」
やっぱり飛行機と違って、
落ち着くぜ。
地をはう乗り物が一番だ。
「ンガガガガガガ…」
胸ポケットを携帯電話が
這いずり回った。
一度電車内で大音量で
「サザエさん」が
鳴り響いた時の経験から
迷惑にならないように
バイブレーターにしてある。
仕方なくデッキに行き電話をした。
「アッ」
と、言う間もなく
電話をしている間に岡山に着いた。
ここで特急「やくも」に乗り換える。
米子までは2時間だ。
車掌に指定席を訪ね、購入した。


「プァ~ン」
と、同時に「ンガガガガガガ…」
胸ポケットを携帯電話が
這いずり回った。
仕方なくデッキに行き電話をした。
電話の内容は
難しい内容で急をようしていた。
長電話となった。
予備のバッテリーを2つ使い果たし
別の携帯も利用した。
何とか無事に難題は解決された。
席に戻ろうとしたら
アナウンスが流れた。
「まもなく米子に到着します。」
 
くそ、
グリーンと特急指定席が
無駄になったじゃないか。
いらいらと改札を出て気づいた。
おや?
その時、日ごろから勘の鋭い俺は、
妙な違和感に気づいた。
忘れた…
秘密書類の入ったカバンを忘れた。
立ちつかれた俺は、さらに疲れた。
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)

瀬戸内の穏やかな海が、
磯の香りのする涼しい風を
運んでくる。
瀬戸内には数多くの島が点在し、
絵画のような風景を見せてくれる。
 
昨日から俺は、愛媛県にいた。
今日のクライアントは横川にいる。
愛媛県の今治から
高速船で瀬戸内海を渡り
広島に向かった。
広島市内南部の宇品に
高速船は爆音とともについた。
ここから広島市内の横川まで
タクシーで向かうことにした。
 
華麗なるステップで
タクシーに乗り込んだ。
「よこがわまで」
「え?」
「よこがわ!」
「あ?」
「よ・こ・が・わ!」
「あー、横川ね」
ったく、
耳が遠いやつだな。
かなり年を食った運転手だ。
志村けんの神様コントの
神様みたいなやつだなぁ。
 


「ぶぅん」
「うん」
「ぶ、ぶうん、うん」
やたらと加速、減速しやがる。
体が前後に激しく揺らされる。
なんて運転だ。
渋滞もない、信号もない
走りやすい一本道じゃないか。
車が壊れているのか。
乗り物酔いしたことのない俺が
酔いそうだぁ。
「ぶぅん」
「ぶ、うん」
「ききぃ」
あ~気持ち悪かった~。
後2,3分乗っていたら
後部シートは
もんじゃの池になるとこだったぜ
 
今日のクライアントは
町工場を経営する社長だった。
たいして興味がなかったので、
何をつくっている工場かは知らない。
工場の3階の社長室に案内された。
1階ではやたらとトラックが
出入りしていた。
脇の階段を上り2階に行く。
2階もそんなに広くなく、
部屋の左側の真ん中に
変な小部屋が壁についていた。
この部屋が地獄の舞台になるとは、
この時には思いもよらなかった。
パートのおばさんが大勢いた。
ダンボール箱を作っては、
中になんかの物を詰め込んでいた。
町工場だな。
 
奥の階段からさらに3階に上がる。
3階は倉庫と社長室だけのようだ。
「いやぁ~よ~きてくれました。」
「さぁお掛け下さい。」
埃をたくさん吸い込んだソファーに
座るようすすめられた。
「ばふっ」
やっぱり、かなりのほこりが出た。
まあいい、それよりビジネスだ。
しかし、
ビジネスの話をする前に
厄介な問題がでてきた。
俺の下腹部にかけての体内の調子が
すこしおかしい。
腸の活動が活発になってきて、
括約筋に圧力がかかりだしている。
平たく言えばウンコがしたい。
さっきのタクシーのせいではないか?
まぁ、仕方がない。
ついた早々で悪いが、
ここはウンコを先にさせてもらおう。
 
「社長、申し訳ない。
トイレを貸していただきたい。」
「便所は2階なんじゃ。」
2階?ひょっとして・・・。
やはりさっきみた、
あの変な小部屋がトイレだった。
四方にベニアを貼っただけの
頼りないつくりの
グラグラの和式トイレだった。
壁に触ったら倒れるんじゃないか。
 
まぁ、仕方がない。
掘っ立て小屋でも
まわりのおばさんたちに
見られているわけでもない。
早くウンコをしてしまおう。
さっさと用をすまして…
「ぶばばばばばばばばばぁぁぁぁ」
「ぶっちゃ・・・ぶりぶりぶりぃぃぃ」
うわ!
あまりに用を急いだために
豪快な爆音の屁ととも
ウンコは便器へと飛び出した。
 


こいつはいけない。
このベニア板の外には
大勢のおばさんが労働している。
特に無駄口をするでもなく、
静かに仕事をしている。
仕事熱心なおばさま達である。
なので
爆音は2階中に響き渡ったはずだ。
あ~かっこ悪い。
この後、俺はどのような格好で
このトイレから登場すればいいのだ
うつむき加減に頬を赤らめるか・・・
俺じゃないフリをして、
「今の音は何?」
と、いうように出るか。
両手を広げ自慢げに出て行くか・・・。
 
まずい、
ハードボイルドな俺に、この状況は
非常にまずい。
裏口を探したが、
掘っ立て小屋には窓すらもなかった。
こもっていても臭いだけだ。
仕方ない。
ここはとりあえず、
何事もなく普通に出てみた。
おばさま達も、
もしかすると聞こえていないかも
しれなくもない。
仕事に集中しているから
音など気にならないかもしれない。
俺が変に気にすることはないんだ。
おばさま達は
特に俺を見るふうでもなかった。
ふ、
俺の取り越し苦労じゃないか。
 
足早に華麗なステップで、
俺は社長室に入った。
些細なことを俺が考えすぎたな・・・。
社長室の扉を閉めたとたん。
背後で
「ドワーwww!」
と、おばはん達の下品な笑いが響いた
くそっ
・・・やっぱりな
一瞬で町工場の人気者になっちまった
それにしても
2階の笑い声がよく聞こえるな
建物の壁がすべて薄いんだよ
だから、すべての音が筒抜けだ
 
だから、ビジネスに入る前に
社長が正露丸を俺の前に出した。
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)

浅田くんと一緒に車に乗っていた。
おれが運転して高速を東へ走っていた。
おれがすこし窓を開けた。
しばらくして、
「何か臭わないか?」と浅田くんが。
 
・・・。
 
浅田くん、いきなり窓を開けて
「おまえ!屁こきやがったなぁ!」
「おまえが窓開けた後やから、
おれは外のにおいかと思ったやないか」
「こいだなら、こいだと言え!」と、
怒っていた。
 
臭かったんだろうなぁ。 
 
浅田くんたちとスキーをしにいき、
長野県のペンションに泊まった。
1人が上り下りできる幅の細い階段で、
浅田くんがおれにつづいて、
2階に上がろうとしていた。
1階と2階の中ほどまで来た時に、
おれが「あれ?」と言った。
浅田くんが「なに?」と、
おれの方、上を見上げた時、
 
「ぶりっ!」
・・・。
 
「おまえ!ええかげんにせえよ!」
「友達なくすぞ!」と怒っていた。
 
臭かったんだろうなぁ。
 
浅田くんたちと温泉にいった。
おれは先に入っていて、
体を洗いおえて湯につかっていた。
浅田くんが入ってきて、
出入口付近で、髪の毛を洗いだした。
おれは「でるわ。お先に」と、言って
湯を出て、出入口に向かった。
その途中で、浅田くんにケツをむけて
 
「ぶひっ!」
・・・。
 
洗う手を止めて「おまえなぁ。」
「頭に風がきたわ。
フィルターなしで屁をこくな!」と、
あきれていた。
 
臭かったんだろうなぁ。
 
------

(2005年発表)

もう春の日差しが、
琵琶湖湖畔にも気持ちよく訪れていた。
雲ひとつない快晴。
抜ける様な青空がはるかに続いている。
 
滋賀県、琵琶湖の東に位置する長浜市。
今日のクライアントはここいた。
北陸自動車道の長浜インターチェンジを
降りて、長浜市内へとセルシオが進む。
「テ、テ、テ、ティンポーン」
ラジオで時報が、正午をつたえていた。
アポイントの時刻は13時15分。
かなり中途半端な待ち合わせの時刻だ。
 
昼食でもしよう。
市内路地裏にセルシオを路上駐車した。
ラーメン好きの俺はラーメン屋を探す。
少し進んだ2本目の筋を右に折れると、
食堂があった。
ラーメン屋をさがすのも面倒だし、
ここでいいかな。
この食堂に入ることに決めた。
食堂は、
古い民家の外見にのれんと看板があり、
ひびが入ったガラスを
ガムテープで補強した引戸がついてる。
 
「がらがらがらぁぁ」
「らっしゃい!」
 
それほど広くない食堂は、
4人がけのテーブルが6個と
カウンターに数名程の座席数である。
従業員は厨房におっさんが2人、
接客におばはんが1人である。
結構、客がいて満席だった。
「そちら、相席でおねがいします。」
仕方ないので4人テーブルに相席した。
 
俺の向かいには、
50過ぎくらいのハゲたおやじが、
半身でスポーツ新聞を読んでいた。
そのハゲの右側には、
ハゲと同じくらいの年の男が
楊枝をしがんでいた。
二人はサラリーマン風だが、
仕事のできなさそうな雰囲気である。
だいたい、
まだ注文した料理が来ていないのに、
どうして楊枝をしがんでいるんだ?
俺の左側は、
30前後の警備員の服装をした男がいる。
男は週刊誌を読み、ニヤついている。
俺は「焼魚定食」を注文した。
 
「おまちどうさま」
早いなと思ったら、
左側の警備員の「焼き魚定食」だった。
こんなに早くできるわけないよな。
結構、はやっている店のようで、
次から客がやってくる。
「うぁ。いっぱいやなぁ」
青い作業着の男が入口でつぶやいてた。
 
まだ俺の「焼魚定食」がこない。
まぁ、
混んでいるからしかたないのかぁ。
まだ10分だからなぁ。
楊枝男とハゲ男は連れのようで、
二人に「焼肉定食」が運ばれてきたた。
うまそうな焼肉の匂いがただよう。
ますますお腹がすいてくる。

まだ俺の「焼魚定食」がこない。
もう20分だぞ。
いくらなんでも、遅いんじゃないか。
おばはんに少し催促をした。
「ごめんなさい。もうできますんで。」
ほんとかよ!
週刊誌男は食い終わり出て行った。
かわりに、
銀行員の様なキチっとした男が座った。
 
まだ俺の「焼魚定食」がこない。
もう30分もたつぞ。
向こうのテーブルの
青い作業着の男が「焼魚定食」食べる。
あいつは
俺より後にきたんじゃなかったのか?
 
「おまちどうさま」
やっときたか・・・。
もう少しでおばはんに怒るとこだった。
 
あれれれ~
「焼魚定食」が銀行員の前に置かれた。
つねに冷静な俺も怒った。
この状態を放置すれば、俺はともかく
次に同じ様な事になった客が迷惑する。
さらには客離れを引き起こして、
この食堂もつぶれてしまいかねない。
俺だけの問題じゃぁない。
この食堂のためにも
ここは怒っておかなければならない。
 
紳士的に、冷静に、道徳的に
俺はあえて怒ってあげた。
「アホ」「ボケ」「なめとんのか」
「ええかげんにせぇよ」
などという言葉も、
全てこの食堂を思えばこその言葉だ。
「すみません・・・」と、おばはんは、
銀行員前の「焼魚定食」を
事もあろうに俺の前に置き直した。
「どうぞ、先にいいですよ」
と、銀行員が言った。
いいですよとはどうゆうことだ!
あたりまえの事じゃねぇか!
俺が無理言ってるみたいじゃねぇか!
 
そうそうに食堂を出た。
気分が悪くて、食った気がしないなぁ。
路地の反対側にラーメン屋があった。
あっちに行っていればよかった。
なんで気がつかなかったんだろうな。
そう思いながら、
セルシオをとめた場所にむかった。
 
白いチョークの文字と紙切れを残し、
セルシオは姿を消していた。
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)
瀬戸内に面した地域は穏かな所が多い。
外海とちがい海も静かで天災も少ない。
 
クライアントとは契約がまとまって
初めてビジネスとしての客となるのだ。
契約もまとまらないのに、「俺は客だ」
などと言っているやつらは客ではない。
俺の仕事は
クライアントと会うところから始まる。
しかし誰でも俺と会えるわけではない。
 
昔シティハンターという漫画があった。
シティハンターに仕事の依頼を頼むには
駅の掲示板に「XYZ」と書く。
俺は「WXY」と書かせ様かと考えた。
シティハンターより、
全ての文字で一歩前を行くという訳だ。
しかし、
「WXY」を縦に書くと、
小学生が落書する女体の絵じゃねぇか。
くだらないのでやめた。
 
今日は、高松市内にいるクライアントと
会う約束をした。
いつもなら、クライアントに会う前には
色々トラブルが起きるのだが、
今日は違っていた。
何の問題もなくクライアントと会えた。
 
高松市内の某ホテルで会う事になった。
事前に得ているクライアントの情報は、
某薬品会社社長
64歳男
身長164cm
体重85kg
血液型B型
生年月日8月8日獅子座
後は経歴と家系、会社内容、現状など。
かなり恰幅のいい初老の男と
いったところだろう。
典型的な社長タイプだな。
 
このビジネスを俺に持ってきた引受人と
一緒に1302号室に向かった。
「こんにちわ、丸藻さん」
ドアを開け引受人の後から中へ入った。
部屋には、想像通りの男が立っていた。
「いやぁ、よくきてくれましたぁ」
さっそく握手をしソファに案内された。
 
ソファに座り、依頼人の顔を少し見て、
俺は、何かものすごい違和感を感じた。
なんだ、何が違和感を感じさせるのだ。
「今日、頼みたい話は…」
違和感を感じつつ仕事の話が始まった。
結構面倒な依頼案件であるようなのだが
話が遠回しすぎてわかりにくい。そして
「…単刀直入に言いますと…」
 
ヅラだった!
違和感の正体は、依頼人のヅラだった。
「…日程の方は、ずれることなく…」
 
ずれてる!
分かりやすくヅラがずれているんだよ。
縦ずれではなく横ずれをおこしている!
左の耳の前にあるはずのもみ上げが、
左の目のすぐ横にまでせまって来てる。
ということは、
右は耳に掛かりかけてるということだ。
「…それでは、ご依頼した仕事の方は、
………できるだけわからないように…」
 
もろばれだよ!
わかりまくりなんだよ!
気になり始めビジネスどころではない。
「……この仕事はできるだけ内密に…」
 
むりだ!
内密になどできるはずないじゃないか。
俺一人の心にとどめるには
インパクトがとてつもなく大きすぎる。
この事実を共有する仲間が必要だ。
引受人の左脇を俺は右ひじでつついた。
「ん?」
 
引受人も気づいていたようで、
「どうする?」
と、お互いアイコンタクトをしあった。
指摘して、相手に恥をかかせても悪い。
もう恥をかいているとも思うが…。
このまま仕事の話を、続けるしかない。
「……と、以上でわかりましたか?」
 
とうにわかっているよ!
すべてマルっとお見通しだよ。
貴様がヅラなのは、わかってるんだよ!
 
その後の話は、全く入ってこなかった。
気を抜くと、
ふつふつと煮えたぎるハゲしい笑いが、
胸の底からこみ上げ爆発しそうになる。
足や腕をつねりまくり、
他事を考えながら踏張るしかなかった。
ハゲ野郎との戦いを、小一時間続けた。
引受人が何とか笑いを飲み込みながら、
「……う、ぷふっ、社長、でわ、…
き、きょ、今日の所はこのくらいで…」
 
今日の所がこれくらいなら、
次回はもっとずれてるんじゃねーのか。
とりあえず、戦いは終わった。
 
二人はホテルの外に出て深呼吸をした。
横の路地に入り、そして2人で笑った。
そばにいた、
犬も猫も雀も虫も草も一緒に笑ってた。
しばらくすると、
激しかった戦いの痕が赤くはれてきた。
足や腕がジンジンしてきた。
笑いも収まった。
体力を消耗し疲労感でいっぱいだった。
 
ようやく引受人が口を開いた。
「…で、依頼内容はなんだったけ?」
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)
都心の空には星がほとんど見えない。
不気味な赤い月が、今から起きる俺の
不運を知っているかのようだった。
 
俺が
東京の等々力付近で拾ったタクシーは、
綱島街道を横浜方面に走っていた。
深夜2時を過ぎているので、
元住吉付近も人影はまばらだった。
「山野屋五郎」へんな名前の運転手だ。
「山野」か「山野屋」のどっちなんだ?
どうでもいいことだが・・・
 
到着にはまだしばらくかかりそうだな。
友人宅で少し飲みすぎたようだ。
頭が痛かった。
菊名の●●宅へ向かっていた。
彼女と会うのもしばらくぶりだな。
ふふ・・・
 
「おきゃくさん、
何かいいことでもありましたか?」
うるせー!
ミラーで人の顔見てんじゃねーよ。
「あたしはね、
昨日、長距離拾いまして。」
「静岡までいっちゃいましたよ。」
しるかー!
黙って運転してろよ。
しかし気のいい俺は、
不覚にも相槌をうってしまった。
「ほぉ」
 
こいつ俺の話し聞きたがってるな。
と、思われてしまったか。
しまった!
聞きたくなんぞ、ねぇー!
だまって運転しとけばいいんだよ!
たのむから、黙ってろ・・・。
 
「私はね・・・」
うわっ!やっぱり話し出しやがった。
「静岡が一番の長距離なんですよ。」
ふーん。
そうですか。知ったこっちゃねぇ。
「そういえば・・・」
こら!
話を展開するんじゃねぇ!終わらせろ!
「この間、聞いたんだけど・・・」
余計なこと聞いてくるんじゃねぇ!
「おいらの友達がさ、
すごい長距離経験したんですよ。」
友達も余計な経験するんじゃねぇ!
 
「どこまで行ったと思いますか?」
うぉ!質問形式かよ!
これは相槌うっておくふりだけが
ゆるされない攻撃だ。
きつい攻撃をしてきやがったな。
このダメージは大きいぞ。
しかし、気のいい俺は、
「名古屋?」
 
「そうだよなぁ。
普通はその辺だと思うよね。」
うるせぇ!俺は思ってねぇよ!
沖縄とでもいってやればよかったか。
「岡山まで走ったんですよ。」
ふーん。岡山ねぇ。
面倒なので、
相槌うたずに無視してやった。
少しばかりの抵抗だ。まいったか。
 
「おきゃくさん、
岡山の場所わかりませんかぁ?」
うぉ!なんてこった。
俺が岡山を知らなくて
黙ったと思ってやがる。
なんというやつなんだ!
「知ってるよ」
「知ってますか。
和歌山じゃないですよ。岡山ですよ。」
うるせー!
俺は関西人だ。
和歌山と岡山くらいわかってるよ!
 
「いやね。雨の日に、
環八を流してたらしいんですよ。」
「夜の1時くらいにね、
傘を差した女の人が、
小さな子供を抱いて立ってたんですよ」
「幽霊かと思ったらしいんですが…」
 
どうでもいい話の内容はこうだ。
女の人は、
酒飲んで暴れた夫から逃げるように
家を飛び出して、
岡山の実家に行こうとしたらしい。
お金も持っていなくて、
実家に着いたら払う事にしてたらしい。
それを信用して友人は岡山へむかい、
途中、
車内で寝たような事もあったらしく、
お金持ってない親子に
ご飯も食べさせてやったらしい。
そして実家について感謝されたらしい。
結構な料金だったらしい。
「…でさ、友達は次の日も
仕事にならなかったらしいですよ。」
「長距離で料金良くても、
次の日仕事にならなくて損したって
いってましたよ、ははははは」
何か面白い話だったのか?
うつらうつらとして聞いていた。
 
「お客さん、新横浜でしたよね。」
「いや、菊名でいいんだけど。」
うぉ!外を見たら新横浜駅が・・・!
目的地を通り過ぎてるじゃん!
「あ、そうでしたっけ。」
ふざけんじゃねぇ!
「メータとめて、もどりますね。」
こら!とめるだけじゃなくて戻せ!
 
なんてタクシーなんだ。まったく。
もうおまえの運転するタクシーなんか
2度と乗るもんか!
なんて名前のやつだっけ?
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)
新宿の高層ホテルの一室で、目覚めた。
暦では春なのだが、まだ寒い様な事を、
テレビの天気予報で、
さえない中年親父が偉そうに言ってた。
 
俺は仕事柄、
新宿のこのホテルを利用する事が多い。
今日は友人と、
彼の会社で会うことになっている。
彼の会社は、
少し離れた駅前の超高層ビルである。
約束の時間には、
友人の用意してくれたハイヤーが、
ホテルのエントランスに迎えに来てた。
ハイヤーは静かに、
友人の待つ超高層ビルへと向かった。
そこで待ち受ける悪夢を、
俺は、まだ知る由もなかった。
 
ハイヤーは超高層ビルに、
少しの振動もないまま滑り込んだ。
俺は仕事柄、
ハイヤーを使うことが多い。
この運転手、ドライブはかなり優秀だ。
ビル全てが友人の会社で、
彼はそこの重役である。
重役は高い所が好きなのだろうか、
彼のオフィスは最上階の近くにある。
ハイヤーは1階のホテルの様な
エントランス前に停まった。
ドアを開けて貰い、左足から外に出た。
 
ビルの中に入ると、
外資系の会社らしく外人があふれてた。
俺は仕事柄、6ヶ国語を
その方言も含めて話す必要がある。
この会社の社員も
色々な国の人が多いようだ。
ゲートがあり、
受付でパスをもらわないと入れない。
ゲートには警備員が6人もいる。
警備員はヘルメットに
M3A1-11.4mm短機関銃を
持っていそうな雰囲気があった。
受付で名前を記入しパスを受取った。
私は仕事柄、名前を複数持っている。
 
ゲートを抜けホールに来た。
エレベーターは全部で6基ある。
セキリュティのためもあり
高層階に行くためには、
途中で乗り継ぎしなければいけない。
 
上のしるしのボタンに軽く触れた。
「ティンポーン」
「ここがもうじきくるよランプ」
が、1号機に点灯した。
俺は無言で1号機の前で待った。
 
「ティンポーン」「ガララララ」
開くと満員で入る余地はなさそうだった。
「先に行ってください、どぅうぞ」
紳士な俺は次を待つことにした。
 
上のしるしのボタンに軽く触れた。
「ティンポーン」
「ここがもうじきくるよランプ」
が、6号機に点灯した。
俺は無言で6号機の前で待った。
 
エントランスからガヤガヤと
十数名の外国人達ががやってきた。
「ティンポーン」「ガララララ」
エントランスに近い2号機が開いた。
エントランスから来た十数名の外国人が
先に乗り込み満員になった。
出遅れた俺は、
「先に行ってください、どぅうぞ」
次を待つことにした。
 
6号機が来るっていったのに!
と、少しだけ腹がたった。
 
上のしるしのボタンに軽く触れた。
「ティンポーン」
「ここがもうじきくるよランプ」
が、6号機に点灯した。
また騙されそうな気がしたので、
5号機と6号機の間で待った。
 
また、エントランスから
十数名の外国人がやってきた。
「やばい」
全てのエレベータに気を配りながら、
6号機付近で外人を威嚇して待った。
「ティンポーン」「ガララララ」
よしきた!6号機が開いた。
威嚇した甲斐があって、
一番で中に乗り込むことに成功をした。
十数名の外国人も乗り込んできた。
ギュウギュウの満員だ。
このエレベータは32階まで直通だ。
 
「ぷぅ~~~~~ん」
うぉ!臭え!誰かが放屁しやがった。
スカ屁で、しかもかなり濃厚なやつだ。
あたりを見回すが、
誰もそ知らぬ顔してやがる。
臭いくせに!
 
このエレベータは32階まで直通だ。
まだ3階少々、事態はかなり深刻だ。
俺は仕事柄、このような事態の対抗策を
すでに考えてある。
人のをかがされるくらいなら、
俺がさらに臭いのをあびせてやるのだ。
「屁には屁を」である。
常に腹の調子が悪い俺は、
幸いすぐに放屁可能な状態になった。
 
「ぷぅ~~ぶちゅ」
うぉ!やべぇ!音が出ちまった!
しかも具が出たような、
下品極まりないバッドサウンドである。
さっきまでそ知らぬ顔をしてたやつらが
俺をみている。
 
バレてる。
俺が音源であることがバレてる!
たまらず俺は下をむいてしまった。
しまった!
俺がしたのを認めたみたいじゃねぇか。
確かに俺がやったんだが…。
その前の濃厚なものまで
俺のせいにされてしまうじゃねぇか。
32階までが非常に長い。
時計が止まったかのようだ。
 
チッ、チッ、チッ・・・・・・
「ティンポーン」
やっと32階についた。
「ぷはぁ~」
まわりのやつらが
俺を睨んでいるようにみえる。
外人の女性が俺に何か言ってきた。
「○▲◇♪♀☆♂・・・」
なんか怒っているようだった。
俺は日本語しかわかんねーんだよ!
 
俺は仕事柄、
6ヶ国語を方言も含め話す必要がある。
でも、今は日本語しか話せない。
だから、
これから勉強しようと思ってたんだよ。
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)
風はまだ強いものの、
次第に春が香おるようになってきた。
大阪の都心でも心地よい陽気が漂う。
 
今日のクライアントは京都だ。
午後1時のアポイントをいれてある。
俺のパティックフィリップの腕時計が
10時すぎを示している。
俺は超高級な超高層マンションの
かなり上の方の階に住んでいる。
珈琲の香りが漂うリビングは、
鳥のさえずりさえ聞こえてくる。
時間もあることだし、
今日は車ではなく電車で出かけようか。
たまにはセルシオも休ませよう。
 
今日は日差しも少し強いようなので、
濃い目のサングラスをしていくか。
「ガチャ」
重厚なマンションの扉を開け外に出る。
エレベーターホール。
エレベータは2機とも離れた階にいる。
まぁいい、時間はたっぷりとあるから。
 
一階に到着し、
メインエントランスに向かう。
前を初老の男性が、
ゴミ袋を持って歩いていた。
「おはようございます」
初老の男が俺に挨拶をしてきた。
初老の男は、
俺の上の階の住人の豆芝さんだ。
「豆芝さん!おはよう。」
俺は初老の男のうずくまった左肩を、
「ポン」
と軽くたたき、エントランスから出た。
 
国道の脇の綺麗に整備された歩道を、
駅方面に向かった。
駅までは5分程度の距離だ。
しばらく歩いて、
どうも両手の収まりが悪い事に気づく。
はっ!バッグを忘れた。
ヴィトンのバッグを忘れた。
クライアントの重要書類が入った
バッグを忘れた。
振り返りマンションへ戻る事にした。
まぁいい、時間はたっぷりとあるから。
 
マンションのエントランスに戻ると
初老の豆芝さんがいた。
「おや、どうしました」
うるせぇ!聞くんじゃねぇ!
「いや、ちょっと・・・」
二人でエレベータに乗り込む。
「ティンポーン、ガラララ・・・」
エレベータが止まった。
「じゃ、私はここで。」
初老の豆芝さんが降りた。
ん。豆芝さんは俺より上の階じゃ・・・。
どうやら俺は
行き先階を押すのを忘れていたようだ。
また一階に連れて行かれる事になった。
まぁいい、まだ時間は大丈夫だ。
 
一階には
マンションで一番うわさ好きな主婦が
子供とエレベータを待っていた。
このまま乗ってきたエレベータで
また上がるのは
しょうしょうかっこ悪く思える。
俺がエレベータで遊んでるとでも、
うわさされたらいやだしな。
降りて少しして主婦がいなくなったら、
隣のエレベータで上がろう。
まぁいい、まだ時間は大丈夫だ。
 
主婦に会釈して過ぎ、
エントラスまでいって振り返り、
エレベータホールをみた。
うわさ好き主婦がまだいた。
主婦は、
隣のエレベータで降りてきた友達と
話をしているようだ。
おいおい。
エレベータの前で立ち話すんじゃねえ!
これでは部屋に上がれねえじゃねぇか!
もう、時間は一杯一杯だ。
 
しかたがない二階まで階段で上がり、
そこからエレベータで上がろう。
そして二階でエレベータを呼んだ。
幸いすぐに
エレベータは一階から上がってきた。

「げ」
うわさ好き主婦が子供と乗っていた。
こいつら、
なんてバットタイミングなやつらだ。
気まずいじゃねぇか。
なんか変な目でみられてるぞ。
なんで二階から乗るんだと思ってるぞ。
くそっ。
もう、時間は一杯一杯だ。
 
急いでバッグをとり、
駆け足で駅まで向かい、息が切れた。
「はあはあ」いいながら電車に乗り、
女子高生たちに避けられながら、
大阪駅についた。
 
ここから京都までは新快速ですぐだ。
まだ15分程度は
アドバンテージがあるな。
ホームに滑り込んできた新快速に
颯爽と乗り込んだ。

「次は芦屋です。」
うぉっ!反対側の電車だった。
このままでは京都と反対の神戸方面、
芦屋に連れて行かれる。
京都に着くのが
とんでもなく遅れてしまう。
15分程度のアドバンテージでは
どうしようもない。
まずい。非常にまずい。
すぐに降りて、
反対側のホームへ行かなければ。
 
「ぷしゅー」
ドアがしまり電車がでた。
動いた電車のドアの中には、
恍惚の表情をした俺がホームをみてた。
15分後、
濃い目のサングラスをした男が
芦屋駅におりたった。
 
たっぷりあった
あの時間はどこにいったんだ・・・。
ーーーーーーーーー
(2005年 発表)
若い頃、自動車に乗って走りまわるのが好きだったあの頃。
俺たちは風のようだった。
いや風だった。
 
すがすがしい疾風になっていた。
広いハイウェー、
くねくねと波打つ山道、
都会のビルの谷間の交差点、
狭い下町の路地、
全て俺たちの青春の道路だった。
 
友と友情を語りながら、
恋人と愛を語りながら、
美しい曲を流しながら、
青春と共に走っていた。
 
俺たちは風になっていた。
青春だったなぁ。
 
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「なんだ、汚たねぇ中古車だなぁ」
「もっといい車だと思ったわ」
「中、なんかくさいない?」
「窓開けろ、窓!」
「後のまど壊れてるわよ」
 
「もっとスピードでないの?」
「後からあおられてんぞ」
 
「大丈夫かぁ、この山道のぼれるのか」
「くねくねで何か気持ち悪くなってきたわ」
 
「狭い路地だなぁ」
「右の電信柱にあたるわよ」
「左の三輪車をどかしてきてくれ」
「ワンワンワン」
 
「なんだラジオしかないのか」
「しかもAMだけかよ」
 
「すごい排気ガスだな」
「窓閉まらないわよ」
「寒くなってきたなぁ」
 
「それではCCBで
    ロマンティックが止まらない」
「だぁれかぁろまんてぃっくとめぇてぇ・・・」
 
俺たちは風邪になっていた。
青春だったなぁ。
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(2005年発表)