しん、と静まり返った室内にひとり。
広い作業台の上で、湯煎にかけたチョコを丁寧に溶かしてゆく。
甘い匂いがふわりと鼻をくすぐって。
朝から少し甘ったるいけれど、幸せな気持ちになる。
トロリととろけるチョコレートに、ミキサーで撹拌した生地を少しずつ加えて。
ココアと薄力粉をふるい入れる。
さっくりとまぜ合わせて生地をなじませて型に流し込み、オーブンのドアを開ける。
予熱の済んだ庫内はむわっと熱くて。
タイマーをセットして、次の作業に取りかかる。
サラダの準備をしていると、オーブンの中からチョコレートがふんわり香ってくる。
今月のデザートはフォンダンショコラと、定番のシフォンケーキ。
タイマーが鳴ってオーブンのドアを開けると、コクのあるチョコレートの匂いが広がるから。
思わず笑顔がこぼれる。
粗熱を取るためにラックにさして。
今度は、時間差で発酵を終えたパン生地を仕込む一番大好きな時間。
ほんのり温かくつるんとしている生地を、手のひらでなじませて順番に成型してゆく。
冬は空が明るくなるのも遅いから。
すりガラスの採光窓に映る濃い蒼が、少しずつ淡くなるのを感じながら作業を進める。
スープをコトコト煮込んで味付けをする頃になると、ホール担当のエリが出勤してくる時間。
打合せをしながら昨日のテレビの話をしたり。
手分けして掃除をして、焼きあがったばかりのパンを並べて開店の準備をする。
「カナさん、今日もよろしくお願いします!」
「はい。心をこめておもてなし・・・よろしくお願いします」
ふんわり笑うエリに癒されつつ、厨房に戻って作業を進める。
大好きなパンの焼ける匂い。
カフェが隣接されているこのお店は、私の大切な場所。
夢にまで見た、大好きな空間。
雲の隙間から、青い空が広がって。
やわらかな陽射しが店内を照らすように射し込んでくる。
この場所が、少しでもお客様のほっこりになればいいなぁ。
「ほこほこ亭、開店しまぁす」
エリの元気な声と、二次発酵終了を告げるタイマーが重なって。
今日も新しい一日が、始まる。
~~~続く。~~~