ピーター・ラヴゼイ『最後の刑事』読了。
実は読んだことがなかった、ずっと本棚に積んであったミステリ愛好者必読の書だね。
ここまでの大長編は久しぶり。
この現世にして整頓されたフェアなセオリー。
世情に流されて失いたくない、スコットランドヤードの血だね。
無駄な感情や情緒が、思考と感覚を邪魔しない。
もしも愛情が出てくるならそれは何かの要因。
登場人物の人情は彼らが人間である最低条件のため。
これだからミステリは好きだ。
いつも冷たい血だけが流れている。
狂わない冷静なペースでひとつずつゆっくり嵌めてきたピース、最後のページで残りひとつのピースをしっかり嵌めて、それで初めて99%だった全貌が100%になる感覚は気持ちが良かった。
ケレンの味もしない。
音楽でも漫画でもそうだけれど、もう手段は全て使われたとされる推理小説の世界にしっかり正対する長編、気持ちが良かった。
ダイヤモンドシリーズ第1作目なのだね。
2作目は東京が舞台ということで、ちょっと興味がある。
あとは彼の短編が読んでみたい。

お花見をした。
4月から入社した、先月まで大学生だった人たちも沢山来てくれた。
その中で、内向的な風でひとり隅で静かに飲んでいた女の子は先月写真科を卒業したばかり。
写真を専門にする若い人たちの間ではどんな写真家さんが人気があるのか興味もあって、色々なお話をした。
写真家の知り合いは随分増えたけれど、写真家のお話ってすることが無い。
この間展示を訪ねた木村和平さんのお話も初めて他人とできて……やっぱり最近カネコアヤノさんの影響もあって知名度が上がっているみたい。
日本で道を作ってきた森山大道さんやアラーキーさん、篠山紀信さんに蜷川さんから最近の風潮での奥山由之さんや川島小鳥さんや梅佳代さんが若い写真を志す人たちの中でどう評価されているのか聞いた。
ティムウォーカーや長島有里枝さんの話、界隈でよく採られるモデルさんの話。
名前の読み方もわからないけど良い雰囲気とSNSでチェックしている海外の写真家さんが共通していたり、鈴木親さんや花代さんのことを教えて、ソフィ・カルのことを教えてもらったり。
他の話も合うだろうなと思って日本の映画やバンドの話も。
松田龍平さんが好きとのことで『青い春』からTMGEの話。
世代ではないのにART-SCHOOLやsyrup16gの話をするからきっかけを聞いたら、やっぱりそういうのまとめてある動画などのサービスで知るものなんだね。
きっとわたしの世代の人がコンセプトごとにまとめた「作業用BGM」とかなのかな。
椎名林檎さんではカルキ1番好きということですごく共感。
最近の人だとアイドルばかり聞くということでそちらも掘り下げたら、かてぃさんや戦慄さんの話題も上がりながらもハロプロの人だった。
やっぱりハロプロ、最近どんどんまた話題になってきているのね。
それだけの魅力もあるものね。
ハロプロの話もした。グループによっては全然詳しくないけれど……。
お笑い芸人の話もした。
高円寺・中野系の……金属バットさん、プラズマさん、ぼく脳さん、脳みそ夫さんに芸人でないがローランドさん……。

色々な話をして、改めて確認できたるのは「最近のブーム」というのは……この界隈でとても多岐にわたる。
一貫性はあるけれど、一つの道で貫かれているものは昔に比べてとっても多く感じるね。
例えばこうしてこの若い彼女と話していると、知る人ぞ知る様々なメディアの作品、映画、写真、アイドル、お笑い、アニメ、ゲーム、漫画……こんなにも沢山の媒体の趣味が合うなんてとても気が合うって思いがちだけれど『映画、写真、アイドル、お笑い、アニメ、ゲーム、漫画』の趣味が合うのではなくて『知る人ぞ知る様々なメディアの作品』が近年流行っているのだ。
もうずっと前から。
サブカルチャーの流行りはじめ、多分わたしたちの世代……ロキノン系に火がつき始めた頃、あの頃からずっと。
わたしたちは「流行に敏感」なだけだ……いつの時代もそうだったかもしれないけれど、流行をちゃんと知って楽しむ人たちの幾らかは、流行に流されているのではなく、流行に流されているのを楽しめるほどに博識で知識欲や好奇心がおもしろい。
そんな時代にフィットするように1年前に始まったTBSラジオ『アフターシックスジャンクション』この番組も象徴されるわかりやすいひとつの形だ。
時間やスペース、とてもそこに収まらない 恐ろしいスピードと質と量の流行は続いていくね。
ついていかなくてはって焦るような気持ちは無いけれど、その中で自分の好きなものを見つけられたら嬉しい。
知って識り終わるだけではあまりに退屈だ。
退屈でないことに、退屈になってしまう。


また先輩に沢山お米をもらった。
ありがとう。
花見で余ったお酒を持ち帰った。
苦しんでまで生きる理由がないなら別に、生きない。