‐‐‐‐‐‐‐両想い‐‐‐‐‐‐‐

 

夜、シャワーを浴びてベッドに寝ころんだタイミングで、青木からLINEがきた。

 

「ショー、起きてる?」

 

「起きてるよ」

 

「今日、ありがとう」

 

「こっちこそ。ありがとな」

 

「何してた?」

 

「青木のこと、考えてた」

 

「キャー」

 

「キャー?w」

 

「私も、ショーのこと」

 

「おお」

 

アホな会話。でも、これが両想いの醍醐味ってやつか。

 

「今、大丈夫?電話にしないか」

 

「いいけど、どうして?」

 

「声が聴きたい」

 

「ヒャー」

 

「w」

 

「待ってまって」

 

「今ムリ?」

 

「無理じゃない!けど、わーん」

 

「さっきから青木おかしい」

 

「おかしくなるよ、今日のきょうだもん」

 

「告ったから?」

 

「そう。だって、ショーからグイグイ来るの初めて」

 

「そうだっけ」

 

「とぼけてー」

 

「もう、遠慮しないよ。青木は俺の彼女だから」

 

「❣️」

 

「電話、いい?」

 

「いいよ、でも」

 

「なに?」

 

「いつまで青木?」

 

うっ、きたか。頭の中では何度か呼んでるけど‥‥

 

「そのうち」

 

「いま。名前で呼んで」

 

「今度、顔見て言うよ」^_^

 

「長谷部さんのことは名前で呼んでるって、ワタさんに聞いた」

 

アイツ、要らんこと言うなぁ。

 

「名前ってか、ニックネームだから」

 

「ふぅん」

 

ヤキモチ焼くんだ。そういうのないかと思ったら、やっぱ女子って付き合ってみないとわからんな。

 

 

 

 

 

‐‐‐‐‐‐‐ウブ卒業?‐‐‐‐‐‐‐

 

「……」

 

「ショー!そんな顔すんなよ~!」

 

慌てたヒデに肩を組まれ、聞きつけて追い付いた二人に頭をワシワシ撫でられた。

 

「いいじゃん、両想いには違いない」

とカッキー。

 

「あんな可愛い子とうまくいったんだろ?イヤならオレが代わりたい」

ハマーが笑っている。

 

「ゴチャゴチャ考えないで、青木ちゃんとうまくやれよ」

ヒデが元気になってきた。

 

「男はバカだからさ、かわいい子に迫られたらひとたまりもないよな」

 

はたから見たらそういうことなんだろう。そういうことにしておくか。

 

「否定しない」

 

ワッハッハッハッハー!

きみしろメンバーとわちゃわちゃ歩きながら考えた。

 

男はバカ、否定しない。おそらく同年代だと、女子の方がメンタル大人。

 

青木は確かにかわいいけど、それだけじゃない。

一番惹かれたのは多分、包容力。人柄からくる優しさ。

青木だから話せた俺のヤバいところ、最大のコンプレックス、ADHD。

 

自分をずっと欠陥品だと思ってきたけど、ありのまんま受けとめて、ちゃんと診断受けてみて、もし改善できるものなら、取り組んでみよう。いざというとき、守れる男でいたいから。そんな風に思わせてくれたのは、青木なんだ。

 

「キスしてきたのに、シレッと済まして、コイツ」

ヒデに脇腹を小突かれた。

 

「ウルセー」

 

「ウブ卒業だな」

カッキーが微笑む。

 

「いや、でも下ネタはやっぱ苦手」

 

その辺は分かち合いたくない!今後も一切開示しない。

 

「アッ、逃げた」

 

「ショー、待てコラ!」

 

ゲラゲラ笑いながら皆で駅までダッシュした。

 

気の置けない仲間。

そして、かわいい彼女。

 

俺って恵まれてる。

ラッキーだ。

 

 

 

 

 

 

 

‐‐‐‐‐‐‐きみしろ反省会③‐‐‐‐‐‐‐

 

帰り道、ハマー&カッキーと少し離れて二人で歩いた。

 

「良かったな、ショー」

 

「あらためて言われると、照れる」

 

「全然タイプ違うじゃん」

 

「そうなんだよ」

 

「変わったきっかけは?」

 

「うーん…」

 

「一緒に過ごして、情が移った?」

 

「あぁ、それもあるけど、必要だった」

 

「必要?」

 

「俺には、青木が。いないと辛い」

 

「つらかった?」

 

「なんか、自分の一部がなくなるような。変だよな、ほんの数ヶ月前まで眼中になかったのに」

 

「わかんないもんだな」

 

「ああ。人間って、変わるから」

 

ナマモノだからな。日々変わっていくものだから。

 

「長谷部さん…、カオリンは、もういいのか?」

 

「うん、変わらず推してるけど。俺、ファンだから」

 

「ファン?1歩引いたわけだ」

 

うっ、さすが親友、痛いとこ突いてくる。

 

「どっかで一線引かないと、今は青木がほっとけない」

 

「ほっとけない、か。手放せないの間違いじゃないのか」

 

ズーン、刺さった。

 

「あっ、悪い。せっかくうまくいってるのに、水さすつもりじゃないんだ」

 

「いいよ、核心突いてるかもしんない」

 

胸に飛び込んできてくれたあの子がいとおしくて、手放せなくなった。完全に負けたんだ。