2024年の14冊目。
「三十の反撃」
( 祥伝社 300ページ )
ソン・ウォンビョン 著
先月に読んだ著者の本
「アーモンド」より2冊目。
1988年
ソウルオリンピックの年に生まれ
三十歳になった
非正規社員のキム・ジヘ。
88年生まれに一番多い名前
「ジヘ」と名付けられた彼女は
その名の通り
平凡を絵に描いたような
大人になっていく。
大企業の正社員を目指す
ジヘの前に現れたのは
同じ年の同僚ギュオク。
彼の提案する
社会への小さな反撃を
始めることになったジヘは
自身を見つめなおし
本当にしたかったことを考えるように。
そして
ついに「本当の自分」としての
一歩を踏み出すことになる――。
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先月に読了した著書「アーモンド」が
面白かったので本書を手に取りました。
1976年生まれの
就職氷河期世代のわたしにとって
重なるような思いがありました。
主人公の「88万ウォン世代」とは
韓国で1997年の
IMF危機以降に急速に進行した
経済構造改革のもとで
大学を卒業しても定職に就けず
非正規のアルバイトや
インターンのわずかな収入で
(88万ウォン
日本円で約8万4千円)
暮らす若者たちのことです。
半地下で暮らしながら
将来への不安と
世の中への不条理を感じながら
様々なものを諦めて生きることを
余儀なくされている世代。
本書の初稿のタイトルが
「普通の人」だったように
登場人物はごくごく普通の人たち。
しかし内なる彼らのイデオロギーが
時に発火し
時に不完全燃焼に終わり
社会の構造的矛盾に立ち向かう
抵抗の姿は
もう随分と遠くに置いてきた
私自身の想いを再燃させるような
気持ちにさせてくれました。
文中の登場するジャズのナンバーを
スマホでかけながら
読書するのは至福のひとときでした。