犯罪を犯した人は、その後の人生をどう生きるのか。
今回記録するのは2022年公開の映画『前科者』。
過去に犯罪を犯し、前科を持った者たちとそれを監視し保護、更生に向け協力する保護士を描いた作品。
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前科者の保護士をしている阿川佳代(有村架純)。
保護士の仕事は報酬が出ることはなく、完全にボランティアとして活動している。
役所を通じて担当の前科者を割り当てられ、自らの善意を動機として活動に取り組む人が多い。
阿川も子供の頃の経験から保護士に興味を持ち、大人になった今、保護士として活動していた。
コンビニ店員と保護士の二束の草鞋を履いて生活している。
阿川の担当する前科者は、詐欺で捕まった者、傷害事件を起こした者、人を〇めた者、罪の重さは様々で男女年齢も関係なく保護していた。
前科者たちは犯罪歴を知ったうえで受け入れてくれる勤務先を手配してもらい、その職場で真面目に働く。
ある者は仮釈放中、ある者は執行猶予中、今の生活に真面目に取り組めば罪を改め、新たな人生のスタートに立てる大切な時期。
前科者が心を入れ替え、人生を再スタートさせるその瞬間に立ち会えることに感動を覚える阿川は、前科者にも対等に関わり全員に真摯に対応していた。
〇人を犯した前科者、工藤誠(森田剛)もそのうちの一人だった。
工藤は今自動車工場で働いている。
この真面目な生活をあと2週間続ければ、罪の償いが終わるというところまで来ていた。
2週間後、阿川と工藤はラーメン屋さんでお祝いの食事をすることを約束する。
そして数日も経たぬうちに、工藤は勤務先からも阿川の前からも姿を消してしまう。
工藤が姿を消した目的は。
阿川の思いは通じるのか。
阿川が保護士を志した理由とは。
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有村架純さん主演の前科者をテーマにした作品。
全体的に暗めなシーンが多いですが主人公阿川は健気でコミカルな一面もあるので苦しくなることなく観ることができました。
個人的に過去に犯罪を犯した人については、過去は消えないと思うので、積極的には関りを持ったことがないです。
罪の種類や被害者の有無にもよると思いますが、どれだけ罪を償ってもどうしようもないと思う被害者、関係者はいると思います。
この作品はあくまで前科者を更生させ新たな人間に生まれ変わらせる立場を描いた映画です。
どんな理由があれ〇人を犯した工藤を庇うようなシーンがあるので注意してください。
あとは工藤の父親に関することでやっぱりどうしても許容できないことがありました。
少しネタバレを含むので見たくない方は-------までスクロールしてください。
工藤の父親は、自分の妻つまり工藤のお母さんをDVの末、〇害しています。
それも工藤の目の前で。
その父親は現在どうしているかというと刑期を終え工事現場の誘導員として働いています。
職場の先輩は年下ばかりで給料も安く、アパートで質素に一人暮らしするのがやっとといった生活環境ですが、それでも恵まれていると言えます。
屋根がある家で、電気が通り布団もあり水も飲める。
子供の目の前で母親を〇した人間がささやかながらも笑って暮らす姿に、やっぱり違和感を覚えました。
いや、人権があるので父親の行為は問題ないことなんです。
しっかり刑期を終え自分の力で生きているのですから、何なら前科者の中では真面目な方です。
でも、子供たちは一生消えないトラウマを抱えて普通に生きれなくなってる可能性を考えると、笑ってんじゃないよと言いたくなります。
罪を犯した者は罪を償えばすっきりしてまさに生まれ変わることもあると思います。
でも被害者はそうはいかない気がします。
結局は自分の気持ちとの向き合い方。
事件のことを加害者が忘れる瞬間があっても、被害者が忘れることはないでしょう。
中々難しい問題ですが、そんな気持ちにさせるようになのか、この作品では父親のそういった絶妙な姿をうまく描写していました。
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前科者を保護する保護士というものをこの作品を観て初めて知りました。
主人公阿川もそうですが、報酬が出るわけではないので完全に善意から活動する人が多そうです。
前科者を受け入れてくれる職場も少なからずあるというようなので、日本はこういう面では国民に優しいのかもしれません。
それでも犯罪を再犯してしまう人がいるのも事実。
こういう善意で動いてくれる人たちの思いを無下にされるのは悲しいですね。
工藤が起こした行動も阿川の思いを踏みにじるものになるのか、ぜひ映画を観て確認してください。
【個人的ポイント記録】
キャスト
★★★★★★☆☆☆☆ 6
ストーリー
★★★★★★☆☆☆☆ 6
演出
★★★★★★★☆☆☆ 7
音楽
★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
考えさせられる度
★★★★★★★★☆☆ 8
前科者になりたくない度
★★★★★★★★★★ 10
再見度
★★★★★☆☆☆☆☆ 5
おすすめ度
★★★★★★☆☆☆☆ 6
自分が前科者になった時、親族や友人が前科者になった時、全てを背負って生きていくことができるか考えるきっかけになりました。
質素でいいので人に迷惑かけずに生きていたいですね。