昔、この町に住んだ。

いまよりは、まだひと回り以上も若くて、

未熟で、失敗ばかりで。

でも一生懸命だけは負けないつもりでいた。

 

過酷な競争があった。

頑張ったつもりでも、翌朝、結果を見せつけられ失意に沈んだことも数えきれない。

でも、そんな辛い週末に、ここに来れば冷静になれた。

荒い息の中、嫌なことは全部、汗になって流れた。

無我夢中でたどり着いた頂で迎えてくれる風に、すべてを忘れられた。

 

あれから、随分と時間がたって、

悩むことは、違う次元に行っているけれど、

相変わらず温かく迎えてくれる山の風景がある。

久しぶりに会った足立山のすべての道が愛おしかった。