書籍 『ゾンビ3.0(講談社) 』石川智健 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【香月百合は新宿区戸山の予防感染研究所に休日出勤する。研究熱心で優秀な下村翔太や、医学博士で女性所員憧れの加瀬祐司も出勤していた。日曜なのに全所員の8%ほどの計40人が研究所にいるようだ。席に着いてWHOのサイトに接続すると、気になる報告があった。アフガニスタンやシリアなどの紛争地域で人が突然気絶し、1分前後経つと狂暴になって人を襲い始めるという。しばらくすると研究所内の大型テレビに、現実とは思えないニュース映像が映った。人が人を襲う暴動が日本各地で起こっているというのだ。いや、世界中で。WHOの報告と関係があるのだろうか。研究所は2メートルの塀で囲われているが、外が騒がしくなってきた。テレビ画面に向かって所員が呟いた。「これゾンビでしょ」([講談社BOOK倶楽部」より)】

 今作はゾンビパンデミックが発生した世界で、新宿にある予防感染研究所の科学者たちの1週間を描いてます。
 厚生労働大臣政務官から原因究明を要請されるんですが、検体がないと何もできない状況です。高い塀に囲まれ、万全のセキュリティが施されてる研究所なのでゾンビの侵入は考えられず、どういう形でゾンビの検体を手に入れるのかというのが当初の問題点なんですが、意外な形で研究所内にゾンビが発生します。

 タイトルの「3.0」はどういう意味かというと、初期のゾンビものは超自然現象や呪術、魔法的なものが原因だったのが(これが1.0)、「バイオハザード」以来、ウイルスや細菌が原因になっていったと(これが2.0)。今作はそのどちらでもないので「3.0」ということです。
 ただ、多くのゾンビ作品はなぜゾンビが発生したのかに関しては特に触れてないものが多いと思います。そんな中で本作はきちんと原因が究明され、ゾンビというものに関して新たな解釈が提示されてるのが興味深かったですね。

 作中で「なぜ噛まれてすぐにゾンビ化するのか?」「なぜ走るゾンビと歩くゾンビが存在するのか?」「なぜゾンビは共食いしないのか?」「なぜ噛まれるだけの人と内臓まで食べられる人がいるのか?」などの疑問が研究者たちから出るんですが、それに対する解答もきちんと描かれてます。

 閉鎖された研究所で、さらにある理由から時間的な制限もある中で話が進行していくんですごく緊迫感がありましたね。
 新たな切り口のゾンビ作品としておもしろかったです。