書籍 『壬生義士伝 (上・下) (文春文庫)』浅田次郎 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【小雪舞う一月の夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えた者には握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。浅田文学の金字塔。( 「BOOKデータベース」より)】

 2000年の作品です。
 浅田次郎作品を読むのは今作が初めてです。

 本作はある人物が新選組隊士だった吉村貫一郎ゆかりの人を訪ね歩き、その生涯を語らせ、その合間合間に吉村貫一郎最後の様子が貫一郎の語りによって描かれるという構成になってます。

 妻と3人の子供を養う為に南部藩を脱藩し、新選組に入隊した吉村貫一郎。新撰組の中でも1、2を争う剣の腕前を持ち、教養もありながらそのみすぼらしい格好や金に執着する様子から出稼ぎ浪人、守銭奴などと陰口を叩かれてます。
 汚れ仕事を率先してやり手当として稼いだお金のほとんどを家族に送り続ける姿は美しく感動的でした。

 貫一郎と竹馬の友であり南部藩(盛岡藩)の家老・大野次郎右衛門(この人が貫一郎に切腹を申し渡します)、次郎右衛門の家来の佐助、貫一郎を殺したいほど憎んでいながらも心の奥底では認めている新選組の斎藤一、貫一郎の息子嘉一郎、次郎右衛門の息子大野千秋などそれぞれのエピソードもほんとに熱くて読んでいて何度も目頭が熱くなりました。

 当然新選組の近藤、土方、沖田などの有名どころの隊士たちも多数出てくるんですが、浅田さん独特の解釈で描いてる部分も多々あっておもしろかったですね。

 親子愛、夫婦愛、友との絆を描きつつ、人間にとっての「義」とは何か、真の「武士道」とは何かを追求した作品です。上下巻あわせて900ページ近くあり、内容も濃いんで読むのは時間がかかりましたが、これは読んでほんとよかったです。

 映画版は未見なんですが、吉村貫一郎役を中井貴一が演じてるのはいいキャスティングだと思います。ぜひ観てみたいです。