書籍 『神々の山嶺 (上・下) (集英社文庫)』夢枕獏 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。(「BOOK」データベースより)】

 1997年刊行の作品です。
 夢枕獏さんの作品を読むのはかなり昔、まだそんなに知名度がなかった頃にたまたま古本屋で見つけた短編集(タイトルも忘れました)以来です。

 最近フランスでアニメ化された映画を観たのがきっかけで読んでみたくなりました。この作品は、夢枕獏氏が構想から20年、書き始めから終わるまでに3年を要した力作で、上下巻合わせて約1000ページの大長編です。一切ダレるとこもなくおもしろかったです。特に下巻は一気に読みました。

 「人なぜ山に登るのか」「そこに山があるからさ」
 非常に有名な言葉なんですが、この言葉(正確には「それがそこにあるからさ」)を言ったのがジョージ・マロリーというイギリスの登山家です。1924年に第三次エヴェレスト遠征隊の一員とし頂上アタックに挑戦しそのまま帰らぬ人となったんですが、マロリーが遭難したのが登頂に成功した後なのか、前なのかが今だに謎とされてます。

 その謎の解明につながるかもしれないマロリーのものと思われるカメラを巡るミステリーという部分を軸にして伝説の登山家・羽生丈二とその姿を追うカメラマン・深町誠の壮絶な生き様を描いた骨太な物語です。
 雪山の過酷さ、荘厳さ、クライマーの極限状態の心理描写などどれをとっても圧巻の描写でした。
 
 フランス制作のアニメ映画以外に日本で2016年に阿部寛、岡田准一主演で実写映画化もされてます。どちらも観た上で本作を読んだんですが、ストーリーはわかっていてもやはり小説は一番おもしろいですね。映画より心理描写が深いし、登山に関する描写もかなり細かいんでホントに読み応えありました。

 アニメ版の感想は次回にアップします。