書籍 『キャプテンサンダーボルト 新装版 (新潮文庫) 』 伊坂幸太郎 阿部和重 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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【発端は山形のホテルだった。借金返済のため一攫千金を狙う相葉時之は、手違いからテロリストに命を狙われる羽目に。絶体絶命の中、かつての級友・井ノ原悠と再会したことで、物語が動き出す―。蔵王・御釜が発生源とされる感染症「村上病」。同地に墜落したB29。そして、公開中止になった特撮映画。深まる謎と追走劇の果て、明かされる真相とは?書き下ろし短編を収録した新装版。(「BOOK」データベースより)】

 今作は伊坂幸太郎と阿部和重の合作なんですが、巻末に収録されてる2人の対談を読むと交互に章を執筆し最後に伊坂さんが手を入れて、さらに最後に阿部さんがさらに手を入れるという方法で書かれたようです。
 阿部和重さんの作品はかなり以前に『ピストルズ』という作品を読んだことがあって、純文学なんでめちゃくちゃおもしろかったってわけではないんですが、とても読み応えがあった記憶があります。

 とにかくアイデアがすごかったですね。主人公のひとり業務用コピー機の販売やメンテをしてる会社員の井ノ原悠がコピー機のスキャン機能を利用し、そのデータを自動で自分のパソコンに送られてくるようにし、様々な会社や公共機関の機密情報を手に入れてるとか、クライマックスの細菌兵器の処理の方法もおもしろかったですね。

 猪突猛進タイプの相葉時之と冷静な井ノ原悠のバディ感もよくて、キャラの魅力も読書の推進力になりました。ポンセというカーリーコーテット・レトリバーもなかなかいい味を出してくれてました。

 伊坂さんの文体よりは硬質な感じなんですが、所々のしゃれたセリフ回しに伊坂感が出てましたね。約630ページの長編なんですが一気に読ませられました。おもしろかったんですが、ただ若干ご都合主義的な部分が気になりました。

 あと、あらすじにある“公開中止になった特撮映画”っていうのが『鳴神戦隊サンダーボルト』という戦隊ヒーローものの劇場版ってことで、もちろん架空の戦隊ものなんですが、戦隊ものが好きなひとならより楽しめるかもです。

 巻末に10ページ前後の3編の短編が収録されてるんですがこれもおもしろかったです。