書籍 『象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA) 』 飛浩隆 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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【惑星“百合洋”が謎の消失を遂げてから1年、近傍の惑星“シジック”のイコノグラファー、クドウ円は、百合洋の言語体系に秘められた“見えない図形”の解明を依頼される。だがそれは、世界認識を介した恐るべき災厄の先触れにすぎなかった…異星社会を舞台に“かたち”と“ちから”の相克を描いた表題作、双子の天才ピアニストをめぐる生と死の二重奏の物語「デュオ」ほか、初期中篇の完全改稿版全4篇を収めた傑作集。(「BOOK」データベースより)】

 初めて読む作家です。

 ガチガチのハードSFを読もうと思っていろいろ検索してて見つけた作品です。まず作者の飛浩隆さんですが、1983年に『SFマガジン』誌でデビューし、その後寡作ながら中短編を発表するんですが、1992年の『デュオ』を最後に商業誌から姿を消し“知る人ぞ知る”的な伝説の作家となります。そして10年後の2002年に『グラン・ヴァカンス 廃園の天使I』で復活し、その後も相変わらず佳作ではあるんですが質の高い作品を送り出し2017年の『自生の夢』、2018 年の『零號琴』が数多くの賞を受賞し今ハードSF界の第一人者となってます。

 さて本作ですが初期の中短編が4編収録されてます。

 個人的には天才的な双子のピアニスト、グラフェナウアー兄弟とピアノ調律師のイクオの物語の「デュオ」が一番好きですね。まずグラフェナウアー兄弟の姿に衝撃を受け、その兄弟が弾くピアノの描写に感嘆し、所々にはさまれる不穏な空気を感じつつの兄弟のSF的な秘密が明かされ、最後に衝撃的なホラー的な真相をぶちかまされるというとてもハイグレードな作品でした。

 一転「呪界のほとり」はユーモアタッチな作品で、肩の上に乗る小さな竜のファフナーと宇宙を旅する男万丈と孤独な老人パワーズとの軽妙なやり取りがおもしろかったですね。

 「夜と泥の」はテラフォーミングされた惑星を舞台にした物語なんですが、美しく幻想的な描写が印象的でした。

 表題作の「象られた力」ですが半分くらい読んだんですが僕の理解力が追いつかず断念しました。またいつか再挑戦したいです。