
【悪夢に苦しめられるのが怖いから、眠らない。何でも忘れてしまうから、行動を逐一メモにとる。それでも眠ってしまうと、死者たちが訪れる。ソフィーの人生は、死と血、涙ばかりだ。でも、ほんの一年前まで、彼女は有能なキャリアウーマンだった。破滅への道は、ちょっとしたことから始った。そしていつしか、ソフィーのまわりに死体が転がりはじめたのだった。でも彼女には、天性の知能と強い生命力が備わっていたのだ。ある偽装によって自ら道を切り開いていくや、ついには、自分を取り巻く恐るべき真実に突き当たっていくのであった…歪んだ行為への、正しい対応が生むカタルシス、ヒッチコックも驚くであろう斬新な四部構成で読む、脅威のサイコサスペンス。(「BOOK」データベースより)】
『その女アレックス』(2011年作品)が話題になったピエール ・ルメートルの2009年の日本デビュー作です。
『その女アレックス』はおもしろかったんで期待して読んだんですが、この作品もなかなかおもしろかったです。読み出したらやめられない系の作品です。
全部で4部構成になってるんですが、第1部では主人公のソフィー目線で描かれてます。「絶対ここにしまったはずのものがない」「予約したレストランの予約日時がズレている」「保存したはずの大事なデータが消えている」などのおかしな事態が連続して起こり、さらには慢性的にボーっとしたり、精神的に徐々におかしくなっていく様子が描かれ、そしてついに眼が覚めたら死体が・・・。 その後逃亡生活に入るんですが、“裏技”を駆使して別人になる過程も興味深く、おもしろかったです。
そして2部にはいるとそれまでの景色が一転します。この辺は鮮やかですね。まあ、できるだけネタバレをしたくないんでこれ以上は書かないですが、人間の狂気や悪意を非常に感じさせる作品でした。
ただ、あえて苦言を呈しますと心理描写がとても上手い作品なのに「なぜそこでそうする?」みたいな部分があったり、「さすがにそこまでうまくはいかんやろ」とつっこみたくなるご都合主義な展開がちょこちょこあって完成度はそんなに高くないかなと思いました。
まあ、中古で買って暇つぶしに読みぶんには十分楽しめると思います。