書籍 『コインロッカー・ベイビーズ 』 村上龍 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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【コインロッカーを胎内としてこの世に生まれ出たキクとハシ。罪の子ふたりの心に渦まく愛と憎悪。廃墟と化した東京の上空に、華やかなステージに、そして南海の暗い海底に強烈な破壊のエネルギーがほとばしる。巨大な鰐を飼う美少女アネモネの願いは?破壊の意志を持つというダチュラの凶々しき響き。果してダチュラとは何か?そして、巨大な暗黒のエネルギーがもたらすものは?現代文学の記念碑的作品。(「BOOK」データベースより)】

累計発行部数200万部を誇る村上龍の代表作のひとつです。単行本が発売されたのは1980年なんでもう40年近く前の作品です。元々上・下巻だったですが9年前に1冊にまとめて新装版として発行されました。何年か前の『アメトーーク』の読書芸人で又吉さんが推薦して(新装版の帯も書いてます)また売れてるみたいですね。

僕が読んだのはもうかなり以前なんですがそれ以来ずっと個人的好きな本ベスト3に入ってます。今回数年ぶりに読んだんですが、いやー、やっぱ面白かったですね。これって村上龍の3作目で28歳の時に書かれた作品なんですが、すでにこの時点で完全に村上文学は完成されてますね。

ネットのいろんな「純文学おすすめ」サイトに結構本作が入ってるんですが、筒井康隆さんが「この小説は純文学でもあり、SFでもあり本学小説でもあり、また、社会小説としても、冒険小説としても、風俗小説としても読めるという作品」と初刊行本の帯に書いておられるように非常にストーリー性にも富んでいてエンタメ性も十分兼ね備えてます。

廃虚の街、人間を鋼鉄の殺人マシンに変える神経性毒ガス“ダチュラ”、毒物で汚染され鉄条網で隔離された区域“薬島”、テレビの生放送中に起こる殺人、刑務所からの脱走・・・

面白い小説って基本的に主人公もしくは重要人物の誰かに感情移入して読むんですが、この小説の3人のメインキャラのキク、ハシ、アネモネのどのキャラにも僕は感情移入は出来ないですね。作中でも彼等は他人、あるいは世界そのものを拒絶してるんですが読者さえも拒絶してるようです。ただ傍観者として凄まじいエネルギーで疾走する彼等の物語に圧倒されるだけです。

かつて映画化の話もあったみたいですが絶対無理だと思います。映画化しても物語の表層的な部分を浚うだけの薄っぺらい作品になるのは目に見えてます。
文章というか描写がかなり濃密で全編に渡って“破壊衝動”と“怒り”の波動に満ちあふれてるんで読むには結構パワーが必要ですが是非オススメしたい作品です。