農業全書 003

 

間違い等あればコメントで教えてください🙇‍♂️

 

挿絵右は稲刈りですね。刈る係と縛る係、運ぶのも牛を使ったり人力だったり。

左は奥の方にはさかけ(ハゼかけ)でお米を乾燥、

手前はこきばし(大きな箸)でお米(もみ)の脱穀をしています。

大変な作業であったと思われます凝視

 

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「農業全書巻の一
農事總(総)論 
耕作 第一」の続き
 

P48

抑(そもそも)耕作には多くの心得あり。

先(ま)づ農人(のうにん)たるものは我身上の分限をよくはかりて田畠(田畑)を作るべし

各其分際より内ばなるを以てよしとし、其分に過ぐるを以て甚(はなは)だあしゝとす。 

又田畠は年々にかヘ地をやすめて作るをよしとす。

しかれども地の餘計(余計)なくてかゆる事のならざるは、うえ物をかへて作るべし。

所により水田を一、二年も畠となし作れば、土の氣轉(転)じてさかんになり、草生ぜず蟲氣もなく實(実)のり一倍もある物なり。

凡此(およそこれ)田を畠になしたる地は物よく生長するものなり。 

さればよく土にあひて價(価)高き畠物をうへて厚利を得べし。

 

さて畠物にて土氣よはりたる時、又本の水田となし稻(稲)をつくれば、是又一、二年も土地轉じて大利をうるものなり。

されども是は上農夫のなす手立なり。

凡土は轉じかゆれば陽氣多く、又執滯(滞)すれば陰氣おほし。

夫(そ)れ陰陽の理りは至りて

深しといへども、耕作に用ゆる所は其心を付けぬればさとりやすし。

農人これをしらずばあるべからず。

其理りをわきまへずして耕作をつとむるは、多くの苦勞(労)をなすといへども利潤を得る事少なし。

先づ土のしめりたるは陰なり。 

乾きたるは陽なり。

ねばりかたまりたるは陰なり。脆くさわやかなるは陽なり。

 かるくして柔か過ぎたる浮泥の類は陰なり。

 重く强(強)くはらぐ類は陽なり。

此等の類をおしはかりて土地の心をしるべし。 

假初(かりそめ)にも陰氣の陽氣に勝たざるやうに分別し、

陰陽のよく調ふる計を専らとすべし。

睛(晴)れたる日に耕し、其土白く干たる時かきくだき雨を得てうゆると、又畠物は日と風を得て中うちし白く干て培ふこと、 

是皆内に陽氣をたくはへ、外うるほひを得る時は陰陽和順すると云ふものなり。

農人よく此理りを辨へ(弁、わきまえ)、凡耕しうゆる事ごとに皆

陰陽を調へて天地の德をたすくべし。

又耕作の肝要は奴僕と牛馬にあり。

奴僕牛馬の善惡にてうへ物の得失大きにかはることなれば、多少下人をつかふものは心をねんごろに用ひて仁愛を專らとし、正直信實(実)を本とし、善惡をわかち、賞罰を正しくして己を和悅(悦)に心よくして人をつかへば、下人も又心いさみ苦勞をわすれてつとむるゆへ、其仕事のはかゆくのみならず、五穀等の生成も自ら滯(滞)らずよく長じよく實るものなり。

是を和氣を感召すると云ひて、天地の感應をいのる心なり

 
 
 
〇意訳〇
 
そもそも耕作には多くの心得がある。
まず農人は自分の能力をよく考えて田畑を作るべき
自分の力を超えない事が肝心だ。
 
また田畑は年々変えて土地を休めながら作るのが良い。
余分な土地が無くて休ませられないなら植える物を変えて作るべし。
例えば田んぼを1,2年畑にすると「土の氣」が転じて盛んになり、
草や病害虫も抑えられ実りも多くなる。
田んぼを畑にした土地はよく生育する。
土壌に合う価値の高い野菜を植えて利益を得ると良い。
そして畑として「土の氣」が弱ってきたらまた田んぼに戻して稲を作ればまた1,2年良い利益が得られる。
しかしこれは「上農夫」ベテランの手法だ。
 
およそ土は転じ変えれば陽氣多く、
執滞(とどこおる事)すれば陰氣多し。
陰陽の理論はとても深いが
耕作に使える大切な心得をもてば基本を悟りやすい。
農人はこれを理解しないといけない。
これがわからないと多くの苦労をしても利潤は少なくなる。
 
まず土の湿っているのは陰。
乾いているのは陽。
粘って固まるのは陰。
脆くさらさらしているのは陽。
軽く柔らかな泥の状態は陰。
重く強くバラけるものは陽。
 
これらを見て土地の心を知るべし。
一時的にも陰氣が陽氣に勝たないようにし、
陰陽をよく調べ計る事をよく考えよう。
 
晴れの日に耕し
土白く乾いているときに耕し砕き雨が降ってから植えると、
太陽と風を受けて中耕し(株間を軽く耕し除草する事)白く乾かして培うこと、
これらのように
内側に陽氣を蓄え、外側に潤いを得る時
陰陽が和順する(気候が穏やかで順調)」と言うものだ。
 
農人はこの理論をよくわきまえて全ての耕作、栽培する事ごとに陰陽を調べて天地の徳を助けるべし。
 
また耕作の要は奴僕(下人、使用人)と牛馬だ。
これらの善し悪しで作物の出来が大きく変わるので、
優しく慈愛を持ち正直信実、善悪を分かち、賞罰を正しくして和やかに心よくして接すれば、
下人も心を込めて努力してくれる。
仕事がはかどるし、五穀等の生育も滞らずよく成長して実る。
これを「和氣を感召する」と言って
天地の感應(心が深く動く事)を祈る心なり
 
 
〇僕の感想など〇
 
自分なりに大切と思う所を赤くしています。
 
「自然農法家YouTuber」の高内実さんの話に影響を受けた事で始めたこの農業全書の学び、

高内さんも言われていましたが

江戸時代には細菌、微生物の事や土壌の鉱物、栄養素の組成などはわかっていませんでした。
しかしそれを「陰陽の氣」として
違った形で大まかに理解していた事は驚きですね驚き驚き驚き
(好気性細菌、嫌気性細菌とも対応?)
 
 
「最後の下人や牛馬にも優しく、和やかに仕事をしよう」という話も
僕も稲刈りの時に鎌で怪我をしましたが、
焦りやイライラなど心に揺らぎがある時にこういった事が起きますよねニコニコ
 

 

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