フィギュアスケートは美しさを競う競技だ
だが、この美しさというのは非常に曖昧で、
主観で変わるはかないものだ
例えば、演技的な美しさ
ある人が観ればストーリーを感じて興奮し、
ある人がみればわざとらしく見えて興ざめしてしまう
生命の溢れる輝くばかりの美しさに心を奪われる人もいれば
女性としての悲しみの中にある退廃的な美しさに魅入られる
人もいる
だがGPFの女子FSが行われた会場では、誰もが美しいと思う瞬間がおとずれた
浅田選手が演技を終えた時、女子FSで一番美しい演技は終了した
だが、その後彼女が体をかがめた瞬間がこの日最も美しい瞬間だった
彼女は氷上に落ちていた何かに気づき、
それをそっと拾ったのである
スローでみてみるとそれは、四角いチケットの半券の様な物だとわかる
色がついているし綺麗な四角なので、氷ではないだろう
自分の演技の前にゴミを拾う選手は観たことがあるが、
試合で自分の演技の後にゴミを拾う選手は、見た記憶がない
あの体力を消耗するプログラムの後では、彼女はへとへとでとにかく早く
キスクラに戻り、座りたかったに違いない
フラワーガールも場内に投げ込まれたプレゼントを集めている最中だった
任せてしまってもよかったのだ
しかも最高の演技を終えたとはいえ、まだ点数も出ていない最下位の状態だ
次の選手がゴミに気づかずに、演技の点数が下がれば儲けものだ
拾わなかったからといって、責められることもない
だが彼女は迷いもせず拾った
次の選手が転ばないように
前日の自分の様に何かにひっかかって、演技に支障が出ないように
試合の点にはならない
逆に他の選手に点を与える行為かもしれない
でも、あの瞬間が一番美しい瞬間だった事は間違いない