【海彦・山彦説話の持つ意味を考える】

ニニギ命と結ばれた木花の佐久夜毘売は一夜の交わりで妊娠し、

三人の男児を出産する。

チェンバレンは、

「卽作無戸八尋殿、入其殿內、以土塗塞而、方產時、以火著其殿而產也。」

と記された出産風景に注目している。

入口のない大きな家にこもり家に火をつけて燃え盛る中で出産する。

「火照命(海幸彦、隼人阿多君の祖)、

「火須勢理命」

「火遠理命(亦名、天津日高日子穗穗手見命、山幸彦)」

である。

イザナギ命の身体(両目と鼻)から

天照大神と月読命とスサノオ命が誕生した後に

月読命が全く語られなかったように、

ここでも二番目に記される「火須勢理命」は以降登場する機会はない。

生まれる人数を「3」にするための脚色なのか、

古事記が「火須勢理命」の登場場面をカットしてしまったのかはわからない。

日本書紀神代下第十段では第一から第四までの一書はすべて

「火酢芹命」が「日子穗穗手見命」と対立する相手として描かれている。

(第四では海幸と山幸が入れ替わっている)。

ニニギ命が山の神である「大山津見神」の娘木花の佐久夜毘売を娶り、

その子である「火遠理命(亦名、天津日高日子穗穗手見命、山幸彦)」が、

海の神である「綿津見神」の娘豊玉毘売を娶り、

山の神と海の神どちらとも親戚関係になり、

その孫に神武天皇が誕生することが大切なのであろう。

チェンバレンがそのあたりのことをどう解釈しているかを含めてみていこうと思う。