【凝縮した形で示した上古の伝説】

チェンバレンは、

大和朝廷が成立する前の時点(7世紀から8世紀初頭)で、

いくつかの部族が結合して日本人を形成していた、

という仮説をもっている。

記・紀に記された神話を因数分解するように分析する。

 

イザナギとイザマミの結婚

→多くの島々の誕生

→多くの神・女神の誕生=自然の力の人格化

→イザナミの死

→イザナギの黄泉国訪問(参考:オルフェウス神話との対比)

→イザナギの身体(左目、右目、鼻)から

  三神(天照大神、月読命、スサノオ命)の誕生

 

皇室の始祖神話の前半は以上のような推移で描かれている。

チェンバレンは以上の神話について統一性を失っていると批判している。

その例として、

 

・三神の一つとして誕生した月読命が

 「夜の食国」の支配を任されたにもかかわらずこの後全く登場しない、

・天照大神とスサノオ命が激しく対立し、

 最終的には天照大神が勝利するにもかかわらず、

 物語はスサノオ命の出雲降臨へと展開する

・スサノオ命の出雲降臨は大国主神神話へと発展し、

 大国主神が支配する葦原中国は、

 高天原からの遠征軍によって平定されて、

 「国譲り」となり「天孫降臨」へとつながるが、

 チェンバレンは出雲で行われた「国譲り」が

 「筑紫」への降臨につながることの論理的矛盾を見逃さなかった。

【考察】

チェンバレンから150年近くたった後の日本の古代史学会は、

この問題について整理することができているのだろうか。

【参考】オルフェウス神話(Wikipediaより)

オルペウスの妻エウリュディケーが毒蛇にかまれて死んだとき、

オルペウスは妻を取り戻すために冥府に入った。

彼の弾く竪琴の哀切な音色の前に、

ステュクスの渡し守カローンも、冥界の番犬ケルベロスもおとなしくなり、

冥界の人々は魅了され、みな涙を流して聴き入った。

ついにオルペウスは

冥界の王ハーデースとその妃ペルセポネーの王座の前に立ち、

竪琴を奏でてエウリュディケーの返還を求めた。

オルペウスの悲しい琴の音に涙を流すペルセポネーに説得され、

ハーデースは、

「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」

という条件を付け、エウリュディケーをオルペウスの後ろに従わせて送った。

目の前に光が見え、冥界からあと少しで抜け出すというところで、

不安に駆られたオルペウスは後ろを振り向き、妻の姿を見たが、

それが最後の別れとなった。